ゲームクリエイター須田剛一氏、「みんなメタスコアを気にしすぎ」とバッサリ。重要なのは自分たちが出したいゲームを出すこと

『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』

グラスホッパー・マニファクチュアは10月31日にアクションアドベンチャーゲーム『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』をリリースする。発売に先駆け、海外メディアGames Industry.bizはグラスホッパー・マニファクチュアのCEOを務める須田剛一氏と、ゲームデザイナーの三上真司氏にインタビューを実施。須田氏が「みんなメタスコアを気にしすぎている」とレビュースコアに言及する場面も見られた。

須田剛一氏はグラスホッパー・マニファクチュアのCEOを務める人物で、『シルバー事件』や『ノーモア★ヒーローズ』のほか、『零 月蝕の仮面』『ロリポップチェーンソー』などを手がけてきた。また三上真司氏はオリジナル版『シャドウ オブ ザ ダムド』のプロデューサー。『バイオハザード』や『逆転裁判』などを手がけたことで知られており、須田氏とは、『killer7』でもタッグを組んでいた。

『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』は、グラスホッパー・マニファクチュアが手がけ2011年にPS3/Xbox 360向けに発売された『シャドウ オブ ザ ダムド(Shadows of the Damned)』のリマスター版だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switchで、価格は4180円(税込)。前回プレイから武器などを引き継げる「ニューゲームプラス」モードが実装されるなど、新たな要素を実装しつつリマスターされている。


海外メディアGames Industry.bizは、ドイツで開催されていたゲームイベント「gamescom 2024」にて、須田氏と三上氏にインタビューを実施。その中では、両名が作るような「独特なゲーム」が近年減ったのではないかという観点から質問が投じられた。須田氏は、独特な作品が少なくなった理由についての考えとして、レビュー集積サイトMetacriticに言及した。

Metacriticには各ゲームに対するユーザーからの点数のほか、各種ゲームメディアのレビュー/点数も集められ「メタスコア」として一定の権威を獲得している。メタスコアは“ゲームの点数”としても扱われることがあり、特にスコアが高いものは人気作の評価を下されることが多い。

須田氏はこのMetacriticについて「メーカーはみんなMetacriticのスコアを気にしすぎている」との見解を示した。またメタスコアで高得点を獲得するための、ゲーム開発の“方程式”なども研究されるような状況であり、そうした“方程式”から外れるような作品は減点評価されがちだ、と現状についても語っている。須田氏は、「主な理由ではないかもしれない」としつつ、そうした減点を大手メーカーが回避しようとしすぎる実情があると語った。

『killer7』


たしかに、須田氏が手がけるような独自性のあるゲームは、ファンの心をつかむ一方で、Metacriticにおいてはその評価が伸び悩むことがある。たとえば『killer7』は、その異質さが一部ユーザーに高く評価され、Steamユーザーレビューでは約2500件中95%が好評とする「圧倒的好評」ステータスを獲得している。一方でMetacriticでは、操作性の観点から低い点数を与えるレビューなども存在しており、メタスコアとしては70点台に留まっている。ユーザーごとにおすすめするか、おすすめしないかの二軸で評価されるSteamユーザーレビューと、減点方式で評価されがちなメタスコア、という評価軸の違いも関係していると思われる。

しかし須田氏自身はそのような点数を気にしておらず、高い数字を取ろうとも意識していないという。グラスホッパー・マニファクチュアがゲームをリリースした際には、ときどき点数をチェックすること自体はあると述べたものの、基本的にはMetacriticをあまり確認していないようだ。


また須田氏は自身が手がけるようなゲームの方向性についても触れた。一般的にマーケティング面でのサポートを受けるようなゲームは幅広い層に訴求しなければならないが、一方で自身が手がけるような独自性を活かしたゲームは、そうした市場性を持ち合わせていない、との見解を述べている。

そして、須田氏率いるグラスホッパー・マニファクチュアがゲームを手がける際には、幅広い層に訴求するよりも「自分たちが出したいと思うゲーム」「ユーザーにプレイしてほしいゲーム」を作ることを重要視していると、同氏の開発におけるスタンスも明らかにした。独自性やユニークさが売りのゲームにおいて、多くのレビューの集積であるメタスコアを気にしすぎるのはあまり良くないということなのだろう。

今回のインタビューでは、ゲーム開発スタイルについての話も交えつつ、須田氏のゲーム作りにおける哲学が明かされた。実際に、「いたく気に入ったゲームの評価を見たところ、想像以上に低くて驚いた」、という経験をした方もいるだろう。今回は開発者側から「メーカーがメタスコアを気にしすぎている」との見解が語られた。ユーザー側としても、あくまでメタスコアやレビューは他人の意見の集積にすぎない、と意識しつつ好きなゲームを愛したいところだ。