『マジック:ザ・ギャザリング』の経営陣、“新セット出しすぎ”として株主に提訴される。需要を上回る量のカードを投入し、長期的なブランド価値を毀損したとして

米国玩具メーカーのハズブロのCEOら経営幹部は1月21日、ロードアイランド州連邦地方裁判所にて株主代表訴訟を提起された。

米国玩具メーカーのハズブロ(Hasbro)のCEOら経営幹部は1月21日、ロードアイランド州連邦地方裁判所にて株主代表訴訟を提起された。訴訟は『マジック:ザ・ギャザリング』(以下、MTG)の販売戦略をめぐるもの。同社経営陣による戦略が『MTG』の長期的価値を損なったとして、経営陣から会社に対して損害賠償の支払いが請求されている。現地ローカルメディアGoLocalProvが報じている。

ハズブロはアメリカ・ロードアイランド州に拠点を置く玩具メーカーだ。保有するIPとしては『モノポリー』や『人生ゲーム』といった著名ボードゲームのほか、「G.I.ジョー」や「マイリトルポニー」といったトイのシリーズが存在。また『MTG』『ダンジョンズ&ドラゴンズ』などで知られるウィザーズ・オブ・ザ・コースト社を子会社として保有・運営している。

そんなハズブロをめぐり1月21日、株主代表訴訟が提起された。株主代表訴訟とは、会社役員が適切な責任を果たしていないとされた場合、株主が会社を代表して提訴できる制度。今回の訴訟では株主のJoseph Crocono氏およびUltan McGlone氏が原告として、「2021年9月16日から2023年10月26日までの間にハズブロの現職および元職の取締役および役員が犯した不正行為の是正」を要求。ハズブロCEOのChris Cocks氏や、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの元社長Cynthia Williams氏ら経営幹部15名が提訴されている。

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訴訟は『MTG』の販売戦略をめぐるもの。訴えによると、ハズブロは2022年4月から7月にかけて、約1億2500万ドルを費やして自社株約140万株分を買い戻した。しかし、当時ハスブロ役員らは人為的に株価を高騰させた状態で自社株買いをおこなうことにより、約5590万ドルを余分に出費し、会社に損害を与えたとされている。

その根拠として原告は、バンク・オブ・アメリカ(BofA)が2022年11月に伝えたレポートを引用している(Business Insider)。当時BofAは「ハズブロは『MTG』のカードを過剰生産しており、長期的なブランド価値を毀損している」との分析を発表して、投資格付け判断や目標株価が大幅に下方修正。実際の株価も一時下落した。

ハスブロの経営陣は新たなカードセットの投入については慎重に検討しており、市場の需要を考慮しながらニーズに合わせた供給、いわゆるセグメンテーション戦略をとっていると説明していたという。一方、訴状における原告の主張では、ハズブロは社内のほかの部門で損失が出ると、『MTG』の新セットを投入することで穴埋めをしていたという。慎重な検討がされていたとはいえず、虚偽的な説明がおこなわれたとの主張だ。

こうした行為がハズブロ経営陣による受託者義務違反・不当利得・企業資産の浪費・重大な経営不行き届き・支配権の濫用・および証券取引法違反にあたると主張されている。また、Cocks氏とWilliams氏をはじめ、ハズブロ取締役会の過半数は互いに利害関係あるいは個人的な関係があり、独立して会社のための訴訟を開始できない状態だとした。そのため株主であるCrocono氏とMcGlone氏が、ハズブロ社を代表して訴訟を提起。ハズブロ経営陣に、会社に与えた損害を賠償し、ハズブロに対して支払うように請求している。

訴状で主張されているように、確かに『MTG』における新カードのリリース数は年々増加傾向にある。特に2020年から2021年で起きた変化は大きく、『MTG』カードデータベース Scryfallによると、2020年にリリースされた新カードは1247枚だったが、2021年には1988枚まで急増。2022年以降の過去4年間では、いずれも2000枚を超えるカード数が記録されている。また発売セット数の観点でみても年々増加しており、かつては1年間に4セットであったスタンダード向けセットも、2026年には7つが発売されることが決まっている。リリースペースの早さについてファンから不満の声があがることもある状況だ。

『MTG』の売上自体は、近年好調に拡大している。2025年第3四半期の発表では、前年同期比で55%増となる4億5940万ドルを記録。2020年の年間売上は5億8120万ドルだったと報告されており、四半期の売上だけで肉薄する勢いを見せている。こうした市場の動向を受けてか、訴状で引用されているBofAも、2023年4月には「『MTG』の需要は懸念よりも堅調だった」として投資の格付けを一段階引き上げており(Investing.com)、2023年7月には「新カードの投入により収益率が増している」としてもう一段階格付けを上昇(CNBC)。格下げ前と同じ“Buy(買い)”ランクに戻され、BofAによるハズブロの目標株価も大幅に上昇修正されている。訴状で主張されている“過剰供給”や不正行為が認定されるかどうか、裁判の行方が注目される。

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Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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