『リーグ・オブ・レジェンド』2016年世界大会は生き残りを賭けたノックアウトステージへ。準々決勝の結果はいかに
『League of Legends』世界大会「World Championship 2016」も白熱のグループステージを終え、後半戦に突入した。ノックアウトステージはグループステージを突破した8チームによる、シングルエリミネーション方式トーナメント(勝ち抜け式のトーナメント)で行われる。準々決勝からはBo5(Best of 5、3本先取)となり、「世界最強」の座までは3回の試合ごとに相手チームよりも先に3勝しなければならない。チームの地力が如実に試される戦いとなる。サモナーズカップへの一歩を歩み出したチームたちの、準々決勝での歩みを振り返る。
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※記事後半に試合結果についてのネタバレを含みます
準々決勝の戦略
ノックアウトステージではグループステージから一歩進んだ戦略が見え始める。グループステージにおいてはステージ突破さえできれば、勝ち点を考慮して自らの切り札を伏せたままにすることも可能だ。しかしノックアウトステージでは手札を伏せたまま負けるという選択肢はない。より強力な構成で貪欲に勝ちだけを求める戦いが繰り広げられるようになるのだ。
トップレーンを支配する発明家:ジェイス
準々決勝のピックアップでもっとも重要となっているのはジェイスだ。彼は射撃・近接の2形態を使い分け可能な特殊なチャンピオンであり、遠距離から相手の耐久力を削ることも、近接戦闘で一気に大ダメージを与えることもできる。現在集団戦向けとして好まれるランブルやケネンは物理攻撃に対する防御力を確保しづらく、単体で対峙した場合はジェイスに対して不利となる。集団戦志向のチャンピオンは、序盤に成長を止められてしまうと中盤以降の活躍が難しい。その点でもピック&バンの段階からジェイスの存在感は非常に大きい。
自在に空を舞う龍:オレリオン・ソル
ミッドレーンのピックはグループステージ時から大きな変化はない。ライズやシンドラといった強力なダメージを叩き出せるチャンピオンの中で異彩を放つのがオレリオン・ソルだ。彼は障害物を飛び越えて飛行するスキルを持っており、他のチャンピオンには不可能なルートから相手を襲撃できる。ジャングルと協力してトップやボットを襲撃することも容易だ。アルティメットスキルのブレスは相手をノックバックさせて遠ざける効果があり、ケネンの飛び込みに対する防御として機能している点も見逃せないだろう。
グリーディサポート&ディスエンゲージ:ザイラ
準々決勝のボットレーンは、熾烈な射撃戦が繰り広げられる戦場となっている。その主軸となっているのはカルマ、そしてザイラだ。カルマはスキルによる攻撃、防御、速度向上といった多様な能力が買われているが、準々決勝でカギとなっているのは何といってもザイラだろう。2016シーズン中のアップデートにより制圧能力を大幅に向上させたザイラは、敵の足止めを行うという点で非常に強力な選択であり、敵のジャングルやケネンがチームの後衛(ADC、ミッドのメイジ)に向かって飛び込んでくる際の防御に優れている。序盤のレーン戦から中盤以降の戦闘において常に活躍できる選択だ。
準々決勝の結果
Cloud9 vs Samsung Galaxy:北米最後の希望
2014年の世界大会制覇後に事実上チームが瓦解したものの、見事に復権して世界へと戻ってきたSSG。北米勢から唯一残ったCloud9との対戦は、中盤以降のゲームの組み立てに関する力量の差が大きく現れたゲームとなった。C9は各レーン単位で見れば何とかしのいで戦うことができていたが、中盤以降の意思決定のスキを突かれて一気に主導権を失う展開が見られた。特にバロン獲得に関わる判断ミスを突かれて集団戦で壊滅、そのまま試合の流れを決定づけられている。
一手の判断ミスからバロンを奪われSSGに敗北する展開は、グループステージのTSM vs SSGの試合でも見られた。Season 2以来、世界大会ベスト4に残ったことのない北米には、まだまだ改善すべき点が多く残されているということなのだろう。
【UPDATE 2016/10/21 16:40】 記事初版にて「現在に至るまで世界大会ベストに残ったことのない北米」と記載しておりましたが、正しくは「シーズン2以降残ったことがない」でした。訂正しお詫び申し上げます。
結果 C9 0-3 SSG
SKTelecom T1 vs Royal Never Give Up:因縁深きライバル
二連覇にして三度目となる優勝を目指すSKTと、中国の強豪RNG。中韓は常にライバルとして国際大会で激突しているが、この二つのチームは強豪として幾度となく矛を交えている。RNGの前身であるStar Horn Royal Clubは、2013年の世界大会決勝においてSKTに敗北しており、今年のMid-Season Invitationalでも激突したチームである。世界を獲る上で避けられない戦いにRNGが再び挑む形となった。
RNGは初戦こそチャンピオンピックの時点から有利を得て、ジェイスやザイラといった強力なチャンピオンを揃えて勝利することに成功した。しかし第二試合以降は、変則的なピックと的確なゲームメイクにより、SKTが中盤以降RNGを圧倒。SKTの3連勝という結果に終わった。注目すべきポイントとしては、SKTがヴァルスやザックといった主流以外のチャンピオンで戦略を組み立てた点だろう。SKTは準決勝以降の試合においても、より多くの選択肢で相手を迎え撃てるということだ。
結果 SKT 3-1 RNG
ROX Tigers vs Edward Gaming:王者の対決
五大リーグの内、特に強豪とされる韓国および中国、奇しくも両リーグの夏季シーズンを制覇した2チームが激突することになった好カード。昨年の世界大会においてSKTを前に優勝を逃したROXと、2015年MSI覇者のEDGという、名実ともにトップチーム同士の戦いだ。
しかしその試合展開は、ROXのチームとしての完成度の高さを示す様相を見せた。現在のメタゲームから外れた構成を取った第三試合を除き、ROXは常にEDGのチーム構成が持つ弱点を的確に突き、試合の主導権を取り続けた。EDGは第三試合こそオレリオン・ソルが介入したレーンでケイトリンにゴールドを集める戦略を見事に成功させたが、全体を通してROXの戦略、集団戦の巧みさが印象付けられるゲームが展開された。
結果 ROX 3-1 EDG
H2K vs Albus NoX Luna :欧州勢の意地
『LoL』競技史上、ノックアウトステージに初めて出場したワイルドカード地域チームとなったAlbus NoX Luna。不振のヨーロッパから唯一残ったH2k。いずれも勝利への期待が高い両者が準々決勝最後のカードとなった。二回目の世界大会出場でノックアウトステージへと進んだH2kは、ANXに対する戦略を完全に準備しており、ピック&バンの時点でANX独自の武器であるサポートブランドおよびポッピー+アニビアのコンビネーションを封じた。その上で準々決勝での強カードであるジェイスやザイラを選択して相性の有利を確保、さらに「ファーストブラッドキング」の異名を取るJankos選手のリーシンが縦横無尽にリードを広げて一気に3連勝。ANXは第三試合でようやく本来の動きを取り出したかに見えたが、H2kの勢いを押しとどめるには至らず、準々決勝で敗退となった。
結果 H2K 3-0 ANX
敗れて帰国したANXメンバーだが、モスクワ空港で多くのファンに暖かく出迎えられたとのこと。来シーズンも期待が高まる。 画像出典:@albusnoxteam
準決勝以降の展望
準々決勝の時点で勝ち残っているチームは韓国より3チーム、ヨーロッパより1チームとなった。韓国からの3チームは全て過去に決勝までコマを進めたことのある強豪であり、ROXとSKTは準決勝で雌雄を決することになる。またヨーロッパ唯一のベスト4として勝ち残ったH2kも準々決勝以降のチャンピオン選択には順応しており、SSGとの戦いは激しいものになるだろう。世界大会も残るところあと2週間。準決勝以降の試合はLJLによる公式日本語実況解説配信も行われる。世界でもっともハイレベルな戦いを見届けよう。
準決勝日程 それぞれ日本時間朝7時より配信開始
・10月22日 SK Telecom T1 vs ROX Tigers
・10月23日 Samsung Galaxy vs H2k-Gaming
[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]