『カービィのエアライダー』のぬるぬる派手グラフィックの裏には“見えないところで楽をする工夫”あり。バンダイナムコスタジオ内製ゲームエンジン「SOL-AVES」の使われ方を専門メディアが分析

海外メディアDigital Foundryが、『カービィのエアライダー』を技術的な観点から分析している。

任天堂は11月20日、『カービィのエアライダー』をNintendo Switch 2向けに発売した。本作はバンダイナムコスタジオの内製ゲームエンジン「SOL-AVES(ソルアヴェス)」によって開発されているといい、そのパフォーマンスや品質に注目が集まっている。

『カービィのエアライダー』は、『星のカービィ』シリーズのレースゲーム『カービィのエアライド』の続編だ。それぞれ能力のことなるカービィやデデデ大王、メタナイトなどのライダーとなり、個性的なエアライドマシンに乗ってレースをする。簡単操作を採用しつつも、ライバルを攻撃してスピードアップさせるなど戦略的なゲームプレイが特徴だ。

桜井政博氏がディレクターを務める本作では、同氏の前作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』から引き続き、バンダイナムコスタジオが開発を手がけている。そんな本作の開発には、バンダイナムコスタジオの内製エンジン「SOL-AVES(ソルアヴェス)」が使用されていることが、体験会「おためしライド」の権利表記から判明していた(関連記事)。

その後、同スタジオは、本作の開発にSOL-AVESが用いられていることを公表。バンダイナムコスタジオではこれまで、Unreal Engineなどの他社製ゲームエンジンの採用例も多かったなかで、長らく謎に包まれていた同社の内製エンジンがようやく実践投入されたようだ。

そして11月20日に発売を迎えた本作だが、海外メディアDigital Foundryが本作を技術的な観点から分析している。その中では、SOL-AVESがどのように用いられているかも考察された。

Digital Foundryは特に、本作のライティングについて言及している。本作では、カービィをはじめとする登場キャラクターの多くに球面が使われている。この球面が滑らかな輝きを放っているという点で、本作では特に「間接光」が他の任天堂作品と比べても卓越していると評価している。

ところで、本作ではNVIDIAが開発する「RTX Global Illumination」(以下、RTXGI)を採用していることが権利表記から明らかとなっている。RTXGIは、物体に反射した際の間接光をリアルタイムでシミュレート可能なライティング技術だ。しかしDigital Foundryの分析によれば、本作ではこのRTXGIをリアルタイム用途ではなくベイク用途、すなわちライティング処理を事前に計算するために用いているという。

そのため本作は、ベイクで生成されるライトマップに大きく依存しているとのこと。ライトマップを用いたライティングで品質を向上させる上では、メモリやストレージなどのリソース面での制約も多い。実際にゲーム内のオブジェクトをじっくりと見ると、ところどころに解像度が低い影やライティングを見ることができる。ただし、作中では基本的に高速で移動している時間が長く、結果として美しい見栄えになっているというわけだ。

Digital Foundryはこうした、“だいたい合ってるけどおそらくそれほど正確じゃない”ような環境・ライティング作りを重視している点が、『マリオカート』シリーズ作品などと同様であると説明した。プレイヤーがディテールに注目しにくいというレースゲームならではの実装なのだろう。ただ、最新作『マリオカート ワールド』では反射などを動的に更新する手法を用いていたという。たとえば『カービィのエアライダー』の最初のステージ「フラリア」では、洞窟内の水面反射には古典的な「キューブマップ」が用いられているといい、ゲームの性質にあわせたアプローチが柔軟に選択されているのだろう。

なお上述したような工夫もあり、本作ではフレームレート目標を60fpsとして、TVモードでは1080pを超える解像度が維持されるようだ。さらに『カービィのエアライダー』の見下ろし型ゲームモード「ウエライド」では1440pにも近い解像度が出ているという。本作ではNVIDIA DLSSをはじめとする超解像技術を用いていないとはいえ、TVモードでは最大4Kまで対応するNintendo Switch 2の性能をネイティブで活用できているわけだ。

Digital Foundryはそのほかにも、本作で導入されているさまざまな工夫を紹介している。反射の計算にはSSR(スクリーンスペースリフレクション)の代わりにより軽量なキューブマップ方式に頼っていたり、物理ベースレンダリング(PBR)によるリアルなライティングを実装する上で、部分的に低解像度のテクスチャを利用したりなどの選択がみられるという。多種多様なオブジェクトやエフェクトが目まぐるしく移り変わる本作にて、グラフィックとパフォーマンスが両立されている背景には、“見えないところで楽をする”ようなバンダイナムコスタジオの発想があるのだろう。

カービィのエアライダー』はNintendo Switch 2向けに販売中だ。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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