クラファンで約4億円も調達したゲーム、“先行き不安すぎる報告”後に返金要請が殺到。しかし企画者は沈黙つらぬく

Fluffnestが手がけているゲーム『PuffPals: Island Skies』のクラウドファンディング出資者から、スタジオへの批判や返金要請が殺到している。

デベロッパーFluffnestが手がけているゲーム『PuffPals: Island Skies』のクラウドファンディング出資者から、スタジオへの批判や返金要請が殺到している。返金要請はここ数か月間で増え続けていたが、海外メディアPC Gamerが報じたことであらためて物議を醸している状況だ。

『PuffPals: Island Skies』は、ぬいぐるみのようにかわいいキャラクターたちが登場する生活シミュレーションゲームとして開発されていた。ぬいぐるみ販売事業などをおこなうFluffnestが開発を主導し、『Apex Legends』や『ディアブロ4』など数多くのゲームでアート面を手がけてきたRoom 8 Studioをはじめとする数多くのクリエイターが開発に参加していた。

同作は2022年4月に発表され、翌日にクラウドファンディングサービスKickstarterで資金を募った際にはわずか24時間で目標額の7万5000米ドル(約1100万円、以下レートは本稿執筆時点のもの)を達成。最終的に約4万2000人からの支援を受け、目標額を大きく上回る約256万米ドル(約3億8400万円)の調達に成功していた。

ところが、その後約3年半が経過した現在もプロジェクトは達成されていない。5月には開発者のコメントがKickstarterに投稿され、Fluffnestが資金難に陥っている状況や、ぬいぐるみ販売事業が持続不可能であることが説明された。これを機に支援者からの返金要請が相次ぐようになり、今日まで続いている。PC Gamerが報じたことで、その流れがさらに加速している様子も見受けられ、返金要請をした支援者の数は数千にものぼっている。返金要請をおこなったユーザーからは、支援者限定のDiscordサーバーから追放されたという報告や、スタジオの連絡先のメールアドレスが消失しているとの証言もある。なお筆者が確認したところ、Fluffnestの公式Webサイトは6月ごろからアクセスできなくなっている。

先述したFluffnestによるKickstarterへの投稿によると、本作は早期アクセス配信に向けた開発のためにRoom 8 Studioとは1年間110万ドルの契約を締結していたほか、約100万ドルが税金・手数料・キャンペーン費用やリワード用のグッズ製造に充てられたとのこと。それでもキャンペーンで集まった256万ドルのうち、約50万ドルは手元に残る想定だったという。

しかし開発は予定どおり進まず、アルファ版にすら到達しない状態であったとのこと。そのため開発の妨げになっていたという契約形態を見直し、新たな契約を締結しつつ、追加で必要になった150万ドルの開発費をローンとぬいぐるみ事業の収益で賄うことになったそうだ。

ただ結果的に開発は、Fluffnestが期待する状態には届かなかったという。またぬいぐるみ事業の悪化を受けて、FluffnestはRoom 8 Studioに対し作業を一時中断するよう要請したにもかかわらず、その後も同スタジオが作業を続行して請求を続けていたと主張。資金難の一因として語られている。

現状ではRoom 8 Studioの開発は実質中断状態にあるようで、FluffnestはRoom 8 Studioの経営陣が具体的な計画や必要となるリソースを明確化しなければ再開できない旨を伝えているとのこと。その上で現時点ではFluffnestが自ら開発を続けていると主張しているものの、同社単独の成果物はこれまで公表されていない。また今後Room 8 Studio側で進められていたプロジェクトをFluffnestが引き継ぐことが同社の財務的に、あるいは契約上可能かどうかは不明であり、開発続行に暗雲が立ち込めている状況だ。

なお、同作のコンセプトアートを担当していたクリエイターDavid Ryonoによれば、Fluffnestは2024年3月から同氏への報酬を支払っておらず、報酬未払いのまま契約を打ち切り、現在は訴訟を起こしている状況だという。このほかにもRoom 8 Studioや複数の金融機関が、Fluffnestを相手に契約違反などを理由に訴訟を起こしていることが確認できる。Fluffnestには財務面での問題が山積している様子がうかがえ、この点も出資者からすると不安材料だろう。

今後Fluffnestがどのような動きを見せるかは注目されるところだが、多くの契約違反訴訟が進行中であることを踏まえれば、少なくとも『PuffPals: Island Skies』の開発続行は絶望視されている状況だ。多数の支援者たち返金要請が寄せられる中で、同社は沈黙を続けており、今後対応おこなわれるかどうかは引き続き注目される。

ちなみにKickstarterなどのクラウドファンディングサービスでは、プロジェクトが遅延している場合や、実現が難しくなっている場合に、出資者に状況を報告するよう求めている。ただ、プロジェクトが完了できない場合には返金を含めてできるかぎり最善の対応を求めているものの、返金の責任はあくまでKickstarterではなくプロジェクト企画者側にある。そしてゲーム開発など、長期化するプロジェクトではさまざまな要因でプロジェクトがとん挫する可能性があり、返金が現実的ではない状況となる事例も見受けられる。クラウドファンディングによって多くのクリエイターが資金を調達してさまざまなゲームを世に送り出してきた一方で、多額の資金を集めても成功するとは限らないプロジェクトが発生している点は、クラウドファンディングサービスの構造的な課題といえるかもしれない。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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