「インディーゲームの成功確率」を計算する予測シミュレーター登場。ジャンルや価格、レビューなどから“売れそうな確率”を教えてくれる
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海外掲示板Redditのゲーム開発者が集うSubreddit「r/gamedev」において、あるユーザーが、インディーゲームが商業的に成功するかどうかを予測するシミュレーターを公開し、注目を集めている。
今回Redditに投稿したのは、Devin Bonk氏。Bonk氏はカナダの名門トロント大学で博士号を取得しており、ビデオゲーム心理学の研究に取り組む現役の研究者だ。同氏は、競争が激化するインディーゲーム市場において、開発者たちが適切な方針決定を行う手助けをしたいとのこと。ゲーム開発には多くの時間や費用がかかる。そのためリリース早期に作品の可能性を評価するためのツールとして、本アプリが制作されたそうだ。
Bonk氏のアプリでは、最初の1か月間に得たレビューの数・販売価格・ジャンルを入力することで、1年間のうちに獲得するレビューが1000件に達する確率を計算することができる。くわえて、該当ジャンルで成功を収めた作品例のデータも表示される。分析に用いられているのは、2019年から2023年にかけてSteamでリリースされた、「インディー」タグが付けられた作品7584本と、その作品群に残された約880万件のレビューだ。
たとえば、「最初の1か月間で200件のレビューを獲得した15ドルのアクション+RPG」という条件を設定してみると、その作品が1年間のうちに1000件のレビューを得る確率はおよそ8.4%との結果になった。同ジャンルの「成功を収めた作品例」としては、『Hades』や『ENDER LILIES』などのタイトルが名を連ねている。なお、出力結果は執筆時点でのものであることに注意されたい。
Bonk氏のアプリにおいて、リリース後1か月間の成果を条件として用いているのには、インディー業界においてヒットするゲームの“ある傾向”が関係しているという。Bonk氏が着想のもとと述べた「HOW TO MARKET A GAME」のブログ記事では、ゲーム市場調査機関「Video Game Insights」の協力のもと、1年間で1000件以上のレビューを得た作品について、どのようなペースで人気を伸ばしたのかが分析されている。
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HOW TO MARKET A GAMEによれば、2024年の1年間に絞ったデータにおいて、リリース初期の少ないレビュー数から好転を遂げたのは『Beltmatic』という作品たった1本のみ。つまりヒット作の大半がスタートダッシュを決めており、逆にリリース直後から好調な滑り出しをしない限り、その先の人気獲得を期待しづらい傾向はあるようだ。
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なお「唯一の例外」となった『Beltmatic』は、工場のようにベルトコンベアを用いて演算を行う数学パズル。最初の1か月間ではわずか17件しかレビューを得られなかったが、人気YouTubeチャンネル「Real Civil Engineer」で紹介されたことなどをきっかけに、連鎖的に多くのプレイヤーに紹介され、徐々に成功への道を歩みだした。
Bonk氏のRedditの投稿には、ゲーム開発の成否を統計的に考えるということに関して、賛否入り混じる意見が多数寄せられた。そうした中には、「インディー業界では成功が“外れ値”からもたらされているのではないか」といった推察も見られる。昨年だけでも『Beltmatic』のようにデータの全体的な傾向に反する作品も一部あり、Bonk氏のアプリで知ることができるのはあくまで目安という点に留意したい。
とはいえBonk氏のアプリは、リリース後の“伸び”を予測する手段のひとつといえる。伸び悩みが推測される場合は、今後の施策を練ってみるのもいいかもしれない。また大量のコンテンツが短いスパンで消費されていく現代において、ゲーム開発者は単に成功した先例の後を追うだけでは大ヒットには至りにくいだろう。先述したような統計的なデータの“外れ値”がどのような要因で生じたのかといった推察も、ヒットの秘訣を探る方法のひとつになるかもしれない。