人気パブリッシャーHooded Horseのボス、契約書で「生成AI絶対禁止」と決めていると明かす。“アーティストを裏切りたくない”から徹底シャットアウト

海外パブリッシャーHooded HorseのCEOを務めるTim Bender氏は、ゲーム開発元に対し、生成AIの使用を「契約時点で禁止する」対応を取っていると明かした。

現在、さまざまな議論を呼びつつも発展目覚ましい生成AIは、ゲーム開発の分野でも用いられることがある。そんな状況下で、海外パブリッシャーHooded HorseのCEOを務めるTim Bender氏は、デベロッパーに対して生成AI製のアートやアセットの使用を「契約時点で禁止する」という措置を取っているようだ。海外メディアKotakuのインタビューにて語っている。

Hooded Horseは2019年に設立されたアメリカのパブリッシャー。ストラテジーゲームを多く送り出すことに定評があり、『Manor Lords』『He is Coming』『9 Kings』など、数々のパブリッシングを担当している。今回Kotakuのインタビューにて、同スタジオのCEOを務めるTim Bender氏がゲームにおける生成AI利用、特に生成AIによって作られたアートについての見解を語った。

Bender氏は生成AI製のアートをかなり嫌っているようで「あってはならないかたちで突如蔓延り始めた」とも発言。生成AIを用いたゲーム開発を拒絶する姿勢を見せている。こうしたBender氏の姿勢はHooded Horseのパブリッシング方針にも適用されているようで、同スタジオでは、パブリッシング契約を結ぶ際に、契約の条項として「AIアセット一切禁止」を掲げているという。

Bender氏によれば、ゲーム開発者と話し合い、ゲーム開発のどの工程においても生成AIを使用しないように勧告する段階に至ったとのこと。これはプレースホルダー(仮置き)としての生成AI利用も防ぐ意味合いを兼ねているようだ。Bender氏、プロトタイプの仮置きだけを想定した生成AI利用だとしても、一度でも見落とされればそのままゲーム本編に用いられる危険性がある、との見解を語っている。実際に、昨年のヒット作『Clair Obscur: Expedition 33』は開発プロセスにおいてプレースホルダーとして実験的に利用された生成AI製のテクスチャがQAにおけるミスによって残され、発売後のアップデートで差し替えられる対応がとられたという(El País)。また『アノ 117: パックスロマーナ』においても、同様の事例が発生していた(Kotaku)。そうした状況も踏まえてか、Bender氏は生成AI製のアートなどを“癌細胞のよう”とまで表現しており、常に監視し、混入を防ぐ必要がある、としている。

同氏がここまで強硬な姿勢を取るのには、スタジオに在籍するアーティストへの姿勢が関連している。たとえば今年1月6日に正式リリースされたSFストラテジーゲーム『Terra Invicta テラ・インヴィクタ』について、マーケティングにあたっては2名の専属アーティストを雇用。展示会や各種発表に際して専用のアートを手がけてもらっていると明かした。Bender氏の主張によれば、生成AI製アートを用いる案件に関わることは、そうしたアーティストへの「裏切り」になると考えているようだ。

『Terra Invicta テラ・インヴィクタ』

ゲーム開発における生成AIの利用については、訓練用データとなるコンテンツの権利関係を中心とした議論が続けられ、各国で法整備なども進められている。加えて生成AI製の一部アートを対象として、クオリティの低さが指摘されることもある。一方、2025年11月時点でTotally Human Mediaが独自に集計したところ、Steam上の全タイトルの8%にあたる1万258タイトルがAI生成コンテンツを含むことを開示していたという。作品内または宣伝において生成AIを利用した作品がSteam上で増加を見せているわけだ(関連記事)。

また2025年の「Steam Nextフェス」参加タイトルに限ったAI利用状況の調査では、生成AIを用いたタイトルの約56%が、ゲーム内アートに生成AIを用いていたという(関連記事)。開発の効率化が主な目的と見られ、近年では生成AIをゲーム開発に用いたタイトルの増加傾向がうかがえる。

そうしてゲーム開発者間でも生成AIの利用が本格化を見せる中で、今回Hooded Horseがパブリッシャー単位で生成AI利用を禁じるといった、大胆な対応を取っていることは興味深い。ゲーム業界でも職種によっては生成AIに仕事を奪われるのではないかといった懸念も見受けられるものの、Hooded Horseとしてはクリエイターを尊重する姿勢を明確に打ち出しているわけだろう。

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Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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