Steamで“新作ゲームが埋もれる”問題、人気パブリッシャーのボスは「そもそも作るべきではないゲームもある」と説明。Steamのせいじゃない
Hooded HorseのCEO・Tim Bender氏が、Steamにおける「ゲームの見つけやすさ」について、Steamのアルゴリズムの問題ではなく、ゲーム開発のプランニングに問題があると述べた投稿が話題を呼んでいる。

海外パブリッシャーHooded HorseのCEOを務めるTim Bender氏が、PCゲーム、特にSteamにおける「ゲームの見つけやすさ」に言及した内容が話題となっている。同氏はSteamにて多数のゲームが“埋もれてしまう”という現状について、そのいくつかは予算の想定上「作られるべきではない」との見解を示している。
SteamはValveが展開するゲーム配信プラットフォームであり、PCゲーム市場においては最大級の規模を誇っている。そんなSteamでは日夜数多くのゲームがリリースされている。非公式統計サイトSteamDBによる集計では、昨年では計1万8559本リリースされ、2025年では現時点で1万9230本がすでにリリースされている。安価で扱いやすい開発ツールの台頭、参入障壁の低下などもあってか、2020年の9656本と比べて昨年と今年の2年連続で約2倍の合計リリース本数と、顕著な増加傾向にある(関連記事)。
そうしたなかではSteamにおいて新作ゲームが“埋もれてしまう”状況も一部では問題視されてきた。たとえばSteamDBによれば今年リリースされたゲームの約半数にあたる9327本がユーザーレビュー件数が10件未満だったという。つまりリリースされたほとんどのゲームが購入されていない、あるいはプレイされていない状況もうかがえる。こうした問題について、Steam側の機能で幅広い作品がユーザーの目に触れるように是正すべきといった声もあるようだ。
一方で、Hooded HorseのCEOであるTim Bender氏が投じた見解が注目を浴びている(GamesRadar+)。Hooded Horse は2019年に設立されたアメリカのパブリッシャー。ストラテジーゲームを多く送り出すことに定評があり、『Manor Lords』や『He is Coming』『9 Kings』などのパブリッシングを担当している。そんなBender氏の見解では、Steamの発見システム(discovery system)は優れているとのことで、匹敵する他プラットフォームは存在しない、と述べている。

Steamにおいては、トップに売れ筋のゲームが表示され、ユーザーのプレイしているタイトルのタグに基づいたゲームが続いて表示される。プレイ履歴に基づくおすすめセクションでは、ニッチな趣味にさえも“超特化”したタイトルが表示されるとして、キュレーションが明確に機能していると考えているようだ。たとえばBender氏のSteamでは、同氏が『リムワールド』をプレイしているため、好みに合ったコロニーシムや都市建設ゲームがおすすめされているとのこと。そのほかのセクションやページでも、すべてがゲームの発見を助ける仕組みになっているとBender氏は語る。ちなみに過去にはSteamの開発者公式サポートグループSteamworks Developmentが、公式動画でそうした仕組みについて解説していたこともある(関連記事)。
一方、Steamにおいては先述の通り、大量のゲームがリリースされることにより、 “供給過多”ともいえる状況となっている。登録費用回収すらできないタイトルも多いなどと、リリースしたゲームが埋もれてしまう懸念も寄せられている(関連記事)。
Bender氏は、そうした“埋もれてしまう”状況の改善をSteamのゲームを紹介するシステムに頼るのではなく、プロジェクトの計画でカバーすべきと考えているようだ。ゲーム開発者/スタジオが持続可能なゲーム開発を続けていくには、ゲーム開発にかかるコストと、到達可能な市場規模を、早期段階で現実的かつ厳しく見極めることこそが重要だと語っている。

具体的には、持続可能なゲーム開発、つまりゲームが“成功”し、次作の開発に進むことができるようにするという観点では、慎重に見積もった上で中程度の売上だとしても達成できるような予算設定が必要になるという。そしてそうした予算規模を計画するにおいては、時に「作られるべきではないゲーム」もあるとの考えを述べている。つまりリリース前の段階で作品がどのくらい売れるかを正確に見積もり、たとえヒットしなくても“中くらい”の売上であれば次の作品の開発に進める程度には予算を決めておくことが求められているということだろう。
とはいえBender氏はそうしたハードルを乗り越えてもリスクは常に残り続けるとし、開発元が安定するためのパブリッシャーとしての経営理念も明かしている。同氏はパブリッシャーは多様なポートフォリオを持っているため、リスクを分散できると説明。そのためたとえ特定の開発元のプロジェクトでパブリッシャーが損失を被っても、別の成功したプロジェクトで補填し、開発者を“犠牲”にせずに安定したキャッシュフローを提供していくことができると説いている。いちど損失を出したスタジオであっても将来のヒット作を生み出す可能性があるため、長い目で見て利益と損失を相殺できることを前提に考えているようだ。
なおHooded Horseの作品では『Manor Lords』の早期アクセス配信開始直後、同作のアップデート頻度がゆっくりとしていることから批判も受けていたが、Bender氏が反論。成功によって新たな成長への期待のハードルを上げ続けてはならないといった、「持続可能な開発姿勢」を説いていた(関連記事)。売上にせよ開発ペースにせよ、持続可能性を重視する同社の方針も垣間見えるだろう。
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