『ヘルダイバー2』が突如「奇妙なレビュー爆撃」を受ける。“99.9783”とだけ書かれた謎のレビュー集まる

『HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2)』実施されていた「全体命令」を巡り、Steamユーザーレビューに奇妙な不評が集まるレビュー爆撃状態が発生している。

Arrowhead Game Studiosは5月20日、『HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2』に向けて大型アップデート「民主主義の命運」を配信開始。これに際して実施されていた「全体命令」を巡り、Steamユーザーレビューに不評が集まる、いわゆるレビュー爆撃状態が発生している。ただこの背景には、全体命令の目標についての“誤解”があったようだ。

本作は、『HELLDIVERS』の続編となるTPSだ。プレイヤーはスーパーアース連邦のエリート部隊ヘルダイバーの一員となり、宇宙生物のムシ(ターミニッド)や、オートマトンと呼ばれる殺人ロボット、そして高度な文明をもつイルミネイトに立ち向かうミッションに挑む。大型アップデート「民主主義の命運」では、あろうことかスーパーアースにイルミネイトが襲来。本作にて初めてスーパーアースが戦いの舞台となり、広大な市街地がプレイアブルマップとして実装された。


なお本作には指定期間内にサーバー内のプレイヤー全員で達成を目指す「全体命令」という目標が存在。達成された場合、命令に貢献したプレイヤーは報酬を獲得可能だ。そして今回のイルミネイト襲来に際しては、スーパーアースの防衛が全体命令として設定されてきた。

そんな今回の全体命令を巡って、本作がいわゆるレビュー爆撃を受ける事態が発生している。レビュー爆撃とは、Steamユーザーレビューなどに短期間かつ大量にレビューを投稿することによる、レビュースコアの操作行為のことだ。Steamといったプラットフォームのガイドラインでもこうした行為は禁じられている一方、ゲームの販売・運営方針に対する不満など、さまざまな理由をきっかけにしてしばしば発生している現状がある。

今回本作では5月29日から本稿執筆時点にかけて投じられた約5100件のレビューのうち、3500件以上も不評レビューが集まっている。ゲーム内容の評価について投じられた不評レビューもある一方で、「99.9783」という数だけが書かれた不評レビューも存在。そうした風変わりな不評レビューは、主に中国語ユーザーから投じられている。


この99.9783という数は、先述した今回の全体命令に関するものだ。今回の全体命令では大目標としてイルミネイト艦隊の戦力ゲージが存在。艦隊の戦力ゲージを削り切るまでに、都市を守り抜くといった設定になっていた。ただし終盤には5つの都市が陥落し、イクオリティ・オン・シーとプロスペリティ・シティという残る2つの都市の防衛が目標として設定されていた。それぞれの都市がどの程度「保持」されているかは、パーセンテージで示されていた。

このうちイクオリティ・オン・シーは、現実の地球では上海あたりに位置する都市だ。あくまで架空都市ではあるものの、このことが中国ユーザーの大きな注目を集め、防衛戦に参加するプレイヤーが殺到した様子。これを受けて、社会情勢などを抜きにして中国のユーザーと欧米のユーザーが一致団結してプレイされている状況がネットミーム的な盛り上がりにも繋がっていた。


しかしイクオリティ・オン・シーの保持率が、99.9783%から一向に上がらない状況があった様子。最終的には99.99334%とわずかに上昇していたものの、それでも100%には届いていなかった。100%に到達できないように内部的に設定されているのではないかといった疑惑が、先述した「99.9783」とだけ記載するような不評レビューに繋がっていたようである。


ただこれは、今回の全体命令の設定どおりともいえる。というのも、あくまで最終目標はイルミネイトの戦力ゲージを削り切ることであり、都市については「保持し続ける」という目標であった。軌道上にはイルミネイトの宇宙船が健在であり、敵を送り続けている。いくら都市の保持率を上げたところで戦力ゲージが残っていれば戦闘は終わらない設定となっていた。

ではなぜ批判を寄せるユーザーが多く現れていたのか。レビュー爆撃状態に至った引き金は定かではないものの、中国のユーザーであり本作を上限となる150レベルまでプレイしているというValkyrie_Yukikaze氏は、Redditにて中国のプレイヤーコミュニティの状況を報告している。同氏の考えでは、混乱が生じた一因は「翻訳」にあるという。


中国語ではイクオリティ・オン・シーの保持率について「%保卫成功」と記載されている。日本語では防衛成功といった意味になるだろう。つまり保持している割合というより、成功率・達成率といったニュアンスになっている。このことは中国語ユーザーに都市を完全に奪い返せるといった印象を与えた可能性があるようだ。


また先述したとおり今回のイクオリティ・オン・シー防衛は中国ユーザー間にブームを巻き起こしており、ゲームの設定上何が起こっているかを理解していない新規ユーザーも集った模様。このことから、原因となっているイルミネイトを退けない限りイクオリティ・オン・シーは奪還できないという設定を後から知り、納得できないユーザーも一定数いたようだ。結果としてギリギリ100%に到達できない状況を受けて、それまで都市の奪還を目指して熱中していた中国ユーザーがSteamユーザーレビューに一気に不満を寄せることになったとみられる。

とはいえそうした中で昨晩、イルミネイト自体の戦力ゲージは削り切られることとなった。全体命令達成に際してのゲーム内告知では、イクオリティ・オン・シーとプロスペリティ・シティが最後まで健在であったことが報告。「100%到達」は実現しなかったものの中国ユーザーらは団結して都市を守り抜いたといえる。

全体命令における目標の誤解から生じたとみられる今回のレビュー爆撃。翻訳におけるニュアンスの難しさも伺える事例といえるかもしれない。なお本作の公式Xアカウントは特にイクオリティ・オン・シーにおけるプレイヤーの奮闘を称えるポストをおこなっている。“ほぼ100%”まで保持率を高めたプレイヤーの戦いぶりをしっかりと見届けていたのだろう。

『HELLDIVERS 2』は、PC(Steam)/PS5向けに配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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