『黒神話:悟空』開発元ボス、GOTYを逃し「2年前から受賞用スピーチ原稿を準備していたのに」と号泣。でもめげない

『黒神話:悟空』のディレクターを務めるFeng Ji氏は12月14日、「The Game Awards」にて同作がGame of the Yearを逃したことへの無念を伝える声明をSNSに投稿した。

黒神話:悟空』のディレクターを務めるFeng Ji氏は12月14日、「The Game Awards」にて同作がGame of the Yearを逃したことへの無念を伝える声明をSNSに投稿した。作品の出来にかなり自信をもっており、受賞した場合のスピーチの原稿をなんと2年前から用意していたという。

本作は、西遊記を題材にしたアクションゲームだ。開発を手がけるのは中国に拠点を置くGame Science。本作にてプレイヤーは孫悟空を思わせるキャラクター「天命人」を操り、危険と不思議が溢れる西遊の旅路に出る。西天(天竺)を目指す冒険のなかでは、強大な妖怪たちも天命人の前に立ち塞がる。Unreal Engine 5(以下、UE5)を用いて描かれる美麗なグラフィックと、迫力や手応えある戦闘が特徴だ。

本作は発売後にSteamにおける歴代2位の同時接続プレイヤー数を記録したほか、3日間で売上1000万本を達成する大ヒットを見せた。ゲームアワード「Golden Joystick Awards 2024」においては最優秀賞であるUltimate Game of the Yearを獲得しているほか、「The Game Awards 2024」(以下、TGA 2024)でもGame of the Year(以下、GOTY)を含む複数部門にノミネートされていた(関連記事123)。


そしてTGA 2024において『黒神話:悟空』は、Best Action Game・Players’ Voiceの2部門を受賞。一方でGOTYについては本作は受賞を逃し、Team ASOBIによる『アストロボット』が栄冠を手にした(関連記事)。この結果を受けて、Game ScienceのCEO兼本作のディレクターを務めるFeng Ji(冯骥)氏が、中国のSNSであるWeiboにて声明を投じ無念を伝えている

Feng氏は声明のなかで、『黒神話:悟空』の出来栄えに非常に自信をもっていたことを強調。スタッフの多くは開発途中のバージョンを繰り返しプレイしていたことからか、まだ欠点が多いのではないかといった懸念をいだいていたものの、同氏は彼らをしきりに励ましてきたという。また声明では、賞を与えられたときに自信を抱くのではなく、勝算を立てて自分の行動を選び続けることが重要だといった同氏の信念も説かれている。

そのためかFeng氏は、なんと2年前から『黒神話:悟空』がTGAにてGOTYを勝ち取った際のスピーチ原稿を用意していたという。開発途中から本作に強い自信をもち、チームを指揮してきたこともうかがえる。

Weiboに投じられたFeng氏の声明(一部抜粋)


しかし結果として本作はGOTYを逃すこととなった。同氏はほかのノミネート作品について素晴らしいゲームであったとしつつも、「可我真没搞明白这次年度游戏的评选标准是啥(GOTYの選考基準は本当によくわからない)」ともコメント。本作の出来に自信があったゆえか、GOTYを勝ち取れなかったことに納得できない想いもあるようだ。先述のスピーチ原稿を使えずじまいだったことについても、号泣する絵文字とともに「信じられない」と綴っている。

ちなみに元Santa Monica Studioでゲームライターを務めていたAlanah Pearce氏は、同氏がTGA 2024において目撃したというGame Scienceの開発チームの様子をストリーミング配信にて報告。『アストロボット』の受賞発表時に、Game Scienceの開発チームが泣いているのを見て驚いたという。実際に悔し涙を流すほどに、スタッフの無念は大きかったようだ。

なおGame Scienceは本作を手がける以前は、PC/モバイル向けの基本プレイ無料ゲーム『Art of War: Red Tides』などを手がけていたスタジオだ。本作はそんな同スタジオにとって初のシングルプレイ向け大型ゲームとして、2020年8月にUnreal Engine 4で開発されたプレアルファ版のゲームプレイトレイラーと共に発表。その後ゲームエンジンがUE5に変更されつつ開発が進められてきた。今回のFeng氏の声明によると、プロジェクトとしては合計で約7年間取り組まれてきたという。

先述のとおり本作は発売後3日間だけで売上1000万本を達成しており、惜しくもGOTYは逃したもののスタジオ初の挑戦としては大成功を果たしたといえる。Feng氏はこの成功は偶然ではなく、中国の文化や才能、ビジネス環境やゲーム産業などが生み出した必然であり、世界中のプレイヤーに受け入れられた結果だという考えを述べている。今後も新たなゲームを作り上げ、成功をおさめる自信があるのだろう。同氏はGame Scienceを先駆けに、ゲームで中国の物語や文化を世に広める同業他社が現れることにも期待を寄せているそうだ。

また声明でFeng氏は『黒神話:悟空』が題材にした「西遊記」における「世上无难事,只怕有心人(世に難事はない、ただ心ある人を恐れる)」という格言を引用。同氏はこの格言が「立ち向かおうとする気持ちさえあれば困難や失敗を恐れる必要はなく、簡単に打ち負かされることもない」ことを伝えていると考えているそうだ。GOTYを逃しても、ひるまずに奮起する姿勢も垣間見える。

ちなみに『黒神話:悟空』に向けては12月14日にすべての機種向けにアップデートが配信され、さまざまな新要素が追加された(関連記事)。今回のFeng氏の声明を見るに、本アップデートをもって少なくとも同氏は本作の開発を終えるようで、今後は新たなプロジェクトを率いるのかもしれない。同氏はGOTYを逃したことに大きな無念も示しつつもへこたれない構えを見せており、Game Scienceの将来の作品も注目されるところだろう。

『黒神話:悟空』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5向けに配信中だ。Xbox Series X|S向けにもリリース予定。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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