オープンソースゲームエンジン「Godot Engine」採用ゲーム急増中、Steamでは今年の作品数がすでに昨年の合計実績を超える。『バックパック・バトル』など人気・注目作にも採用


ゲームエンジン「Godot Engine」の開発者Juan Linietsky氏は8月6日、同エンジンを用いて開発されSteamでリリースされた作品の本数について、今年はすでに昨年の実績を上回っているとして、大きな成長を遂げていると報告した。

Godot Engineは、PC/モバイル/Web向けゲームおよびアプリを制作できる2D/3Dゲームエンジン。開発者のひとりであるLinietsky氏が、かつて自身のスタジオのために手がけた内製エンジンをルーツとし、その後2014年に一般に公開された。オープンソースとして提供され、完全無料で利用可能。開発にかかるコストは寄付によって賄われている。


Godot Engineで開発されたゲームには、たとえば『Brotato』や『Cassette Beasts』『Dome Keeper』『うさぎしま』『Cat Cafe Manager』『Kamaeru: カエルの楽園』などのインディーゲームが挙げられる。ゲームエンジンの大きなライバルとしてUnityやUnreal Engineなどが存在するなか、Godot Engineを採用するスタジオは徐々に増え、こうした人気作も登場してきている状況だ。

今回開発者のJuan Linietsky氏が示した、Godot Engineを用いて開発されSteamでリリースされた作品の各年ごとの本数を表すグラフによると、2020年になって100本を超え、その後も順調に増加。2022年は315本、2023年は380本だった。そして2024年は、まだ7か月余りしか経っていない現時点で、すでに昨年を上回る394本に達しているとのこと。Linietsky氏は、爆発的な成長であると感想を述べている。なおこのグラフは、Steamの非公式データベースサイトSteamDBによる集計をもとにしているようだ。

今年リリースされた採用作品には、たとえば『バックパック・バトル』や『Until Then』『Of Life and Land』『Windowkill』などがある。また、『Unrailed 2:バック・オン・トラック』や『Dig Dig Boom』『Stunt Xpress』などが、2024年内にリリース予定となっている。


グラフから分かるように、Godot Engineの採用作品は毎年のように増加しており、今年が昨年を上回るペースとなっていることは、順当といえるかもしれない。ただ、今年はまだ5か月ほど残されており、最終的にはこれまでにない成長率を記録する可能性がある。このことからLinietsky氏は、爆発的な成長だと述べたのだろう。

この背景のひとつには、Unityを巡る混乱があるかもしれない。Unityを開発・提供するUnity Technologiesは昨年9月、各提供プランの利用料金に加えるかたちで、ゲームのインストール数に応じた新料金体系「Unity Runtime Fee」を導入すると発表。その仕組みに不透明な部分があることなどから利用者から大きな反発の声が上がり、結果として適用規定の一部撤回や変更に追い込まれた(関連記事)。

この当時、Unityの一部利用者のあいだでは、Unity Technologiesへの不信感から代替ゲームエンジンを求める動きがにわかに高まり、Godot EngineのSteam版の利用者数が急増する様子も観測された(関連記事)。開発者らからは、上述したUnityの方針転換を歓迎する声も聞かれたが、Godot Engineに乗り換えた開発者も少なくなかったことから、今年Steamでリリースされた採用作品の本数が大幅に増加しているのかもしれない。最終的に今年は何本に達するのか興味深い。

ちなみに余談であるが、Unityを用いて開発されSteamでリリースされたゲームの本数は、おおむね毎年成長を続けており、2023年が約7400本だったところ、今年は現時点で約5000本という状況(SteamDB)。ペース的には昨年の実績を上回りそうである。