ゲームエンジン「Godot Engine」の利用者が、ここ数日大きく増加しているようだ。同エンジンは公式サイトやGitHubのほか、PCゲームストアを通じても配布されており、Steamでの同時接続ユーザー数が連日過去最高を更新している。
Godot Engineは、PC/モバイル/Web向けゲームおよびアプリを制作できる2D/3Dゲームエンジンだ。開発者のひとりJuan Linietsky氏が、かつて自身のスタジオのために手がけた内製エンジンがルーツとなっており、その後2014年に一般に公開された。オープンソースとして提供され、完全無料で利用可能。開発にかかるコストは寄付によって賄われているとのこと。
上に掲載した動画は、Godot Engineを用いて開発されたPC/コンソールゲームの紹介映像だ。『Brotato』や『Cassette Beasts』『Dome Keeper』などの人気タイトルも含まれている。モバイルゲームでは、たとえば先日リリースされた『うさぎしま』などで採用されている。
Godot Engineは、公式サイトやGitHub、またSteamやEpic Gamesストア、itch.ioといったPCゲームストアにて配布されている。このうちSteam版について、同時接続ユーザー数が急増している。しばらく前からバージョンアップなどにより増加傾向にはあったが、9月12日頃を境にその伸び率が増えている模様。連日のように同時接続ユーザー数の最高記録を更新し、本稿執筆時点でのピーク時には、9月12日以前の記録の2倍超にあたる約670人に達している(SteamDB)。
Image Credit: SteamDB
このGodot Engineユーザー数増加の背景には、ゲーム開発プラットフォーム「Unity」の新料金システムが発表されたことがありそうだ。Unityを開発・提供するUnity Technologiesは9月12日、各提供プランの利用料金に加えて、ゲームのインストール数に応じた料金体系「Unity Runtime Fee」を、2024年1月1日から導入すると発表(関連記事)。実際に支払いが発生する基準に達する利用者は全体の10%以下と説明されているが、Unityの利用者数は2022年時点で23万にのぼると報告されており、影響は小さくないものとみられる。
また、エンドユーザーによる正規インストールをどのようにして正確に把握するのか不透明な点や、GitHubにてUnityの利用規約履歴が削除されていたことなどにより、利用者のUnity Technologiesへの不信の声が噴出。上述の利用規約履歴に関しては、従来Unityでは規約が更新された際にその内容に納得できなければ、以前のバージョンを以前の規約のまま利用できたが、新料金システム発表を前にその手段が密かに封じられていた格好だ。
そしてSNS上では、Unityから別のゲームエンジンへの乗り換えを模索する開発者らの声が聞こえ始めることとなった。そのなかには人気作品を手がけるスタジオも含まれる(関連記事)。
*YouTubeにてGodot Engineのチュートリアル動画を検索する人も、Unity Runtime Feeの発表以降増加しているとの報告。
Unityからの乗り換え先としていくつかのゲームエンジンが挙げられるなか、Godot EngineはSNS上で候補として言及されることの多いゲームエンジンのひとつ。先述した『Cassette Beasts』の開発者Tom Coxon氏のように、現ユーザーがアドバイスを投稿する姿もみられる。そこで、まずは試してみようという人が増え、それがSteam版Godot Engineの同時接続ユーザー数の増加として目に見えるかたちになったのだろう。公式サイトなどで配布されているバージョンも、同じく利用者が増えているものと考えられる。また、Unreal Engineなどほかのゲームエンジンでも同様の動きがみられているかもしれない。
そうした乗り換え模索の動きを受けてか、Godot Engineの開発を率いるJuan Linietsky氏は、これまで他社製品との競争は意図していなかったが状況が変わったとコメント。UnityユーザーがGodot Engineに移行する際には何に苦労しているのかを把握したいとし、自らいくつか改善点を挙げつつフィードバックを求めている(以下投稿のスレッド参照)。
Unity Runtime Feeの発表に対するUnityユーザーの反発は非常に大きく、Godot Engineなどへの乗り換えの検討だけでなく、Unity Runtime Feeの導入撤回を求める声も多い。Unity Technologiesは近日中にポリシー変更をするようで、その内容が注目される。その一方でGodot Engineにとっては、より幅広い開発者に受け入れられるよう改善されていく契機となった模様である。