Steamで2024年発売された小~中規模ゲームは「6割以上まともな収益が出ていない」との調査報告。“成功”を掴めるゲームはさらに一握りか

OP Game Marketing のJordan Brown氏はSteamで2024年発売されたAA級およびインディーゲームの売上について、解析結果を報告。“まともな収益”を生んだゲームは、全体の4割にも満たないと報告された。

OP Game Marketing のJordan Brown氏は2月5日、各種統計データをもとに、Steamで2024年発売されたAA級およびインディーゲームの売上について、市場調査データなどを用いて解析したと報告。報告によれば、2024年に発売された約1万8000本のうち、500ドル(約7万6000円)以上の収益を生んだ作品は約36%になるとのことだ。

今回調査をおこなったというJordan Brown氏は、XR技術を用いたゲーム開発などを手がけるBreach VRのマーケティングおよびコミュニティマネージャーを務めている。また主にゲームのマーケティングに関わる記事を取り扱うメディアOP Game Marketingを開設している人物でもある。

一部のゲームしか商業的に成功できない難しさ

まずBrown氏は1月にOP Game Marketingにて、2024年のSteamでのゲームの販売状況についての分析結果を公開していた。分析においては、ゲーム開発者向けのマーケティング情報などを提供するGameDiscoverCoと、Steamの非公式分析サイトGamalyticのデータを利用。Steam向けに販売されたゲームのうち、AAA級、AA級、インディーの種別に分け、それぞれ売上上位50作品を取り上げた分析だ。なお各ゲームの区分についてはGamalyticによる分類を用いている。具体的には以下のようになっている:

インディー:Steamでの累計収益が1万ドル(約150万円)以上、5000万ドル(約76億円)未満のパブリッシャー

AA級:少なくとも2本のゲームをリリースしている、Steamでの累計収益が5000万ドル以上5億ドル(約760億円)未満のパブリッシャー

AAA級:少なくとも2本のゲームをリリースしている、Steamでの累計収益が5億ドル以上で、ゲーム1本あたり平均の収益が1000万ドル(約15億円)以上のパブリッシャー

Brown氏は各カテゴリの上位50タイトルについて、ポピュラーな価格帯やジャンル、レビューの総数など、多角的な視点からの分析を投じている。この分析はユーザーから反響が大きく、さらに詳細なデータが欲しいとする声も見られたという。

そのため、今回はAA級からインディー、趣味のゲーム開発者(Hobbyist)に分析対象を絞りつつ、「500ドル(約7万6000円)以上の収益をあげたタイトル」すべてを計上して調査。OP Game Marketingにて、調査結果を報告している。なおここで追加された「Hobbyist」もGamalyticの分類に則った区分であり、Steamでの累計収益が1万ドル未満のパブリッシャーと定義されている。

*AA級・インディー・Hobbyistの区分における、500ドル以上の収益をあげた作品についての表

まずBrown氏は、2024年にリリースされたゲームは、約1万8000本にのぼると報告。ちなみにこの対象からは、英語に対応していない作品に加え、条件としてはAA級あるいはインディーに分類されるものの、『黒神話:悟空』や『マーベル・ライバルズ』のような区分の“外れ値”にあたるような作品も除外しているという。

その中から、500ドル以上の収益をあげた作品に絞ると、6509本に限られるという。これは2024年にリリースされたゲームのうち約36%に該当する。調査結果よりBrown氏は、多くの開発者にとって、商業的に成功することがいかに難しいかを浮き彫りにしている、との見解を示している。なおSteamでは低品質で乱造される、いわゆるアセットフリップにあたる作品もあり、約1万8000本という母数にはそうしたゲームが一部含まれるとみられる点には留意したい。

『Path of Exile 2』

開発規模で異なる人気ジャンル

加えてそのほかの調査結果として、AA級ゲームの収益の83.92%が上位10%の作品によって占められているという。トップ5としては『Warhammer 40,000: Space Marine 2』『Path of Exile 2』『The First Descendant』『Manor Lords(マナー・ロード)』『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』が挙げられている。

またインディーゲームについても総収益の約85%が上位10%のゲームによるものだという。ちなみにインディーゲームのトップ5は、『Gray Zone Warfare』『Balatro』『Supermarket Simulator』『Chained Together』『TCG Card Shop Simulator』となっているそうだ。さらにAA級とインディーでは人気となるジャンルも変わる模様。AA級タイトルではRPGやアクション、協力プレイ、3Dグラフィックの作品が人気を博すのに対し、インディーではシミュレーションやアニメ調、シングルプレイの作品が、Hobbyistではピクセルグラフィックやアドベンチャー作品が人気だったという。

そうした分析を見るに、より多くの資金があれば一定の水準で3Dグラフィックやマルチプレイのゲームを打ち出し、成功しやすい傾向も表れているのだろう。一方で資金力よりもアイデアや個性が重要になると思われる分野/表現技法では、インディーやHobbyistが高い収益性を見せたとみられる。開発規模によっても、持ち味とする分野が異なることをうかがわせる結果となっている。

AA級のタイトルにおける、収益性の高かったジャンル
インディーのタイトルにおける、収益性の高かったジャンル
Hobbyistのタイトルにおける、収益性の高かったジャンル

いずれにせよBrown氏の調査報告からは、Steamで数多くのタイトルがリリースされるなかでは、まとまった収益を上げることが難しい傾向も垣間見える。かねてよりSteamDBのデータからも購入・プレイされていないゲームが多い可能性は見受けられたが(関連記事)、今回はGameDiscoverCoやGamalytiのデータをもとに、より詳細にそうした傾向が示されたかたちだ。また人気タイトルに売上が偏っている状況もみられ、Steamへの販売だけで“成功”する難しさもうかがえる調査結果かもしれない。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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