ゲーム開発者が「1作目でやらかした失敗」をぶっちゃけ合う。“しくじった”からこそ次に生かす
Redditのゲーム開発者向けコミュニティでは、開発者たちの苦い失敗談も語られている。

海外掲示板Redditにて、ゲーム開発における教訓を共有するよう求めるユーザーの投稿が注目を集めている。その中では、開発者たちの苦い失敗談も語られている。
Redditユーザーのrafaeldecastr氏は11月10日、ゲーム開発者向けコミュニティr/gamedevにて、これまでに2本以上のゲームをリリースした開発者を対象に投稿。「最初にリリースしたゲームで学んで2作目に活かすことができた、もっとも重要な教訓は何か」と質問した。rafaeldecastr氏は例として、1作目で上手くいったため引き続き採用したことや、1作目を踏まえて変更すべきだとわかっていたのに、2作目でも何らかの理由で繰り返してしまった間違いなどを挙げた。
プランニングの重要性
この投稿に対しては、多くのゲーム開発者が返信を寄せている。たとえばTrinketTom氏もそんな開発者のひとり。このユーザーは、アメリカ・シカゴを拠点とするTrinket Studiosの共同創業者Tom Eastman氏であるとみられる。同スタジオではパズルアクションゲーム『Battle Chef Brigade』を2017年にリリースし、Steamユーザーレビューで1530件中95%の好評を受けて「圧倒的に好評」ステータスを取得。また2作目としては先月カードバトルRPG『Battle Suit Aces』をリリースし、こちらでも「非常に好評」ステータスを獲得している。
TrinketTom氏によれば、1作目の『Battle Chef Brigade』の開発時には、当時Kickstarterでのクラウドファンディングを通した支援を受けていたこともあり、支援者を失望させないようにと、ゲームの一要素に過ぎない料理システムを作りこみ過ぎてしまったのだという。そして2作目として挑んだ『Battle Suit Aces』においても規模感の設計に苦戦。ストーリーが膨大になったために、実際にはカードバトルとセットで遊ばれるビジュアルノベルのパートのボリュームを意識しすぎてしまう結果に。アニメーションについて1コマずつ固有のイラストを用意してしまったり、好評だったナレーションについて規模を見誤り、2万1000以上もの台詞を収録することになってしまったそうだ。

そうした経験から、TrinketTom氏は開発初期における規模感の管理の重要性を強調。難しいことであるとしつつも、下流の工程への影響をもっとも制御しやすいつまみ(knob)であるとの教訓を伝えている。1作目で学びきれず、2作目までの開発を通して成長できたという体験談が語られたかたちだ。

まずは基本から
またCashOutDevを名乗るユーザーも返信をおこなっている。このユーザーは、2015年に1作目として見下ろし型シューター『Cash_Out』を手がけた個人デベロッパーUntouchの模様。同スタジオでは、今年7月にダンジョン攻略ギルド運営シム『Heroes For Hire』を2作目として早期アクセス配信している。どちらの作品もレビュー数は少ないものの、少なくとも10年にわたってソロ開発に取り組んでいる人物だ。
CashOutDev氏は返信の中で、発売前からModシステムを導入する価値はないと忠告している。というのも、1作目の『Cash_Out』には早期アクセスとしてリリースされた段階で、ステージの自作機能が搭載されている。ステージ作成を助ける開発ツールがゲームに同梱されており、作成したステージをSteamワークショップを通してアップロードできる。さらに、ゲームに組み込まれたスクリプト言語を使用することにより、ステージに独自のロジックを追加することも可能。ユーザー自身がゲームをカスタマイズする遊び方を初めから実装していたのだ。

近年さまざまなPCゲームにおいて、ゲームのシステムやコンテンツをModを用いて拡張できるような仕組みが採用されている。たとえば『The Elder Scrolls V: Skyrim』や『グランド・セフト・オートV』などの作品では、コミュニティによって膨大なModが作られ、遊ばれてきた。Modの存在が作品の長年の人気に寄与しているといった例は少なくない。
CashOutDev氏いわく、多くの成功した作品がModシステムを備えていると言及しつつ、それはあくまでも発売後にゲームを遊び尽くした後の話であるとして、最初からModシステムをゲームに組み込むべきではないと主張した。

なお前述した反省を踏まえてか、2作目の『Heroes For Hire』では基本となるシステムを優先的に開発している様子。ストアページに掲載されている早期アクセスについての説明によれば、ゲームのシステムはすでにその90%が完成しているという。スキル・ダンジョン・アイテム・装備といったゲームコンテンツは25%程度の進捗とのことで、今後はこちらをメインに取り組むことになるのだろう。前作に見られたようなMod機能が追加されるかどうかは明言されていないものの、製品版を発売したのち、ユーザーがゲームに飽き始める頃などを狙っての実装を検討しているのかもしれない。
このほかにもスレッド内ではゲーム開発者とみられる投稿者からさまざまな教訓が寄せられている。この中ではたとえばできるだけ早く実際のプレイヤーのフィードバックを得た方がいいとする意見もみられ、難易度やアニメーションなど微調整に多くの時間を費やすことになるという各種要素の指標を得ることがおすすめされている。ほかにもSteam Nextフェスで体験版を配信しなかった1作目と、配信した2作目では結果がケタ違いであったとする報告も存在。イベントへの体験版出展による宣伝効果や、フィードバックが活かされたことが結果に繋がったわけだろう。
一方で早期アクセス配信について、配信を急ぎすぎてクオリティの低いままであったことで、レビューや反響が壊滅的であったという述懐も見られる。本来であれば早期アクセス配信もユーザーのフィードバックを集めながら開発を進めるスタイルではあるものの、配信に踏み切る際には作品に一定の完成度が求められている傾向もうかがえる。
今回はrafaeldecastr氏の投稿に端を発して、ゲーム開発におけるさまざまな教訓が伝えられた。多彩な失敗談が寄せられており、1作目のリリースでいきなり成功を掴む難しさもうかがえる。各開発者が身をもって体験したとみられる知見が集まるスレッドになっており、興味のある人はチェックしておくのもいいだろう。また本稿で紹介した開発者も含め、各開発者が教訓を活かして取り組む次回作にも注目したい。


