元『CoD』開発者が「最近の『CoD』含むゲームは収益追求に偏りすぎ」と苦言。“プレイヤーを逃がしにくい”システムの是非

かつて『Call of Duty』の開発に携わっていたMark Rubin氏が、現在の『CoD』シリーズ作品を含む最近のゲームに関して苦言。収益性を追求するシステムの存在などを問題視している。

『XDefiant』のエグゼクティブプロデューサーを務めるMark Rubin氏は4月29日、『Call of Duty』をやめ『XDefiant』をプレイしているというXユーザーのポストに返信。同氏は過去に『Call of Duty』の開発に携わっていた人物として、『Call of Duty』シリーズをはじめとする最近のゲームでは収益を重視しすぎているのではないかとの見解を示した。

『Call of Duty(コール オブ デューティ)』はActivisionが運営する人気FPSシリーズ。2003年に発売された第1作から現在に至るまで20年以上の歴史をもつ。現在はキャンペーンモードおよびマルチプレイモードを含む最新作『Call of Duty: Black Ops 6』と、基本プレイ無料のバトルロイヤル作品『Call of Duty: Warzone』でシーズン展開が行われている。

『Call of Duty: Black Ops 6』


また『XDefiant(エックスディファイアント)』はUbisoftが手掛ける基本プレイ無料のオンライン対戦FPS。本作はUbisoftタイトルのクロスオーバー作品となっており『Tom Clancy’s』シリーズや『ウォッチドッグス』シリーズなどから勢力やキャラが登場し、それぞれの特色に応じた役割が与えられている。昨年12月、本作は現地時間6月3日にサービス終了することが発表された。背景として、おもに収益面に問題があったことが明かされていた(関連記事)。

『XDefiant』

マネタイズ重視」との批判

同作のサービス終了が迫る中、4月29日にとあるXユーザーが『XDefiant』の運営元宛に投稿したポストでは、同作のサービス終了を寂しく思う気持ちが綴られている。一方でこのユーザーは、『Call of Duty』シリーズ作品を最後にプレイしたのが11か月前だとわかる画像を添えつつ、同シリーズを手がけるActivisionについて批判。“楽しい”ゲームを作ることよりもお金稼ぎを優先しているとの主張を述べている。

この投稿に対し、『XDefiant』のエグゼクティブプロデューサーを務めるMark Rubin氏が反応。同氏は過去に『Call of Duty』シリーズの開発会社として知られるInfinity Wardにて、同シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務めていた経歴をもつ人物だ。Rubin氏は、昨今では『Call of Duty』を含む多くのゲームが、プレイヤーベースからできる限りお金を稼げる方法を追求しているとの見解を示した。かつてはプレイヤーに遊びたいと思わせるようなゲームの品質がもっと重要だったとしており、多額のマーケティングではなくゲーム内容からプレイヤーが集まっていたとの見解を述べている。


“収益追求”システム

そしてRubin氏は、収益を追求する現代のゲームの特徴として「FOMO」を挙げている。FOMOとは「Fear of Missing Out(取り残されることへの恐怖)」を表し、ゲームにおいては置いてけぼりにならないようゲームの最前線を追い続けなければいけないようなマーケティング手法が当てはまるだろう。期間限定でアイテムを販売したりイベントを実施したりすることで、増益やプレイヤーベースの維持に一定の効果が期待できる施策といえる。

ただ、限られた期間しか入手できないアイテムやプレイできないコンテンツの存在は、ユーザーのストレスや義務感などを緩和するために忌避されることもある。たとえば、今年6月17日にリリース予定の買い切り型FPS『FBC: Firebreak』では、可処分時間が限られているゲーマーでもプレイしやすいように、FOMOを排除した設計がなされるとの方針も発表されている(関連記事)。Rubin氏が述べるように、FOMOのないゲームの方が遊びやすいといった考えもあるだろう。

またRubin氏は「EOMM」についても収益を追求するゲームの特徴として取り上げている。EOMM(Engagement Optimized Matchmaking)は、パブリッシャーのElectronic Artsが特許を取得している技術の背景にある考えだ。「ゲームへの取り組み方」や「ゲーム内アイテムをどれだけ購入しているのか」などのデータを分析し、そのプレイヤーに最適なマッチングをおこなうことで離脱防止を目指すシステムだ(関連記事)。ActivisionではEOMMという名称ではないものの、ゲーム内課金を促す独自のマッチメイキング技術の特許を取得しており、今回の場合ではRubin氏は、こうしたエンゲージメントが意識されたマッチメイキングを総合してEOMMと呼称していると考えられる。

こうした仕組みの1つとしてはプレイヤースキルによるマッチング、いわゆる「SBMM」(Skill-based Match Making)も含まれる。近いレベルのプレイヤーとマッチングさせることでゲームプレイへの意欲を維持することが目的ではあるものの、腕前によってはいわゆるカジュアルマッチでもハイレベルな戦いばかりに放り込まれるなど、負担を感じるプレイヤーが発生する状況もある(関連記事)。『XDefiant』においてもリリース前にはSBMMを採用していないことがアピールされており、Rubin氏の開発哲学も反映されていたのだろう(関連記事)。


訴求力」によるトレードオフ

とはいえ、特にSBMMについては初心者が初心者同士でマッチングしやすい仕組みでもあり、採用されている新作ゲームも引き続き見られる。またFOMOについても先述のとおりプレイヤーベースの維持に一定の効果もあるとみられ、ゲームにどのような効果をもたらすのかは作品によってまちまちだろう。Rubin氏の述べるような、「品質よりもお金儲け」といった方針の表れとは限らない点には留意したい。またFOMOやEOMMなどを採用することが、かならずしも作品の品質を下げるわけでもないだろう。

なおRubin氏は上述したような意見については「かなり簡略化した」考えであるとも伝えている。同氏は、「昨今の多くのゲームがプレイヤーベースからできる限りお金を稼げる方法を追求している」という見解について、もっと込み入った考えをもっているようだ。ただ今回の投稿では長くなりすぎないための簡単な例え話として、「ActivisionよりもLarian Studiosのような存在になるべき」との持論を述べて締め括っている。Larian Studiosといえば早期アクセス配信期間を含め約6年にわたってRPG『バルダーズ・ゲート3』を開発し、各ゲームアワードなどで非常に高い評価を獲得したスタジオだ。FPSとRPGというジャンルの大きな違いはあるものの、FOMOなどの要素を導入しなくともユーザーを惹きつける作品を作れるという例として、開発姿勢には見習うべきところがあると考えている様子だ。

いずれにせよ、元『Call of Duty』シリーズの開発者が古巣の親会社であるActivisionの方針をはっきりと批判したのは興味深い。同氏としてはSBMMをはじめ、Activision傘下での開発方針に不満もあったのかもしれない。とはいえ、そうした仕組みを採用しないことをアピール点としていた『XDefiant』がサービス終了に至った理由としては、収益化までの困難が挙げられている。特に基本プレイ無料の作品として運営される場合、ユーザーを惹き付け、プレイの継続を迫るような仕組みは避けづらい状況もあるのだろう。近年では多種多様なライブサービス型ゲームが展開されており、訴求力とプレイヤーに与えるプレッシャーのバランスは難しい問題となっているのかもしれない。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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