人気農場ゲーム『Fields of Mistria』、「Stardew Valleyに似すぎ」と批判受けるも、“別のゲームの開発元”が反論。「『ドラクエ5』がなければ『ポケモン』もなかった」との自説で助太刀
『Fields of Mistria』について、「『Stardew Valley』の盗作だ」との批判を寄せる声も一部みられるという。一方でコンテンツクリエイターや別のゲームの開発者などが、そうした意見への反論を寄せている。海外メディアGamesRadar+が伝えている。
『Fields of Mistria』は農場生活シミュレーションゲームだ。開発を手がけるのはNPC Studio。舞台となるのは森と海に囲まれた「Mistria」という村。大地震に襲われたMistriaでは、奇妙な魔法が広まっていた。プレイヤーは村を訪れた移住者として農場を運営し、地域の人たちと交流しながらMistriaでの生活を送ることになる。
本作には農業や畜産のほか、釣りや虫捕り、料理や採掘といった要素も用意。探索可能な古代遺跡もあり、危険なモンスターもいるものの貴重な宝を手に入れることも可能だ。またMistriaには30人以上の住人が存在し、交流することが可能。村人からお願いされるクエストをこなすことで村のランクが上昇し、さびれた田舎町が賑わいを取り戻していく。またロマンス要素もあり、恋愛対象となる12人のキャラが用意。さまざまな生業や人々との交流をおこないながら、生活を楽しむのだ。
本作はSteamにて8月6日に早期アクセス配信開始され、すぐさま高い評価を獲得。本稿執筆時点のユーザーレビューでは約4700件中98%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得している。また売上は配信後1週間で10万本を突破しており、売上も絶好調の様子だ(関連記事)。
『Stardew Valley』と似ている?
一方で本作には“『Stardew Valley』の盗作ではないか”とする批判も一部見られるという。このことを報告したのは、のんびりと遊べるゲームをさまざま紹介しているYouTubeチャンネル「The Cozy Gaming Club」のEllie氏だ。同氏は8月20日に「Fields of Mistria & Stardew Valley: A Comparison(Fields of MistriaとStardew Valleyの比較)」と題した動画を公開。このなかで同氏は、過去の『Fields of Mistria』の動画に、「『Stardew Valley』のコピーだ」「アニメーションやアセットが『Stardew Valley』と瓜二つ」といったコメントが多数寄せられていたと伝えた。
Ellie氏はそうした意見が寄せられた原因として、『Fields of Mistria』も『Stardew Valley』も、『牧場物語』の影響を受ける作品であり、ドット絵グラフィックを採用していることがあるのではないかと推察。しかし同氏は続けて、たとえばドット絵グラフィックで比較しても、よく見れば用いられているカラーパレットが大きく違い、『Fields of Mistria』では落ち着いたパステルカラーであるとしている。
このほかにも同氏はゲームプレイなどさまざまな側面から『Fields of Mistria』と『Stardew Valley』が似ているところや違うところを徹底的に分析。またそのなかで同氏は、そもそも『Fields of Mistria』以外にもさまざまなドット絵の農場ゲームあることなども指摘している。
そうして動画の締めくくりにEllie氏は、『Stardew Valley』と比べて『Fields of Mistria』は農場系ゲームの新規層にもとっつきやすいのではないかとの考えを伝えている。同氏としては、『Stardew Valley』は度重なるアップデートによりコンテンツが膨大で、初心者が圧倒される可能性があると説明。一方で『Fields of Mistria』は早期アクセス配信が始まったばかりでコンテンツ量がそれほど多くなく、さらに丁寧なチュートリアルやUIで次にすべきことが分かりやすいとしている。
そしてEllie氏は早期アクセス配信開始時点での『Fields of Mistria』のクオリティについても称賛しつつ、今後の開発次第で大きなポテンシャルを秘めているとの見解を述べた。同氏としては両作は内容に違いがあるだけでなく、異なる持ち味があると考えているようで、また『Fields of Mistria』の今後の展開についても期待を寄せている様子だ。しっかりと同作をプレイ・分析したうえで、少なくとも“『Stardew Valley』の盗作”などとは考えていないわけだろう。
ほかの作品の影響があるからこそ
なおEllie氏の動画に向けては別のゲームである『Critter Cove』の公式Xアカウントが興味深い反応を示した。同作は米国のデベロッパーGentleman Ratにより開発中の、オープンワールド南国生活ゲームだ(関連記事)。同作の公式XアカウントはEllie氏の動画を称賛しつつ、ユーザーに向けて「ゲームとは他人のアートに触発された人が作ったアートである」との見方を説明した。そのためもし『Fields of Mistria』が『Stardew Valley』を参考にした部分があったとしても、“悪いこと”などしていないといった見解のようだ。
続けて、同アカウントは「おそらく『デジタル・デビル物語 女神転生』(1987年発売)がなければ『ドラゴンクエストV』(1992年発売)は存在せず、『ドラゴンクエストV』がなければ『ポケットモンスター』(「赤・緑」は1996年発売)も存在しなかっただろう」との持論を展開。敵を仲間にできるシステムが3作品で共通しているため、先発作品の影響を受けたシステムではないかといった推察だろう。一風変わった自説とともに『Fields of Mistria』をかばっている格好だ。
このうちたとえば『ポケモン』に、本当に『ドラゴンクエストV』からの影響があったかどうかは定かではない。ただ少なくとも『ポケモン』の生みの親である田尻智氏は、子供のころの昆虫採集のほか、特撮「ウルトラセブン」におけるカプセル怪獣などから得た着想を活かして同作を手がけたとされる。『ポケモン』でも開発において別の作品からの影響はあったようだ。
なお先述の『Critter Cove』にも、“海を巡る『どうぶつの森』”のようなゲームを作りたいという想いが開発コンセプトにあったことが公言されている。別の作品に触発されて新たな作品のアイデアが生まれることを開発者として知っているからこそ、上述したような『Fields of Mistria』への擁護をおこなったのかもしれない。
いずれにせよ“『Fields of Mistria』は『Stardew Valley』のコピーである”との一部批判には、ユーザーや別のゲームの開発元も巻きこんでさまざまな反論が寄せられているかたちだ。ゲームに限らず、リスペクト・オマージュと、アイデア盗用の線引きには難しさもある。一方で、細かく内容を比べずに盗用扱いするような一部批判には反論も集まったわけだろう。
『Fields of Mistria』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。
【UPDATE 2024/8/21 15:26】
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