『FF14』バトル担当者、「すべてのプレイヤーにとって丁度いい難易度にするのは難しい」との考えを海外メディアに明かす。カジュアル層or熟練者、ターゲッティングの難しさ
『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)にてリードバトルコンテンツデザイナーを務める中川誠貴氏が海外メディアのインタビューにて、同作のバトルコンテンツにおける設計思想を明かしている。同氏によれば、本作ではコンテンツごとに特定のターゲット層が想定されつつも、幅広いプレイヤーが楽しめるような開発方針が取られているという。
『FF14』は2010年に正式サービスが開始され、2013年の「新生エオルゼア」より装いを新たに本格的にサービス展開されてきたMMORPGだ。メインクエスト・サブクエストのほか、PvPや高難易度コンテンツ、ハウジングなど多種多様なコンテンツが提供されている。また拡張パッケージにより、さらに高レベルのキャラ向けのメインクエストや追加コンテンツを導入することも可能だ。昨年7月には拡張パッケージ第5弾となる「黄金のレガシー」が正式リリースされ、11月には最高難易度コンテンツ「絶」シリーズを含むパッチ7.1が配信された。
今回海外メディアPC Gamerのインタビューにて、リードバトルコンテンツデザイナーを務め、「ミスターオズマ」の愛称で親しまれている中川誠貴氏が、本作のバトルコンテンツにおける設計思想を伝えている。まず同氏は、すべてのプレイヤーにとって丁度いい(just right)難易度をデザインすることはまず不可能だと考えているという。そのため、各コンテンツは特定のターゲット層を想定して設計する必要があり、同時にターゲット層以外のプレイヤーにも楽しみを提供できるようにする方針もあるそうだ。
たとえば中川氏は、8人パーティーが3部隊、総勢24人が集まって戦うアライアンスレイドについて言及。同氏によればアライアンスレイドは、「極」コンテンツや「零式」レイドといった高難易度コンテンツには挑まないプレイヤーを主な対象にしているそうだ。アライアンスレイドではいわゆる“初見殺し”が少ない傾向もあるほか、人数の多さからカバーもしやすく、また上級者の動きを見て学びやすいコンテンツといえる。
一方で中川氏によると、パッチ7.1でリリースされた「エコーズ オブ ヴァナ・ディール」シリーズをはじめとした通常のアライアンスレイドは、普段から極や零式に慣れているプレイヤーにとっては退屈な体験になるかもしれないとも考えられているという。そのため主要なターゲット層に向けて難易度を調整しつつも、できる限りすべてのプレイヤーが楽しめるコンテンツ作りも心掛けているとのこと。アライアンスレイドに限らず、他のコンテンツでも同様の方針だそうだ。たとえば本作には高難易度のアライアンスレイドとして「滅アライアンスレイド」も用意されており、そうした方針の表れかもしれない。
なお中川氏によればプレイヤーからは24人用の「絶」レイドや、「絶」を超える高難易度コンテンツを求める声もあるという。しかしその傍らで、ダンジョンやアライアンスレイドをもっと簡単にしてほしいという意見も見られるそうだ。同氏は、多種多様な意見をそれぞれ尊重し、すべてのプレイヤーのフィードバックを受け止めるとしている。
ちなみに中川氏はPC Gamerのインタビュー記事について個人のXアカウントでも言及。物議を醸すトピックにも触れる内容になったと考えているものの、すべての質問に正直に答えたとのこと。今後も高難易度コンテンツからカジュアルコンテンツまで、あらゆるプレイヤーが楽しめるようなコンテンツ作りに取り組んでいくことを表明している。
長期間サービス展開されるゲームにおいては、プレイヤーベースの成熟によって新規プレイヤーが参入しづらいといった課題は生じやすい。特に新コンテンツについては熟練者向けのコンテンツ実装が重視される場合、新規プレイヤーやカジュアル層が楽しみづらい傾向もあるだろう。またMMORPGにおいてはプレイヤースキルとあわせてキャラクターの強化も重要であり、熟練者に追いつくのが難しいジャンルのひとつといえるかもしれない。
そうした背景もあってか、今回『FF14』のバトルコンテンツ開発を率いる中川氏が、すべてのプレイヤーに向けて丁度いい難易度のコンテンツを用意することは不可能だという持論を述べているのは興味深い。10年以上にわたりサービス展開が続けられている本作では、幅広いユーザーが楽しめる新規コンテンツを提供する理念はありつつ、コンテンツごとに違ったターゲット層をベースとして定める方針があるようだ。
このほか今回のPC Gamerのインタビューで中川氏は、パッチ7.0以降のバランス調整方針についても言及。パッチ7.0以前はゲーム内のフラストレーションを減らす方針が過剰になり、ゲームプレイの面白味を高めるためのハードルやフラストレーションが撤廃され、味気なくなるケースもあったという。
そのためパッチ7.0およびパッチ7.1では、よりゲームプレイの面白さを重視するように大きく方針転換されたとのこと。適度な緊張感を与えられるような面白いギミックをしっかりと評価して採用しつつ、達成感とストレスのバランスが考慮されていくという。現状ではユーザーから好意的なフィードバックが寄せられているそうで、今後のパッチでも転換後の方針が続けられることが示されている。これからどのような新コンテンツの実装、およびバランス調整がおこなわれていくのかも注目されるところだろう。
『ファイナルファンタジーXIV』は、PC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに配信中だ。
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