EAのボス、「今のところゲームの定価引き上げ予定はない」と明言。『バトルフィールド6』含め、少なくとも当面は値上げなし
EAのCEOを務めるAndrew Wilson氏は、第1四半期の決算発表の中で、ゲームの“定価引き上げ”については考えていないとした。

Electronic Arts(EA)は現地時間7月29日、第1四半期の決算を発表した。発表の中でEAのCEOを務めるAndrew Wilson氏は、定価が80ドル(約1万1800円)のゲームが現れていることに対してのEAの立場を訊かれ、「現段階での価格変更は予定していない」と発言。当面の間、80ドルへの“定価引き上げ”を否定したかたちだ。
Wilson氏によるとEAの2026年度第1四半期決算では、期待を上回る好調なスタートだったとのこと。またEAのCFOであるStuart Canfield氏いわく、第1四半期の業績については、『EA SPORTS』シリーズや『Apex Legends』といったライブサービスの復調や過去作の幅広さなどが寄与しているという。純収益としては16億7100万ドル(約2474億円)となり、前年同期の16億6000万ドル(約2459億円)をわずかに上回る結果となっている。
なお今後EAがリリース予定のタイトルとしては、『バトルフィールド6』や『skate.』が、今年リリースされるタイトルとして控えている。これらのタイトルについて大規模なコミュニティの構築や拡大に努めていくそうだ。

そして業績発表の後にはWilson氏らによる質疑応答に移った。質疑応答フェーズにおいて、アナリストは質問の一つとして、EAにおけるフルプライスゲームの価格設定についての回答を求めた。具体的には、任天堂が定価80ドルのタイトルをリリースしたことなどに言及。EAにおける『バトルフィールド6』などといった主力タイトルは、これまで通りの70ドルとするのか、80ドルに追従していくのかを尋ねている。
このことについて、Wilson氏は現段階では価格の変更を検討していないという。つまりアナリストが例示した『バトルフィールド6』のようなタイトルを80ドルで提供することは考えていないわけだろう。また同氏はEAがすでに幅広い価格体系でゲームを提供していることにも言及。たとえばEAは基本無料タイトルをリリースしているほか、買い切り作品でもデラックス版やプレミアム版というように、エディション違いも存在している。Wilson氏は、こうした価格帯の違いにより各プレイヤーに即した価値を提供することを目指しており、今後もこうした複数の価格体系を用意し、プレイヤーにアプローチすることを考えているとのこと。そして現時点では、そうした枠組みにおける価格の劇的な変更は予定されていないそうだ。
加えてCanfield氏は本会計年度での価格設定に関するアプローチは現状想定されていないと補足。少なくとも来年3月末までにEAからリリース予定のタイトルについては、価格の引き上げ予定はないようだ。

なおアナリストが言及した80ドルの任天堂タイトルは、海外向けに79.99ドル(国内ダウンロード版は税込8980円、パッケージ版税込9980円)でリリースされた『マリオカート ワールド』を指していると思われる。同作の価格設定についてはユーザー側の反発もみられたものの、米任天堂の社長Doug Bowser氏は、80ドルという値付けはあくまでゲームタイトル個別のさまざまな要素に基づいていると述べ、一律でフルプライス基準を引きあげるわけではないとしていた(関連記事)。たとえばその後発売された『ドンキーコング バナンザ』でも、当初から69.99ドルの価格設定がされていた。
このほかマイクロソフトはObsidian Entertainmentが開発する『アウター・ワールド2』について、当初定価を79.99ドルに設定していたものの、7月23日に69.99ドル(国内向けには9900円から8900円)に引き下げたことを発表。今年のホリデーシーズンに同社が展開するフルプライスタイトルについても、同様の価格設定となることが伝えられていた(関連記事)。かねてより業界では、開発費の高騰による定価引き上げの必要性が一部アナリストや関係者間で唱えられてきたものの、今回のEAの例も見るに、現状では業界一律での基準引き上げには至っていないかたちだ。とはいえいずれも少なくとも現時点での各社の方針であり、来年以降もフルプライスタイトルの価格設定は注目のトピックといえるだろう。