麻薬密売ゲーム『Drug Dealer Simulator』開発元、「パブリッシャーを訴える」と怒りの表明。“別の麻薬密売ゲームの大ヒット”を発端に、思わぬ泥沼争い

競合タイトルに対して著作権侵害の疑いを示唆したことをきっかけに、まったく別の思わぬ問題に発展しているようだ。

『Drug Dealer Simulator』シリーズの開発を手がけるByterunnersは9月10日、同シリーズのパブリッシングを担うMovie Gamesを相手取り訴訟を提起する意向を示した。過去にMovie Gamesが競合タイトルである麻薬密売ゲーム『Schedule I』に対して著作権侵害の疑いを示唆したことをきっかけに、まったく別の思わぬ問題に発展しているようだ。

『Drug Dealer Simulator』は麻薬密売シミュレーションゲームだ。薬物を製造するアジトを築きギャングとして成り上がるシリーズ作品で、第1作の『Drug Dealer Simulator』および、オープンワールドで協力プレイが可能な続編『Drug Dealer Simulator 2』がリリースされている。麻薬をテーマにしたNetflixのドラマシリーズ「ナルコス」とのコラボ作品『Drug Dealer Simulator x Narcos』も今年発売予定である。

『Drug Dealer Simulator』

『Schedule I』に向けられた疑い

発端となったのは、同シリーズの競合作品といえる麻薬密売ゲーム『Schedule I』の登場だ。同作は、ゲーム開発者Tyler氏によるオーストラリアの個人デベロッパーTVGSが開発を手がけている。今年3月25日に早期アクセスでリリースされた本作は、著名ストリーマーによる拡散の影響もあってか、配信直後から大きな反響を呼んだ。なお市場調査会社Alinea Analyticsの集計によると、2025年上半期に発売されたSteamの新作ゲームのうち、本作は売上本数および収益でともに2位をマークしているという(関連記事)。

そうして『Schedule I』が人気を博すなか、Movie Gamesは4月3日、知的財産および不正競争を専門とする法律顧問からの報告を受けて、『Schedule I』による知的財産権侵害の兆候を確認したとするプレスリリース(ポーランド語)を発表していた。この中では、TVGSが拠点とするオーストラリアの法律の専門家と連携していくことなども伝えられており、訴訟の可能性が示されていた(関連記事)。

『Schedule I』

『Schedule I』が個人開発タイトルということもあってか、一部ユーザーからは企業による個人開発者への攻撃だとして非難が集まることに。『Drug Dealer Simulator』および『Drug Dealer Simulator 2』のSteamユーザーレビューでは、無数の低評価レビューが投じられる、いわゆる“レビュー爆撃”が繰り広げられる事態となった。

ところが、Movie Gamesは4月9日の声明にて、TVGSを訴えるつもりはないとする姿勢を表明した。同社によれば、ポーランドの株式市場通信システムである「ESPI(Electronic Information Transfer System)」の存在のために透明化を図る必要があったとしている。もとより訴訟の意図はなかったが、同社が不利な立場にならないように、必要な調査をおこなわなければならなかったとのこと(関連記事)。

別の訴訟問題へと発展

その後事態は収まったかに見えたが、今度は『Drug Dealer Simulator』シリーズの開発元であるByterunnersがMovie Gamesに訴訟を提起する姿勢を見せている。というのもByterunnersはポーランドの大手経済紙Puls Biznesuにて、Movie Games側から未払いの報酬があると主張し、訴える構えであると説明。さらに9月9日、公式Xアカウントにて声明を発表し、Movie Gamesへの痛烈な批判をおこなっている。同スタジオはMovie Gamesの『Schedule I』への対応を引き合いに出し、(開発者に対して法的措置を示唆することには)強く反対していたとコメント。にもかかわらず、先述したとおりMovie Gamesはプレスリリースを公開し、結果的に『Drug Dealer Simulator』および『Drug Dealer Simulator 2』に不評が殺到することになったようだ。この出来事をきっかけとして、Movie Gamesへの信頼が損なわれたとしている。

またByterunnersは、このために収益が低下し、Movie Games側はコスト削減のために事前に合意していた条件を変更し、利益分配や報酬の支払いを渋っていると主張。具体的には、『Drug Dealer Simulator』コンソール版の利益の一部や、『Drug Dealer Simulator 2』に関する未払いの開発費について支払わない契約を押し付けてきたとして、Movie Gamesを提訴することを明かしていた。

ところがPuls Biznesuが伝えているRafał氏のそれぞれの主張についてはMovie GamesのバイスプレジデントであるAgnieszka Hałasińska氏が反論。たとえば『Drug Dealer Simulator』コンソール版については移植をByterunnersが手がけ、別途契約を結ぶ場合にのみ利益の一部を支払う取り決めであったが、別途契約は結ばれなかったとしている。また『Drug Dealer Simulator 2』に関する未払いの開発費についても、計画上6月のアップデートに含まれるはずであった「車両」システムなど、契約で取り決めた複数の要素が未実装であることから支払わなかったと説明。両者の主張が食い違っていることもうかがえる。

『Drug Dealer Simulator 2』

ちなみに先述のX投稿では、Movie Gamesが報復としてByterunnersの全メンバーを『Drug Dealer Simulator』の公式Discordサーバーから追放し、『Drug Dealer Simulator』の作品のあらゆる開発資産へのアクセスを禁じたと報告された。Byterunnersはこうした状況を看過できないとして、改めてMovie Gamesと法廷で戦う決意を示している。

人気作『Schedule I』を発端としつつも、まったく別の問題として生じたMovie GamesとByterunnersの軋轢。先述したとおりMovie Games側は上場企業として制度上『Schedule I』の著作権侵害の可能性に関する調査を表明していたと伝えているものの、結果としてパブリッシングを手がける『Drug Dealer Simulator』シリーズに不評が殺到し、開発元Byterunnersも不信感を募らせることになったようだ。訴訟に発展するかどうかも含めて、今後の行方に注目したい。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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