Bethesda傘下スタジオが手がけた『Dishonored 2』、『Skyrim』より開発費がかかり開発元がBethesdaに閉鎖されかねないピンチだった。でも“優等生”だったので無事だった
『Dishonored』シリーズを手がけたデベロッパーであるArkane Studiosは、『Dishonored 2』の開発費とセールスのために存続が危ぶまれる状況に陥っていたという。その窮地を切り抜けた顛末を、同スタジオの元スタッフが明かしている。
『Dishonored』シリーズは、Bethesda Softworks傘下のArkane Studiosが手がけた一人称視点のステルスアクションゲームだ。神秘主義と産業革命が混在する世界を舞台に、ステルスや各種武器を駆使して暗殺任務などをこなしていくゲームプレイとなっている。同シリーズ一作目『Dishonored』については2012年10月に発売され、本稿執筆時点でSteamユーザーレビューにて6万1000件以上を獲得。うち97%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得するなど、高評価・人気作品となった。
その続編である『Dishonored 2』については2016年11月に発売され、現時点のSteamユーザーレビューで3万9000件以上のうち89%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。しかし発売当時には、比較的セールスが不振となり、Bethesda側重役からの存続の意義をも問われる状況があったとのこと。同シリーズにQAスタッフやレベルデザイナーとして携わった元スタッフのJulien Eveillé氏が、当時の状況についてPC Gamerに向けて語っている。
Eveillé氏によれば、『Dishonored 2』はBethesdaの大作RPG『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)よりも多額の予算をかけて開発されていたという。しかしながら、『Dishonored 2』は期待に沿う売上ではなく、Bethesda側の重役から「Arkane Studiosを存続させておく理由があるか」と追求される一幕もあったという。
しかし、Eveillé氏によれば『Dishonored』での実績が、Arkane Studiosの危機を救ったという。というのも、Arkane Studiosは作品クオリティについて「お墨付き(seal-of-quality)」を得ており、そのおかげでスタジオ存続の危機から守られていたとのこと。
Eveillé氏いわく、『Dishonored』は当時Bethesda発のゲームのなかでも、おそらくもっとも洗練されている作品との位置づけだったそうだ。同氏は、そうした高クオリティの作品を生み出した実績が、親会社であるBethesda側の追求からArkane Studiosを守っていた側面があると考えているとのこと。いわば、“優等生”だから許されたかたちだろう。
またEveillé氏は、スタジオディレクターのDinga Bakaba氏もスタジオ存続に一役買ったと振り返っている。Bakaba氏は、同スタジオ創設者であるRaphael Colantionio氏がスタジオを去った後にも、上層部に対して自信をもった態度で臨んでいたとのこと。また、当時のスタジオスタッフは流行りを追うのではなく、スタジオならではの作品を送り出すことを重視しており、それが成功の一因にもなっていたという。
なお、Bethesda Softworksを擁するZeniMax Mediaは2021年にマイクロソフトにより買収。その後Arkane Studiosの米国拠点・Arkane Austinについては、2023年5月に送り出した『Redfall』が不振となり、昨年閉鎖された。
一方『Dishonored 2』などを手がけたフランス拠点であるArkane Lyonについては、現在マーベルのコミック「ブレイド」を題材としたアクションゲーム『Marvel’s Blade』を開発中だ。そして今回スタジオ在籍当時を振り返ったEveillé氏は、現在個人開発者として活躍中。昨年にはホラーゲーム『THRESHOLD』をPC(Steam)向けに配信している。