“わざと下手にゲーム宣伝”がX(Twitter)でにわかに流行る。アレに似てて、アレが出てくる
インディーゲームスタジオや開発者が、あえて「下手な説明」で自作タイトルを説明する流れが、SNS上でじわりと流行しているようだ。

X(旧Twitter)では、インディーゲームスタジオや開発者が、自身の手がけたゲームを宣伝する流れで賑わうこともしばしば見られる。しかし今回はあえて「下手な説明」をするという、不思議な紹介方法がほんのりと流行しているようだ。
今回の流れの発端となったのは、パブリッシャーのUNIKAT Labelによる5月27日のXポストだ。UNIKAT Labelは3月21日に発表した『High Above』について、「『ザ・シムズ』のようだけど、屋根の上にあって、チートコードも使える。鳥もネコも植物も出てくる」と説明している。とはいえ、添付された画像や動画を見るに、あまり『ザ・シムズ』らしくもなければ、鳥やネコ、植物が押し出されている様子は見えない。実際には『High Above』はどういったゲームなのだろうか。
Steamストアページなどで公式説明を見てみると、『High Above』は空の上にそびえたつ建築物を作り上げるシミュレーションゲームだ。プレイヤーは何もない空の上に、地中海風や和風などとスタイルを決めつつ、大小さまざまな建物を自由に建てることができる。ゲームプレイでは制限やノルマなどは存在せず、ゆっくりと建築にのめり込める点が特徴だ(関連記事)。先述の説明とはずいぶんイメージの異なるゲームといえる。ちなみに『ザ・シムズ』にもマイホームを自由に立てられる建築モードが存在するため、そうした点を『ザ・シムズ』のようだと表現したのだろう。
なおUNIKAT Labelは“下手な広報担当インターンのような(like a bad marketing intern)”ゲーム紹介と前置きして、上述のポストを投じていた。つまり、わざと不慣れなインターンスタッフが作ったような「的外れな要素ばかりピックアップして紹介する」という遊びのようだ。複数のインディーゲームスタジオや開発者がこの流れに追従して、作品を不思議な方法で紹介しはじめている。
たとえばポーランドに拠点を置くMythicOwlは、同スタジオが手がける『Truckful /トラックフル』を“下手な説明”で紹介している。いわく、「ええと、『Dredge』みたいな感じだけど、ピックアップトラックで荷物を運ぶんだ。あと怖いやつがたくさん出てくる森もある」とのこと。『Dredge』といえば、コズミックホラー要素のある漁業RPG。しかし添付された『Truckful /トラックフル』の動画を見ると、コズミックホラーや漁業とは似ても似つかない、牧歌的な風景をトラックで暴走する映像となっている。
“ちゃんとした公式説明”をもとに紹介すると、『Truckful /トラックフル』はトラックを運転して用事やクエストをこなす配達ゲームだ。PC(Steam)向けに開発中。プレイヤーはピックアップトラックを運転し、とある田舎の人々に物資を届ける。運ぶ荷物には、日用品を詰め込んだ段ボール箱から家具、巨大なピアノまでさまざまな種類・形状のものが存在し、それらをトラックの荷台に積み込むこととなる。
荷物の重さや形に対し、トラックの荷台の広さは有限。荷物を落とさないように置き方を工夫しなければならない。また、田舎町には数々の恐ろしい謎が隠されているといい、荷物運びの仕事の最中には、その秘密に迫ることになる(関連記事)。つまり『Dredge』とは関連性がなさそうに見えて、持ち運ぶ荷物などの配置管理や、一見平和そうな風景の裏に潜む謎などは、同作に通じるところといえる。
そのほか『ツーポイントミュージアム』を手がけるTwo Point Studiosもこの流れに便乗し、同作を宣伝。「心地が良いけどカオスな、博物館運営シムゲーム。子供の頃に遊んだ『タイクーン』系ゲームみたい!化石を見つけるだけじゃなく、お魚や植物も見つけられるし、チーズクリスプはみんな大好きでしょう?おっと、呪いの人形には気を付けて……」と紹介されている。上述した投稿に比べるとゲームジャンルは分かりやすいものの、博物館とは関係なさそうな語句も垣間見える。
『ツーポイントミュージアム』は、自分好みの博物館を作り運営する経営シミュレーションゲームだ。プレイヤーは駆け出し学芸員となり、ツーポイント州の各地域にある複数の博物館の経営を任される。展示物は探索チームを派遣することで収集する。100箇所以上の遠征地点から、化石や骨などを集めてくるのだ(関連記事)。
なかには人食い植物や原始時代のコンピューターといった、ユーモラスなアイテムも登場し、先述の“下手な説明”どおり魚を収集することも可能。なおチーズクリスプについては、本作に登場する「チーズ精製機」に関係している。本作では客に食べ物を提供できるのだが、チーズ精製機で作られた食べ物は通常よりも客の満腹度を満たしやすい、という特徴がある。支離滅裂に見えてそれぞれゲーム内に登場する要素を並べ立てていたわけだろう。
このように、各スタジオが独特の語彙を活かし、手がけているゲームを紹介しているかたちだ。なおそもそもなぜUNIKAT Labelが、わざと下手な説明でゲームを紹介しようとしたのかは不明。とはいえいずれも、公式動画や画像だけでは分からないような一風変わった側面が紹介されているともいえる。あくまで嘘ではなく変な紹介ということもあり、真面目な説明よりもかえって興味を引くのではないかといった狙いもあるのかもしれない。
また本稿で取り上げたほかにも、「Describe your game like a bad marketing intern」としてゲームを紹介する多種多様な投稿が集まっている。それぞれ不思議な一面が紹介されていたり、まったくゲーム内容がわからなかったりとさまざまだ。興味のある人は気になる作品がないかチェックしてみるのもいいだろう。