心地良さが売りの「Cozy系ゲーム」が近年Steamで急増中。そもそもCozyとは何なのか、実は結構売れ線Cozyゲーム

近年増えている「Cozy(心地よい)」ジャンルのゲームについて、定義や特徴について考える業界レポートが過去に公開されていたことが、注目を浴びている。

近年では、特に海外発のゲームにおいて「Cozy(心地よい)」を特徴やジャンルとして標榜する作品も増えている。そんなCozy系ゲームの定義や特徴について考える業界レポートが過去に公開されていたことが、注目を浴びているようだ。

レポートを作成していたのは、Project Horseshoe。ゲーム業界人たちが集ってファシリテーター付きで2日間にわたってさまざまな議題でブレインストーミングをおこない、その内容をレポートとしてまとめる活動を2016年から2019年にわたって続けていた団体だ。


Cozy系ゲームの定義とは

今回、Project Horseshoeが2017年に公開したレポート「Coziness in Games: An Exploration of Safety, Softness, and Satisfied Needs」について海外メディアThe Guardianが報道し、今になってその内容が注目を浴びている。本レポートは、その名のとおりゲームにおけるCoziness(心地よさ)を主題とするレポートだ。レポートのもとになったブレインストーミングには、パブリッシャーのKitfox Gamesの創設者兼クリエイティブディレクターのTanya X Short氏や、デベロッパーのArenaNetにてゲームデザイナーを務めていたAnthony Ordon氏など8名の業界人およびファシリテーター1名が参加。さまざまな観点からゲームにおける居心地の良さが分析されている。

まずレポートでは、ゲームにおけるCozinessが、プレイヤーに「安心感」「充足感」「やわらかな刺激」という3つの印象をいかに強く与えるかで決定されると定義されている。このうち安心感では、危険やリスクがなく、プレイヤーに行動を強制させる脅威がないことが重要。また充足感は、食事や住居といった基本的な欲求が満たされているかどうかであり、人間関係・美的体験・自己実現・帰属意識といったより高次の欲求を生じさせるという。つまりゲーム内で生活を脅かすような状況がないということかもしれない。そしてやわらかな刺激は、低ストレスで安全かつ充足された環境をプレイヤーにもたらし、あまり熱中せずとも集中してゲームをプレイし続けられる穏やかで心地よい刺激を指すそうだ。

Image Credit: 「Coziness in Games: An Exploration of Safety, Softness, and Satisfied Needs


そしてレポートにおいては、ゲームにおけるCozinessには、一般的なゲームジャンルでは満たせない需要があると説明。戦闘や競争などがゲームの本質としてデザインされやすいのに対し、Cozy系ゲームではプレイヤーをストレスの高い状況に置かないことで、感情を整え、内面的な成長に取り組む空間を形作るとされる。これによってプレイヤーの主導性を引き出し、内発的な動機付けを与えられるという。またストレスや落胆が生じにくいことから、プレイヤーの離脱のきっかけが少なく、欲求を満たした後でもプレイヤーはゲームを続ける傾向があるとのこと。当時の市場において競争相手が少ないジャンルであり、ブルーオーシャンを狙えるゲームを創出できるといった見解も示されていた。

このほかレポートでは、どのようなビジュアルやオーディオがゲームにCozinessをもたらすかといった内容も伝えられている。たとえばビジュアルであれば暖色系の光源を用いたり、オーディオであれば耳障りではない柔らかな音を使うといった具合だ。『あつまれ どうぶつの森』など、さまざまな作品の要素も具体例として挙げられており、ゲームにおけるCozinessあるいはCozyジャンルについて、その特徴を言語化するような内容となっていた。


近年のCozy系ゲーム

なお先述のとおりレポートは2017年に公開されたものであるが、昨今では“ブルーオーシャンを狙える”とされた当時と比べて「Cozy」をジャンルとして掲げるゲームも増えている。SteamDBを見るに、Steam上で2017年にリリースされた中でCozyをジャンルに含むゲームはわずか5本であったが、年々その数は増加を見せ、2022年には85本、2023年には146本、2024年には374本となっている。Steam上でリリースされるゲームの本数自体が増加していることを踏まえても、Cozy系ゲームは有意な増加を見せているといえる。

*Steam全体でリリースされた作品数の推移

ちなみにSteamではより広義のジャンルに用いられる傾向のあるタグとして「Relaxing(リラックス)」が存在。こちらも近年作品数が増加を見せていることがわかる。

またそうしたなかでは、Cozy・Relaxジャンル自体の裾野も広がっている。たとえばSteamでは2024年4月に発売された『Rusty’s Retirement』を皮切りにデスクトップ画面の一部を利用する放置型ゲームが多く展開され、人気を博してきた。牧場や店の運営といったCozyジャンルのゲームプレイが取り入れられる作品も多く、Cozyジャンルの人気を足場にしつつ新たなジャンルに発展したといえるだろう。

他方、先述したレポートでは、危険・恐怖・脅威といった要素はプレイヤーが感じていた居心地の良さを台無しにするといった見解が説かれていた。この点を逆手に取って持ち味にするかのような作品もみられ、コズミックホラー要素のある釣りゲーム『DREDGE』は発売後半年で売上100万本を超える大ヒットをおさめている。このほかダークな要素のあるスローライフゲーム『Neverway』の開発が進められているなど、引き続きCozyジャンルの特徴と相反する要素をあわせもつゲームもある。あえて王道のCozyジャンルから外れる作品も創出されているわけだ。

スローライフ系のジャンル自体は『牧場物語』シリーズや『どうぶつの森』シリーズなど、古くから存在してきた。一方で『Stardew Valley』などフォロワー的インディー作品も展開されるなかで、先述したレポートのように「Cozy」としてジャンル自体の分類・研究する動きもみられ、発展を遂げてきた点は興味深いところ。特にSteamでは勢いのあるジャンルであり、今年もどのようなCozy系ゲームがリリースされるのかは注目されるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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