大ヒットRPG『Expedition 33』が「インディーゲーム枠」なのはおかしいと議論勃発。開発者いわく“AA級ゲーム”なのに

『Clair Obscur: Expedition 33』がThe Game Awards 2025のインディー系部門にもノミネートされたことが、一部で議論を呼んでいる。

本日11月18日、「The Game Awards 2025」のノミネート作品が発表された。今年を代表するさまざまな作品の中でも『Clair Obscur: Expedition 33』はひと際大きな存在感を放っており、本アワード史上最多となる12部門に選出。このうちの“ある部門”に本作がノミネートされていることについて、一部ユーザー間で議論が生じている。

『Clair Obscur: Expedition 33』は、今年4月24日に発売されたターン制RPGだ。パリィなどのアクション制が取り入れられた戦闘システムのほか、フランス風の要素を取り入れた世界観・アートワークやUnreal Engine 5による美麗なグラフィックなどから高い評価を獲得。500万本を売り上げる大ヒットを記録しており、約30名の新興スタジオSandfall Interactiveがコアチームとなって開発されていることでも話題となった。

今回はそんな本作が「The Game Awards 2025」のGame of the Year部門にノミネートされることが発表。さらにBest Game Direction、Best Narrativeといった各種部門にノミネートされているほか、出演者であるBen Starr氏・Charlie Cox氏・Jennifer English氏が3人そろってBest Performance部門に選出。合計12部門にノミネートされており、これはThe Game Awards史上最多のノミネート数だという(関連記事)。

ところが本作が「Best Debut Indie Game」および「Best Independent Game」部門にノミネートされていることは、一部ユーザー間で議論を呼んでいるようだ。両部門は、その名のとおり今年の新作インディーゲームに贈呈される賞である。『Clair Obscur: Expedition 33』の開発元Sandfall Interactiveは先述したとおりコアチームは約30名と小規模だ。ただしパブリッシャーをKepler Interactiveが務め、外部のスタジオの開発協力を受けていたことも公言されており、一部ユーザー間では本作を「インディーゲーム」に分類することが適切かどうかを巡る議論も生じているようだ。

ちなみにSandfall Interactiveは過去にスタジオについて「インディー精神をもつ小さなチーム」と表現していたことはあるものの、CEO兼本作のクリエイティブディレクターであるGuillaume Broche氏は、発売後の弊誌のインタビューで『Clair Obscur: Expedition 33』のような規模のゲームを「AAクラス」と伝えていた(該当インタビュー記事)。つまり開発元としては、本作の規模についていわゆるAA級として位置づけているわけだろう。なお同氏によると開発は基本的にSandfall Interactiveが中核になっており、先述した外部スタジオは、既存の要素のブラッシュアップやローカライズを中心に担当していたそうだ(弊誌インタビュー記事)。

いずれにせよ「Best Debut Indie Game」および「Best Independent Game」部門には、あくまでThe Game Awards側の判断で選出されたものとみられる。そしてThe Game Awardsのインディー系部門の選出基準については、過去にもたびたび議論が生じてきた経緯がある。たとえば2023年には、当時ネクソン社内のサブブランドであったMINTROCKET(現在は完全子会社として独立)が手がけた『デイヴ・ザ・ダイバー』がノミネート。同作もまたインディーゲームとして選出されたことが当時物議を醸していたが、販売元・開発元は同作をインディーゲームと公言はしておらず、またプロデューサー/ディレクターを務めたファン・ジェホ氏も後に同作について“インディーゲームではない”といった見解を明かしていた(関連記事)。

そのため過去のThe Game Awardsのインディー系部門では、コミュニティだけでなく開発者の作品規模の想定とも食い違うケースがあったといえる。選定基準が明確にされていないことも相まってか、議論に繋がってきたわけだ。

とはいえ近年では本作の他にもたとえば中世街づくりシム『Manor Lords』のように、個人あるいはごく小規模なチームで独立して開発されていた作品にパブリッシャーがつき、外部チームと連携しながら完成に向かうゲームも増えている。そうしたケースでも開発・宣伝に費やされる費用はパブリッシャーやタイトルによってまちまちとみられ、「インディーゲーム」の区分はますます難しくなっているといえる。

先述したファン氏も、AAAゲームとインディーゲームの間に位置するような規模のゲームの多さを指摘し、新たな呼称の必要性を唱えていた。また実際に、昨今では中程度の開発規模の作品などを対象とする「AA級ゲーム」といった表現も広まりを見せている。『Clair Obscur: Expedition 33』についても、開発者自らが述べるようにAA級ゲームとして扱われることが“イメージ通り”といえるかもしれない。いずれにせよ、ゲームが多様化を見せる中でThe Game Awardsの部門分けや判断基準には引き続き変革が求められていることもうかがえるだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

記事本文: 3444