大ヒット作『Clair Obscur: Expedition 33』開発元、“差別的スタジオ”呼ばわりされ怒りの反論。また「ゲームをヘイト行動に利用しないで」と呼びかけ
『Clair Obscur: Expedition 33』の開発元Sandfall Interactiveは6月6日、同スタジオの“価値観”を巡る議論があったと言及。作品を「ヘイトの助長に利用しないでほしい」というメッセージを伝えている。

『Clair Obscur: Expedition 33』の開発元Sandfall Interactiveは6月6日、同スタジオの“価値観”を巡る議論があったと言及。同スタジオでは多様性を尊重しており、作品を「ヘイトの助長に利用しないでほしい」というメッセージを伝えている。
本作は、アクション要素を取り入れたターン制バトルを特徴とするRPGだ。舞台となるのは、ペイントレスと呼ばれる存在が人々を脅かす世界。ペイントレスは年に1度目を覚まし呪いの数字をモノリスに刻み、描かれた年齢の人々は煙となって消えてしまう。ペイントレスの描く呪いの数字は年々ひとつずつ小さくなるため、人類は滅びを待つ状況にあった。「33」の数字が描かれる年、主人公たち第33遠征隊は死のサイクルを止めるため、ペイントレスを倒す旅に向かう。

『Clair Obscur: Expedition 33』は4月24日に発売されるとさっそく人気を博し、4月27日には早くも売上100万本を突破(関連記事)。その後、発売から33日間で330万本の売上を突破したことが伝えられており、大ヒット作となっている。レビュー集積サイトMetacriticでもメタスコア100点中93点、ユーザースコア10点中9.7点を記録するなど、非常に高い評価を得ている。
本作の開発元Sandfall Interactiveは、元UbisoftのGuillaume Broche氏によって2020年に設立されたスタジオだ。30人ほどの規模であり、同スタジオをコアチームとしつつ、サポートスタジオや音楽家など専門家の協力も受けながら開発が進められたという。
そんなSandfall Interactiveの公式Xアカウントは今回、同スタジオの価値観についてSNS上で議論が発生していると言及。ただ『Clair Obscur: Expedition 33』は、多様な文化的背景・視点をもつチームやパートナーによって開発されたと明確にした。そして同スタジオは、本作を「ヘイトを助長するための武器にしないでほしい(Please don’t weaponise it to spread hate.)」と訴えている。
Sandfall Interactiveがこうした声明を投じた背景には、同スタジオに向けて先日投じられたあるXユーザーの投稿があるとみられる。同ユーザーは、Sandfall Interactiveについて“履歴書を見る前から有色人種やフランス人以外のスタッフの採用を拒否している”との持論を展開。作品の評価は別として、スタジオの問題は告発すべきだとフランス語で主張している。
そうして同ユーザーは根拠としてか、Discord上の発言をスクリーンショットしたとみられる画像を投稿。画像における発言者は、過去にフランス人ではない有色人種の友人と就職活動でSandfall Interactiveを訪れたとして、「採用もしていないし新人は取らない」と告げられ、履歴書も受け取らずに門前払いされたと伝えている。しかし発言者は、その後ほどなくして知り合いの白人が同スタジオに採用されたことを知ったのだという。さらに発言者は噂に基づいて、同スタジオのレベルデザイナーやリード開発者陣に多様性を軽視する思想があるといったほのめかしをしている。
もっとも、スクリーンショットでは発言者のIDさえ伏せられており、信ぴょう性に欠ける主張だ。またSandfall Interactiveには、主要スタッフとしてアジア系のJennifer Svedberg-Yen(嚴詠如)氏が在籍している。同氏は『Clair Obscur: Expedition 33』の開発初期に声優として採用されたそうだが、最終的に本作のリードライターを担当。またローカライズ管理にも携わっていたという(関連記事)。出自や性別に関係なく才能に応じてスタッフが柔軟に働いているとみられ、人種に基づいて採用を決めているわけではないのだろう。ちなみに先述した“Sandfall Interactiveでは有色人種は採用されない”とするXポストにも、Jennifer氏の存在を示しつつ、ポストの主張に反論するコミュニティノートが追加されている。
いずれにせよ、そうした議論はSandfall Interactiveの目に入ったようだ。そして先述したXユーザーの主張が事実無根であると、はっきりと表明されたかたち。また同スタジオはゲームを「ヘイトを助長するための武器にしないでほしい」と訴えかけている。どのような立場であれ、作品を“他者を攻撃する手段”として扱ってほしくはないと示している。
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。PC/Xbox Game Pass向けにも提供されている。