大ヒット中『Clair Obscur: Expedition 33』の生みの親、「仕事のマンネリ化」が開発のきっかけだった。大手を辞め、地道な仲間探しから始めた旅路
大ヒットを記録している『Clair Obscur: Expedition 33』の開発元を立ち上げたのは、元UbisoftのGuillaume Broche氏。今回同氏は海外メディアに向けて、スタジオ設立の経緯を明かしている。

パブリッシャーのKepler Interactiveは4月24日、『Clair Obscur: Expedition 33』を発売。またたく間に売上が100万本を突破するなど、大きな話題作となっている(関連記事)。そんな本作の開発元Sandfall Interactiveのメンバーに、海外メディアBBCがインタビューを実施。同スタジオの設立の経緯などが明かされている。
本作は、アクション要素を取り入れたターン制RPGだ。本作の世界では、ペイントレスと呼ばれる存在が人々を脅かしていた。ペイントレスは年に1度目を覚まし呪いの数字をモノリスに刻み、描かれた年齢の人々は煙となって消えてしまう。ペイントレスの描く呪いの数字は年々ひとつずつ小さくなるため、人類は滅びを待つ状況にあった。「33」の数字が描かれる年、主人公たち第33遠征隊は死のサイクルを止めるため、ペイントレスを倒す旅に向かう。
本作を手がけるのはSandfall Interactive。Guillaume Broche氏によって2020年に設立されたスタジオだ。同氏は元Ubisoftで、『ゴーストリコン ブレイクポイント』と『ディビジョン2』のアソシエイトプロデューサーを担当。その後『Might & Magic』IPのブランド開発マネージャー兼ナラティブリードを務めていた。
今回そんなGuillaume氏を含む開発チームに向けて、BBCによるインタビューが実施され、スタジオ設立の背景が語られている。まず同氏は本作を開発しようと思い立った当初について説明。コロナ禍の最中であった当時、同氏は「仕事にマンネリを感じ、何か違うことをしたい(Bored in their job and wanting to do something different)」という想いを抱いていたそうだ。そうして同氏は、仕事とは別に独自に手がけるプロジェクトとして、子ども時代に夢中になった『ファイナルファンタジー』シリーズにインスパイアされたRPGを開発することを思いついたという。
そしてGuillaume氏は、Redditやオンラインフォーラム上で次々と募集をかけたりメッセージを送ったりして、仲間を集め始めたそうだ。たとえばRedditの募集では、リードライター兼ローカライズプロデューサーを務めるJennifer Svedberg-Yen氏がプロジェクトに参加。ただ同氏は当初、“声優”として本作に携わっていたという。同氏は、Guillaume氏がRedditに投稿した本作のデモ版の声優募集を見かけ、未経験ながらも興味を惹かれて応募。初期バージョンでは主要キャラの声優を担当していたそうだが、結果的にリードライターなどを担うこととなった。

このほかLorien Testard氏もゲーム音楽の作曲は未経験であったものの、Guillaume氏に見いだされて本作の開発に参加。決め手は音楽共有サイトSoundCloudに投稿された楽曲だったようだ。本作では未経験者も含めた一風変わった人材登用がおこなわれたようだが、高い品質を見るに功を奏した様子。Jennifer氏は魅力的な人材を見つけ出すことに長けたGuillaume氏の手腕を称賛している。
とはいえGuillaume氏としては、コロナ禍で当時多くの人々が創作の場を求めていたうえ、大きな幸運に恵まれたと説明。というのも同氏は仲間を集める際に、15人ほど候補を決めてダメ元で声をかけることが多かったそうだが、いつも1人目で快諾してもらえたとのこと。ただ候補には、プロジェクトの方向性と合ってそうな人が選ばれていた様子。特にLorien氏は触れてきた作品や好きなゲームがまったく同じで、とんとん拍子で話が進んだという。Guillaume氏は謙遜しているものの、同氏の人材登用の手腕が、高い評価を受ける『Clair Obscur: Expedition 33』の世界観や音楽などに繋がっているのだろう。
このほかインタビューでは、改めてSandfall Interactive の規模が30人ほどであり、同スタジオがコアチームとなったことも明かされた。サポートスタジオや音楽家など専門家の協力もあったものの、チーム内で協力してさまざまな役割を分担し制作されたという。なお本作では高品質のグラフィックや凝ったシステムなどが構築されており、小規模チームながらゲーム制作ツールの進化によってより効率的に作業できたことも要因となったそうだ。

Sandfall Interactiveにとって初開発作品ながらも、リリース後に一躍話題となっている『Clair Obscur: Expedition 33』。元Ubisoftのベテラン開発者が、作品の方向性に合うスタッフを地道に探して作り上げたチームの手腕が発揮されていたようだ。ちなみに先述のとおりGuillaume氏はJRPGの大ファンだそうで、ファンゆえに「日本人ではない自分たちがJRPGをそのまま作っても意味がない」という想いもあったという(弊誌インタビュー記事)。さまざまなゲームから良いとこどりされたエッセンスはあるものの、独自の新作を生み出したい想いがプロジェクトの原動力となったことも、人気の所以かもしれない。
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。PC/Xbox Game Pass向けに提供されている。