『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を遊ぶと「幸福感アップ」する可能性示す研究結果。あわせて“ジブリ映画”も見るともっと幸せに

オープンワールドゲームが人生の幸福度に及ぼす影響について研究されている。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)をプレイすることにより、人生の幸福感が高まる可能性を示す研究結果が発表された。さらに、スタジオジブリ映画などの鑑賞によって得られるノスタルジーには、そうした幸福感に与える影響を増強させる効果があることも示されている。海外メディアGameSpotが報じている。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnnisa Arigayota氏らは8月1日、ゲームに関する学際的ジャーナル「JMIR Serious Games」にて論文「Effects of The Legend of Zelda: Breath of the Wild and Studio Ghibli Films on Young People’s Sense of Exploration, Calm, Mastery and Skill, Purpose and Meaning, and Overall Happiness in Life: Exploratory Randomized Controlled Study(『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』やスタジオジブリ映画が若者の探究心、落ち着き、熟達と技能、目的と意味、そして人生の全体的な幸福感に与える影響:探索的ランダム化対照研究)」を発表した。この研究では、ストレスや不安などに苛まれることが増えている現代の若者が芸術作品やエンターテインメントに没頭することは、単なる娯楽以上の意味をもつのかを明らかにすべく、それらが人生の幸福度に与える影響を調査している。

研究方法としては、オープンワールドゲームをプレイするかどうか、そしてノスタルジーを感じているかどうかという2つの条件を組み合わせた対照実験を実施。オープンワールドゲームについては『ブレス オブ ザ ワイルド』を30分間プレイさせ、ノスタルジーについては「となりのトトロ」または「魔女の宅急便」の7分間のクリップを鑑賞させている。なお本実験には、各被験者が4つのグループのいずれかにランダムに割り当てられる「被験者間計画」が採用されている。被験者は530人の大学院生で、うち518人から得られた有効な回答が分析に用いられた。

被験者は1~9までの9段階で、人生の全体的な幸福感、探究心、落ち着き、熟達と技能、人生の目的と意味、そしてノスタルジーを感じているかを回答するよう指示された。その結果、オープンワールドゲームのプレイは探求心、落ち着き、熟達と技能、目的と意味という4つの感覚を促進し、それらが媒介変数となるかたちで、人生の全体的な幸福感に対して有意なプラスの影響がある可能性が示された。さらにそうした影響が、スタジオジブリ映画の視聴によるノスタルジーによって増強されたという傾向も示されている。

ちなみに、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者を中心としたチームでは、過去にも過去にも『ブレス オブ ザ ワイルド』を題材とした研究を発表していた(関連記事)。オープンワールドゲームの例として同作も挙げられ、人生の幸福度の向上に寄与する傾向があることが明らかにされていた。

そうした先行研究もあってか、今回は『ブレス オブ ザ ワイルド』が抜擢。研究チームによると『ブレス オブ ザ ワイルド』においては、たとえば穏やかなBGMを聴きながら広大な風景を自由に歩きまわったり、パズルを解いて「コログの実」を発見したり、またはライネルに倒されて戦略を練り直したりといった作中の体験がプレイヤーの探求心や熟達感を強化すると研究チームは説明している。そして幅広い年代にノスタルジーを喚起することが期待できると判断されて、ジブリ映画との相乗的な効果が調査されたかたちだ。

研究チームによれば、今回得られた知見は、オープンワールドゲームのプレイやジブリ映画の鑑賞が単なる「気晴らし(distraction)」ではなく、「能動的な現実逃避(active escapism)」として見なされる可能性を示しているとのこと。とはいえいずれも短時間のプレイ・鑑賞に基づく結果であり、オープンワールドゲームやノスタルジーが実際の人生の幸福感、実際の探究心、落ち着き、技能、人生の目的に与える長期的効果については、さらなる研究の余地があるそうだ。また研究の対象も大学院生に限られており、ノスタルジーを検証するために用いられたのも「となりのトトロ」と「魔女の宅急便」のみ。幅広い参加者を対象に、性別、年齢、文化的背景、ライフスタイルといった要因を考慮しつつ、さまざまなジブリ作品で一般化可能性を高めることなども今後望まれる研究として示されている。

先月には、ゲームのプレイ時間よりもゲームプレイの質が幸福度などに大きな影響を与えることを示す研究も発表されており(関連記事)、娯楽を超えた存在としてのゲームの価値も近年では注目されている状況だ。ゲームや映像作品がメンタルにもたらす有用性について、今後どのような研究がおこなわれていくのかも注目されるところだろう。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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