「『サイレントヒル2』リメイクの成功で“劣等感”を払しょくできた」と開発元が喜ぶ。一発逆転の大躍進
Bloober Teamは『サイレントヒル2』リメイク版の大ヒットを受け、以前根付いていたというコンプレックスから解放されつつあるようだ。

デベロッパーのBloober Teamは2025年内に、新作サバイバルホラー『Cronos: The New Dawn(クロノス:新たなる夜明け)』の発売を予定している。Bloober Teamは『Layers of Fear』シリーズや『The Medium』など、ホラーゲームの名手として知られるゲームスタジオだ。かつては製作したゲームが酷評を受けたこともある同スタジオだが、昨年の『SILENT HILL 2(サイレントヒル2)』リメイク版の大ヒットを受け、常に根付いていたという“負け犬”のような感覚から解放されつつあるようだ。
Bloober Teamは、ポーランドに拠点を置くスタジオだ。『Layers of Fear』シリーズや『The Medium』など、近年ではさまざまなホラーゲームを手がけてきたことで知られる。直近ではコナミにより2024年10月にリリースされた『SILENT HILL 2』リメイク版の開発を担当。高い評価を獲得し、全世界累計出荷本数が200万本を突破したことも報告されている(関連記事)。
現在同スタジオは、オリジナルの新作サバイバルホラー『Cronos: The New Dawn(クロノス:新たなる夜明け)』を2025年内の発売に向けて開発中。また、初代『SILENT HILL』のリメイクを手がけることも発表している(関連記事)。パブリッシャーとしても複数のホラー作品を手がけており、『SILENT HILL 2』のヒットを受け、ホラーに特化するというスタジオ方針をそのままに勢いに乗っているようだ。

今回『Cronos: The New Dawn』のゲームディレクターであるJacek Zięba氏がPC Gamerのインタビューに答えたところによると、Bloober Teamには『SILENT HILL 2』の発売以前、“負け犬のような感覚が常にあった(feeling like underdogs all the time)”そうだ。しかし同作の発売後、ようやくそうした気分から解放されつつあるという。
『SILENT HILL 2』のリメイクを制作していた当時、Bloober Teamは世間からの厳しい目に晒されていた。世界的に有名な『SILENT HILL』シリーズ、その中でも最高傑作と評されることもある『2』のリメイクであり、高いハードルがあったことがうかがえる。また同スタジオがあまり経験のない三人称視点のサバイバルホラーを手がけることへの懸念のほか、一部トレイラーやキャラクターデザインから感じられる原作との違いなどにより、当時仕上がりを不安視する声が多くあった(関連記事1、関連記事2)。「“原作破壊”になるだろう(They will destroy that.)」といった厳しいコメントも見られたようだ。
Bloober Teamといえば、2016年にリリースされた『Layers of Fear』が高い人気を博し、以降さまざまなホラーゲームを打ち出してきた。『The Medium』といった一定の評価を得た作品もある傍らで、『Layers of Fear 2』や『Layers of Fear』のリメイク版など、評価の芳しくない作品も存在。特に『Layers of Fear』のリメイク版では一部の要素が大幅に変更され、オリジナル版のファンを中心に不評も寄せられていた。そんな同スタジオが続けて名作『SILENT HILL 2』のリメイクを手がけることも相まって、懸念が集まっていたとみられる。

そんな中、スタジオ全体が信念を貫き、全身全霊で開発に打ち込むのは非常に困難だったという。しかしそうした逆境を乗り越え、『SILENT HILL 2』は前述のとおり高評価を獲得し大ヒットを記録。期待していなかった人々を見返すことができた点は、大きな自信になったようだ。
また、Zięba氏によれば、『SILENT HILL 2』の成功後のBloober Teamは以前とは対極の位置(different position)にいると感じているという。依然として成功へのプレッシャーはあるが、懐疑的な見方は少なく、同スタジオがどのようなものを作るのか注目が集まっている状況のようだ。同氏はBloober Teamが「期待する人々の波に乗っている(we’re riding the wave of people being intrigued)」と表現し、可能な限り最高のものを作ると意気込んでいる。

そして同スタジオの新作となる『Cronos: The New Dawn』は、レトロフューチャーな世界観、タイムトラベルなど、『SILENT HILL 2』とはまた違ったタイプのホラーとなっている(関連記事)。これに関してZięba氏は「『SILENT HILL 2』と『Cronos』は“異なるトッピングの2枚のピザ”のようなもの」だと述べ、違う方向性ではありつつもどちらも完璧なものを目指していると、『Cronos: The New Dawn』の仕上がりに自信をのぞかせた。
ちなみに、Bloober TeamのCEOであり『SILENT HILL 2』のプロデューサーを務めたPiotr Babieno氏は、オリジナルの『SILENT HILL 2』に「人生を変えられた」ほどのファンで、数々のホラーを手がけてきた同スタジオの集大成として本作の開発を進めてきたと語っていた(関連記事)。発売前のファンの不安についても言及しつつ、言葉ではなく実際のプレイを通して開発元の意欲を感じてほしいと述べていた。そんな同氏の狙いどおり、作品の出来栄えで評価を勝ち取る結果となったわけだ。
そんな同スタジオが、ふたたびコナミとタッグで手がける初代『SILENT HILL』のリメイクにも注目が集まるところ。とはいえまずは自信や経験を蓄えた同スタジオが、数年ぶりのオリジナル作品である『Cronos: The New Dawn』でも高評価を獲得できるか、期待して見守りたい。
『Cronos: The New Dawn(クロノス:新たなる夜明け)』は、PC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに2025年秋発売予定。
【UPDATE 2025/7/29 20:05】
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