『黒神話:悟空』開発者、「Xbox Series Sのメモリが10GBしかない」のでXbox移植が難航中と明かす。『バルダーズ・ゲート3』開発元も悩んだ壁

『黒神話:悟空』のディレクターがXbox Series X|S版の開発において大きな課題があることをこぼし、注目を集めている。「Xbox Series Sのメモリ容量」が、最適化におけるネックとなっているようだ。

黒神話:悟空』のディレクターを務めるFeng Ji氏がXbox Series X|S版の開発において大きな課題があることをこぼし、注目を集めている。同氏によると「Xbox Series Sのメモリが10GBしかない」ことが、最適化におけるネックとなっているようだ。

本作は、「西遊記」を題材とするアクションアドベンチャーゲームだ。中国に拠点を置くGame Scienceが同スタジオ初のシングルプレイ向け大型ゲームとして手がけ、PC/PS5向けに昨年2024年8月に発売された。本作にてプレイヤーは孫悟空を思わせるキャラクター「天命人」を操り、危険と不思議が溢れる冒険を繰り広げる。本作は発売後3日間で売上が1000万本を突破するなど爆発的な人気を記録。ユーザー投票式のゲームアワードGolden Joystick AwardsではUltimate Game of the Yearを、Steamアワード2024ではゲームオブザイヤー賞の受賞を果たした(関連記事1関連記事2)。

そんな本作はXbox Series X|S向けにも発売が予定されている。同時発売が叶わなかった背景として昨年6月時点では、Xbox Series X|S向けの最適化において、求める品質に達するためにやるべき課題が数多く残されているためであると説明されていた。その後続報はなく、Xbox Series X|S版の発売時期は現時点で未定だ。

そして今回、本作のGame ScienceのCEO兼本作のディレクターを務めるFeng Ji(冯骥)氏が、Xbox Series X|Sに向けた最適化の難しさをこぼしている。同氏は中国のSNS、WeiboにてSteamアワード2024でのゲームオブザイヤー賞など3部門の受賞についてコメント。先述のとおりSteamアワードはユーザー投票式のアワードだ。同氏は本作がSteamにて高い人気を博していたことからか大きな驚きはないと呟きつつも、「ユーザーの熱意おそるべし」と綴り、受賞を祝福している。

なお『黒神話:悟空』は、「PlayStation Partner Awards 2024 Japan Asia」においても、全世界の売上上位3タイトルに贈られるグランドアワードのほか、ユーザー投票に基づくユーザーズチョイスアワードを受賞していた。このことからか、Feng氏は足りないのはXboxでの受賞だけとコメント。Xbox Series X|S版の発売が間に合わず、アワードを得られなかったことについての無念さもあるのだろう。


ただFeng氏によると、Xbox Series X|S版の発売が遅れている背景には、メモリにまつわる大きな課題があるようだ。同氏は「(Xbox Series Sの)メモリが10GBであること」がネックとなって、最適化が難航していることを示唆している。

メモリとは、パソコンやゲーム機において実行中ソフトのデータを一時的に保存しておく場所。人間でいう短期記憶のような役割を担っており、ソフトの動作に必要なデータを素早く取り出して処理するためのパーツとなる。

そしてXbox Series SはXbox Series Xの廉価版モデルであり、GPU性能やストレージ容量などがXbox Series Xよりも控えめ。メモリについてはXbox Series Xが16GBのところXbox Series Sでは10GBとなっている。

一方本作PC版は、16GBのメモリが最低システム要件として案内されている。またPS5に搭載されているメモリ容量は16GB。本作はキャラがリッチなグラフィックで描写されるだけでなく、ステージ内にさまざまなオブジェクトが密度高く配置されていることなども特徴。そうした点もあり、開発元が想定する動作においては、少なくとも16GBのメモリが必要となるのだろう。


Feng氏いわく、10GBメモリへの対応は「長年の最適化経験がなければ無理」とのこと。Game Scienceにとっては本作が初のコンソール向け大型タイトルであり、Xbox Series S向けの最適化のノウハウがなかったことも、Xbox Series X|S版の発売が遅れている背景としてあるようだ。

なおXbox Series Sについては2020年の発表当時から、複数のゲーム開発者がメモリ容量などから最適化が難しくなるのではないかといった懸念を示していた(Wccftech)。その後も開発者がしばしば最適化の困難さに苦言を呈する例はみられた。

近年では大型タイトルのグラフィックがより高精細になっており、Xbox Series S向けの最適化がさらに難しくなっている側面はあるのだろう。2023年には『バルダーズ・ゲート3』のXbox Series X|S向け移植が難航。同作を手がけるLarian Studiosとマイクロソフトが協議を経て、Xbox Series S版での画面分割での協力プレイの撤廃を落としどころとして移植が実現された(Forbes)。

現時点ではXbox Series Xのみに向けて発売されたゲームはなく、Xbox Series XとXbox Series S両方への対応はXboxへの展開における条件となっているようだ。『バルダーズ・ゲート3』のように一部機能を撤廃することでXbox Series Sへの最適化が果たされる例はあり、今後各社がどのような工夫で“メモリ10GBの壁”を乗り越えるかは注目されるところかもしれない。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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