「『バトルフィールド3』は当初“MMO風ゲーム”として開発されていた」との開発者証言。DICEの一大プロジェクトだったけど、お蔵入り
『バトルフィールド3(Battlefield 3)』は当初、“MMO風のゲーム”として開発されていたという。当時の開発者が海外メディアのインタビュー動画にて明かしている。

『バトルフィールド3(Battlefield 3)』は当初、“MMO風のゲーム”として開発されていたという。当時の開発者が海外メディアNoclipのインタビュー動画にて明かしている(GamesRadar+)。
『バトルフィールド3』はElectronic Arts傘下のDICEが手がけ、2011年に発売されたFPSだ。当時から見た2014年の世界を舞台とする現代戦が描かれ、シングルプレイのキャンペーンモードのほか、協力プレイモード、そしてマルチプレイ対戦モードが収録されていた。なかでもPC版のマルチプレイ対戦モードでは、2006年発売の『バトルフィールド2142』ぶりに最大64人対戦ルールが復活。現代戦をテーマにシリーズの持ち味といえる大規模戦が可能な点などから、根強い人気を誇っていた作品だ。
そんな『バトルフィールド3』に携わった開発者に、ゲーム業界のドキュメンタリー動画を制作している人気YouTubeチャンネルNoclipがインタビューを実施した。その開発者とは、同作におけるシングルプレイモードのリードデザイナーを務めたDavid Goldfarb氏だ。当時のDICEでの開発状況についての裏話が明かされている。
まずDavid氏がDICEに入社したのは2007年8月のこと。当時同氏は『バトルフィールド バッドカンパニー2』の開発にプロジェクト始動から携わる予定であったが、前作にあたる『バトルフィールド バッドカンパニー』(以下、バッドカンパニー)の開発が延長されることに。そうして同氏は『バッドカンパニー』の拡張コンテンツの制作に携わることになったという。
そうしたなかで2007年11月には、Activisionが手がけたFPS『Call of Duty 4: Modern Warfare』が発売。大ヒットを見せた作品であり、そのクオリティや作風には当時DICEのスタッフ間に衝撃が広がったという。『バッドカンパニー』と作風や開発規模に違いはあれど競合タイトルであり、クオリティアップのためにさらに同作の開発期間を数か月間延長することも決定されたそうだ。

その後『バッドカンパニー2』についても、気合を入れて制作が開始。『バッドカンパニー』でやり残した課題をすべて解消しつつ、やりたかったことをすべて盛り込むような作品が目標になったそうだ。“『CoD』風”を目指すと明言されていたわけではないものの、第1作よりも派手で映画的にするといった方針もあったとのこと。
そしてDavid氏らのチームが『バッドカンパニー2』の開発を進める傍らで、DICEでは巨大な別のプロジェクトが進行。これが“当初の『バトルフィールド3』”であったという。同氏は、当時のそのプロジェクトについて最終的な『バトルフィールド3』とはまったく違っており、MMOに近い作品だったと述べている。「Venice」というコードネームで、何年もかけて取り組まれていた主力プロジェクトだったとのこと。大規模な戦場を体験できるようなMMO風の作品になる予定だったそうだ。
しかしDavid氏によれば「Venice」はゲームデザインの土台が固まらないまま、最終的に開発中止。その後『バッドカンパニー2』の開発を終えたDavid氏らのチームの多くが、「Venice」にかわる新たな『バトルフィールド3』の開発に配属されたという。“『CoD』に匹敵する作品”を目指し、3つのチームが分担してプロジェクトが進められたそうだ。先述したようにDavid氏はこのうちシングルプレイキャンペーンを担当するチームを率いることになった。

ちなみにDavid氏によると、開発中止となった「Venice」からリサイクルされて『バトルフィールド3』に用いられたアセット(3Dモデルなど)もいくつかあったという。このうちのひとつが、キャンペーンモードのミッション「COMRADES」におけるパリの街であった。ただし本作のメイン主人公は米軍でありパリの街でミッションをおこなうのは不自然。誰をミッションの主役にするか検討したところ、ロシアの特殊部隊スペツナズによる潜入任務といった設定が採用されたそうだ。キャラがロシア語訛りの英語を話すのではなく、セリフはすべてロシア語にするといった同氏のこだわりも反映されているという。
『バトルフィールド3』といえば発売初週で500万本を売り上げる大ヒット作であったが、当初“MMO風ゲーム”として数年間にわたって取り組まれていたというのは興味深い。その後も『バトルフィールド』は対戦FPSとしてシリーズが展開されており、かつて構想されていた大規模戦場MMOといったアイデアは依然としてお蔵入りされたままのようだ。
なおシリーズ最新作『バトルフィールド6』が先日正式発表され、7月25日0時にトレイラーが公開予定。人気を博した『バトルフィールド3』および『バトルフィールド4』への回帰を目指す現代戦FPSとなるそうで、注目が集まる(関連記事)。