『バルダーズ・ゲート3』大型アプデでより“かわいそう”になったあるNPCに、悲しみと同情の声が寄せられる。希望は念入りに潰す


デベロッパーのLarian Studiosは9月5日、『バルダーズ・ゲート3(Baldur’s Gate 3)』のSteam版向けに無料大型アップデートとなるパッチ#7を配信。膨大な量のパッチノートのとある一文が、とてもつらい、かわいそうであるとしてユーザーから多くの反響が寄せられているようだ。なお本稿には、本作における特定のルートにおける序盤のネタバレが含まれているため留意されたい。

本作は、RPG『Baldur’s Gate』シリーズのナンバリング最新作だ。本作の舞台となるのはファンタジー世界「フォーゴトン・レルム」。プレイヤーはこの地を、仲間と共に自由度高く冒険することになる。ファンタジー・テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の第5版ルールをベースとしており、TRPGのメカニクスをゲームに落とし込んだいわゆるCRPGとして展開されるゲームプレイが特徴だ。

本作には9月5日に、Larian StudiosよりPC版向けにパッチ#7がリリースされた。同パッチでは膨大な量の修正・調整が加えられている。そんなパッチノートで言及されたとある箇所について、悲しみの声を上げるユーザーが多く見られる。その箇所とはパッチノートに記載のある「一夜かぎりの出来事(It’s a One-Night Kinda Thing)」だ。

パッチノートでは以下のような文となっている:
以前(コミュニティアップデート#28)、ダークアージとしてのプレイにおいては、ある吟遊詩人がキャンプで操作可能なキャラクターとして “一時的”なパーティ加入ができるようになる、と明記したことは覚えている。ただどうやら、ユーザーの中に私たちが書いたことを正しく理解していない人もいるようだ。新たな仲間はいない、あるのは死だけだ。

このパッチノートの一文を紹介する投稿には1万5000ものupvoteが付いている。「こうなっていることはわかっていたが、それでも辛い…(I knew it was gonna be this way, but it still hurts…)」といったタイトルの投稿に、多くのプレイヤーが共感を寄せているかたち。パッチノートの記載だけではわかりくいものの、この変更点は本作に登場する吟遊詩人NPC「アルフィラ」とダークアージという出自にまつわる専用イベントについて言及されたものだ。

もともと本作ではキャラクタークリエイト時に、オリジンキャラクターと呼ばれる独自の出自を持つキャラクターを作成可能となっている。その中でも際だって特殊なのがダークアージというオリジンだ。このオリジンはのちに判明する出自のせいで、自身の殺人衝動を抑えられないといった設定となっている。プレイヤーはストーリーにおける選択で、自身の暗い衝動に身をゆだねるか、抗うかを選ぶことができる。ダークアージのプレイでは選択肢に専用の残虐な選択肢が追加されるなど、通常のプレイとは一味違ったストーリーが展開される。


そんなダークアージでしか見られない専用イベントも多く存在する。パッチノートに記載のある箇所もこの専用イベントのうちのひとつだ。これは作中に登場するNPCである吟遊詩人のアルフィラが夜に主人公のキャンプに訪れ、仲間に加わりたいと声をかけてくるイベントとなっている。特に疑いもなく、ここで仲間になるものと思ったプレイヤーも多くいただろう。

しかしそのままプレイヤーが就寝すると、次に目が覚めた時には、足元に惨殺されたアルフィラの死体が転がっている。犯人を捜すも、自身の血に濡れた手や周りの状況から、意識のないうちに殺人衝動を抑えられず殺害してしまったことを理解する。パッチノートの一文の通り、アルフィラの仲間加入は「一夜かぎりの出来事」となるわけだ。

このイベントは就寝時の意識のない状態で起こるため、選択肢などでプレイヤーが介入する余地はなく、発生した時点で必ず殺されてしまう。なお事前にアルフィラを非殺傷手段で無力化しておくことで、アルフィラの殺害を回避することは可能(代わりに別の吟遊詩人が殺害される)。しかしその場合でもアルフィラが仲間になることはない。そして事前の予兆や導線などはなく、情報を知らなければ殺害を回避することはほぼ不可能となっており、印象に残るプレイヤーも多いイベントとなっている。


一連のイベントにおいて、アルフィラはパッチ#7以前ではあくまでNPC扱いであり操作などはできなかった。しかし今回のパッチで、この吟遊詩人のアルフィラが実際に仲間になるようになった。これは他の仲間になるキャラクターと同様の扱いとなるようで、レベルアップをしたり、インベントリを開いたりなどの操作をすることが可能。ステータスとしては、ティーフリングの女性バードとして加入するようだ。

そのため、この変更によって一時的とはいえ、本当に仲間になったNPCを自身の手で直接殺めてしまうようになったといえる。言い換えれば、アルフィラをより“かわいそう”にする変更点となっているかたちだ。

また、アルフィラはダークアージでのプレイを選択しなくても本編に登場するNPC。作中でも比較的手の込んだ描写がされており、その見た目や明るい言動からキャラクター人気も高く、イベントによっては歌を披露することもある。彼女の歌う「Weeping Dawn」は作中屈指の人気の高さを誇る楽曲だ。

そういった人気もあり、プレイヤーからはアルフィラを生存させて本当に仲間にしたい、といった希望する声も多かったのだろう。パッチ#7の情報を事前に伝えるコミュニティアップデート#28では、アルフィラが“一時的に仲間になる”ことが伝えられていた。一時的と強調されているものの、この記載をもってアルフィラを仲間にできる生存ルートがパッチで追加されるのではないか、というわずかな希望を持ったプレイヤーの声がLarian Studiosに届いていたのかもしれない。

しかしあくまでそういったことはなく、今回の大型アップデートで念入りにその可能性が潰されたようだ。パッチノートの記載によれば「新たな仲間はいない、あるのは死だけだ(There are no new companions. There is only death.)」とのこと。

とはいえ、この変更には悲しみの声だけではなく、上述のポストにはダークアージという出自のドラマチックさがより増したと評価する声も上がっている。その出自を選んだがゆえの、プレイヤーが抗えない初めての殺人として重要なイベントであるとする意見だ。選択とその結果を重視した重厚なストーリーが展開される、本作らしいアップデートともいえるだろう。


人気を博した本作に膨大な量の変更点が加わった大型パッチということもあり、上述の投稿のように多くの反響が寄せられているかたちだ。本作は今後もアップデートを予定しているといのことで、クロスプレイやフォトモードの実装などが予告されている(関連記事)。いまだに精力的な開発が続けられているようで、本作のアップデートにおける続報にも改めて期待したいところだ。

『バルダーズ・ゲート3』パッチ#7はPC(Steam)向けに配信中。本作は国内PS5向けにも発売中だ。