『アサシン クリード シャドウズ』の“弥助問題”が一因となり、シリーズ新作が開発中止されたとの報道。「政治的すぎる」テーマを避けるためだとして

『アサシンクリード』シリーズの未発表の新作が昨年7月に中止されていたという証言が報じられている。

Ubisoftが展開する『アサシンクリード』シリーズについて、開発中のあるプロジェクトが昨年7月に中止されていたという同社の従業員および元従業員の証言が報じられている。海外メディアGame Fileが伝えている。

『アサシンクリード』シリーズはUbisoftが2007年から展開するステルスアクションゲームだ。さまざまな時代や地域におけるアサシン教団の暗躍が描かれる。今年3月に発売された最新作『アサシン クリード シャドウズ』では、安土桃山時代の日本を舞台に、伊賀出身の忍かつアサシンである奈緒江と、アフリカ出身の一騎当千の兵である弥助が“ダブル主人公”として戦った。

『アサシン クリード シャドウズ』

シリーズでは初となる日本を舞台とした『アサシン クリード シャドウズ』であったが、時代考証やゲーム内アセットの権利問題、そして「黒人の侍」という設定をもつ主人公の弥助の存在などを巡って発売前から大きな議論を呼んでいた(関連記事)。

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そんな本作における騒動が、未発表のシリーズ新作の開発中止の一因になっていたという。今回Game Fileは、Ubisoftの従業員および元従業員あわせて5名に対して匿名を条件にしたインタビューを実施。中止となったプロジェクトの詳細について明かされた。

従業員らによれば、舞台は1860年代から70年代にかけての南北戦争直後のアメリカで、主人公は西部で新たな人生を歩み始めた元奴隷の黒人男性だったという。アサシン教団に加入後、アメリカ南部でクー・クラックス・クラン(KKK)の台頭に対抗するという物語だったそうだ。KKKとは19世紀のアメリカにて、南北戦争の直後に結成された白人至上主義を掲げる団体。過激な活動をおこなっていたことで知られ、黒人などに対して暴力を振るい、殺害にも及んだとされる。

Ubisoftでは、そんな南北戦争直後のアメリカを舞台とする同プロジェクトが社会にプラスの影響を与える可能性があるとして熱心に取り組まれていたとされており、経営陣の承認も得ていたそうだ。しかし、米国のトランプ政権による施策や現在の情勢を鑑みた場合、あまりにも政治的なテーマであると判断され、昨年7月に開発中止が決定されたとのこと。

そしてこの際には、最新作『アサシン クリード シャドウズ』で黒人キャラクターに対する強い反発がインターネット上で生じたことも中止の原因になったという。本シリーズでは時代考証に基づく歴史的な描写も持ち味となってきた一方で、『アサシン クリード シャドウズ』においてその正確性を巡る議論が生じたことが、今後のシリーズ展開に慎重な姿勢をもたらした可能性もうかがえる。

なお今後の『アサシン クリード』シリーズは、Ubisoftがテンセントの出資を受けて新設した子会社が開発を担うことが明かされている(関連記事)。中止になったという南北戦争直後のアメリカを描く新作に代わり、新体制で開発される新作にてどのような題材が選ばれるかは注目されるだろう。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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