「発売直後にスタジオ閉鎖&配信停止」したMMO『Ashes of Creation』、元CEOが起こした裁判に進展。現取締役会の“乗っ取り行為”に待ったかかる

裁判所から被告に対して、資産の売却に対する「一時的拘束命令」が下ったことが明らかになった。

MMORPG『Ashes of Creation』の開発元であるIntrepid Studiosでは、CEOを含む幹部の退職やスタッフの大規模なレイオフ、そしてスタジオの閉鎖が報じられ、本作は配信廃止停止状態に。その後、元CEOはスタジオが所有する資産について、取締役会による不当な差し押さえがおこなわれていたと主張し提訴。今回、裁判所から被告に対して、資産の売却に対する「一時的拘束命令」が下ったことが明らかになった。

『Ashes of Creation』はMMORPGだ。対応プラットフォームはPC(Steam)。本作ではハイファンタジーの世界を舞台として、各々の暮らしや冒険をおこないつつ、文明を再建していく。プレイヤーの選択によって集落の発展が左右されていくといい、行動によってクエストやエリアの特色などが大きく変わっていく。さらに戦争や経済システムなど、さまざまな要素が楽しめるほか、いわゆる職業にあたる“アーキタイプ”の選択により、自由なプレイスタイルを選択可能だった。しかし、本作は一連の騒動の末に現在配信停止となっている。

2025年12月12日に早期アクセス配信開始された本作は「みんなが愛したMMORPGの再生」をテーマとした作品として進められたプロジェクト。2017年にはKickstarterキャンペーンにて、初期目標額75万ドル(約1億2000万円・以下現在のレート)を4倍以上上回る約327万ドル(約5億2000万円)の資金を集めた注目作でもある(関連記事)。

そんな本作の開発元Intrepid Studioにて、今年1月に開発チーム全員を対象にした大規模なレイオフが発生したことを、Intrepid Studiosで広報部門のディレクターを務めるMargaret Krohn氏が明かしていた。当時のCEOでスタジオ設立者であるSharif氏を含む、スタジオの上級管理職の多くが抗議として辞任をおこなったことで、取締役会による大規模な人員削減に繋がったそうだ(関連記事)。なおSharif氏によれば、同スタジオでは経営権が同氏の手を離れ、倫理的に容認できず、実行もできない行動を取締役会が指示していたという。

その後、本作は突如として配信を停止。2月10日にはカリフォルニア州にて、閉鎖や解雇等を事前に知らせるWARN(Worker Adjustment and Retraining Notification)が出されたことにより、Intrepid Studioが閉鎖されたことが正式に明らかとなった。そうしたなかで、Sharif氏によって提訴がおこなわれたとの報道がなされていた。この訴訟は、Sharif氏が原告となり、現会長のRob Dawson氏含むIntrepid Studio取締役会の4名および、Dawson氏が設立したTFE Games Holdings(以下、TFE)を相手取ったもの。

Sharif氏による主張を端的にまとめるならば「現取締役会による“スタジオ乗っ取り”行為を、元CEOであるSharif氏が訴えた」というかたちだ。アメリカ合衆国連邦地方裁判所カリフォルニア州南地区の裁判資料によれば、当時貸主として2021年頃よりIntrepid Studioに融資をおこなっていたDawson氏は、給与支払い期限の数日前に資金提供を打ち切ると脅迫するなどの強圧的な手段で、会社の株式をより多く取得し支配権を獲得したとされる。

また、2024年5月には自身の融資について、知的財産や営業秘密を含むIntrepid Studioのすべての資産および動産を担保の対象として設定していたという。また同年9月には側近のRyan Ogden氏をCFOに選任し、Dawson氏は取締役会会長に就任。また2025年8月には、自身と親しい人物らを取締役会に招き入れていた。つまり、Dawson氏が資金面での圧力を武器に、Intrepid Studioの舵取りを奪ったと主張されている。

そして2026年1月、被告らは自らの担保権を利用して意図的にデフォルト(債務不履行)を宣言させ、上位の担保権者に法的な通知をおこなわないまま不当な差し押さえ(フォアクロージャー)を実行し、Intrepid Studioの資産をDawson氏らが運営するTFEに移したとされている。また被告らは資金を回収するため、『Ashes of Creation』のソースコードや開発ツールなどを含むデータにアクセスしようと元従業員を勧誘。競合のゲーム開発会社にそれらの資産を売却しようと試みたという。

Sharif氏はこうした行為が、連邦営業秘密防衛法およびカリフォルニア州統一営業秘密法に基づいた「営業秘密の不正利用」に該当するとしたうえで、カリフォルニア州商法が定める不当な差し押さえにあたるとして提訴していた。Sharif氏側としては「会社を乗っ取られた上に、会社の財産が違法に奪われ“換金”されつつある」という主張となっている。

そして3月4日に進展があり、裁判所が被告側の「資産売却」を抑止する命令を下した。裁判所は「本案に関する重大な疑問(serious questions going to the merits)」があると評価したうえで、実際に資産の売却がおこなわれた場合、Intrepid Studioは回復不能な損害を受けるとした。そのため、同スタジオ資産の所有権を巡る争いが解決するまで第三者への売却を防ぐ目的で「一時的拘束命令(TRO)」を下した。今後はより長期的な効力のある「予備的差止命令」を出すべきかの審理を経て、本格的な審理に入っていくことになるようだ。Sharif氏の主張について吟味する時間を確保するための、被告側への「先手」とも取れる命令だ。

スタジオのレイオフおよび閉鎖が報じられて以降、『Ashes of Creation』のSteamユーザーレビューは、返金を希望するユーザーなどで溢れかえっている。過去30日間のレビューに基づく「最近のレビュー」では、約1100件中わずか3%が好評とする「圧倒的に不評」ステータスとなっている。2月に公開が予定されていたディレクターレターについても更新が途絶えており、配信停止された本作が今後存続するのかも含めて注目されるところ。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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