ベテラン戦略ゲーム開発者、「RTSはここ20年間ほぼ変化がない」として革新の必要性を唱える。王道もいいが、そろそろ変えるべき時期として

『Age of Empires』シリーズなどに携わった開発者のDave Pottinger氏が、「リアルタイムストラテジーゲームは新作でも昔とほぼ変わらない」といった見解を述べたことが注目を集めている。

ゲーム開発者のDave Pottinger氏が、「リアルタイムストラテジーゲームは新作でも昔とほぼ変わらない」といった見解を述べたことが注目を集めている。同氏が携わっている新作では、RTSとしての変革を目指しているという。海外メディアVideoGamerが伝えている。

Dave氏は、マイクロソフト傘下のEnsemble Studiosにて『Age of Empires』シリーズや『Halo Wars』などのリアルタイムストラテジーゲーム(RTS)を手がけていたベテラン開発者だ。Ensemble Studiosが2009年3月に閉鎖されてから同氏は複数のスタジオを渡り歩いた後、現在は新スタジオLast Keepを共同設立し、新たなRTS『Project Citadel』を手がけている。

今回そんなDave氏が海外メディアVideoGamerのポッドキャスト番組に出演。同氏やLast Keepの開発チームが考える「RTSというジャンルが抱える課題」について語っている。


古き良きRTSには変革も必要?

Dave氏によると、Last Keepでは週に一度チーム全員でゲームをプレイする機会を設けており、その一環として『Age of Mythology』のリメイク版となる『Age of Mythology: Retold』をプレイしたそうだ。同作オリジナル版はEnsemble Studios が手がけ2002年に発売されたゲームであり、当時Dave氏も携わっていた。リメイク版はマイクロソフト傘下のWorld’s Edgeなど複数のスタジオが共同で開発。グラフィックの刷新のほか随所に現代化がほどこされているものの、基本的なゲームシステムはオリジナル版と変わらない作品となっている。

そんなリメイク版で『Age of Mythology』を約20年ぶりにプレイして、Dave氏やLast Keepの開発チームは改めて20年間RTSというジャンルがあまり変わっていないことを思い知ったという。同氏は、Frost Giant Studiosが手がけ2024年7月に早期アクセス配信されたRTS『Stormgate』など、新作でも基本的には『Age of Mythology』などと同様の方式がとられているとの見解を述べている。『Age of Empires』シリーズや『StarCraft』シリーズといった往年の人気作を踏襲する、リソース収集・施設建築・ユニット生産といったゲームサイクルを採用するRTSについての言及だろう。

Dave氏はそうしたゲームシステムについて、古くからある王道的な仕組みであるとして、当時も今も良質なゲームプレイをもたらしてくれると述べている。ストラテジーゲームを愛する同氏としては、普遍的な人気を維持している点を嬉しく思うそうだ。しかし同氏は、RTSというジャンルが再び勢いづいている兆しもあるものの、ゲームデザインには革新が必要だといった持論を述べている。Last Keepの開発チームとしては、『Project Citadel』ではRTSとして何か新しいものを作りたいという想いがあるという。

『Project Citadel』


変えられない理由も

ちなみにDave氏は、かつて『Age of Empires III』にて陣形の違いに基づく戦闘システムが開発されていたことにも言及。同システムはE3 2005におけるデモのなかで披露されていたものの、新たなシステムが既存のファンを遠ざけかねない懸念から実装が断念されたとのこと。

Dave氏はそうした経験からか、人気IPの新作では“ファンが望むゲーム”に固執する必要性が生じ、既存要素の変革が難しくなる点に苦心していたようだ。それゆえ同氏は、Last Keepにとっては『Project Citadel』が初開発作品であり、まだファンもいないため、RTSとして革新をもたらすチャンスにできると考えているという。あえて過去数十年にわたって守られてきたゲームデザインに固執せず、革新的なRTSを目指して『Project Citadel』を開発しているそうだ。

そんな『Project Citadel』は、新世代のゲーマー向けのストラテジーゲームと標榜されている。ハイテンポなアクションバトルと、戦略性のある部隊マネジメント機能が兼ね備わっているとのこと。一度失敗しても別のアプローチで再挑戦しやすい、短時間のプレイに最適なゲームサイクルになるそうだ。アクション性の高さや短時間でチャレンジを重ねるシステムなど、従来のRTSとは違った仕組みを取り入れているわけだろう。

『Project Citadel』


昨今ではライブサービスゲームが台頭するなかで、ユーザーが(買い切り型)ゲームに割ける時間が少なくなっている可能性を懸念する業界人の声もある(GamesIndustry.biz)。ストラテジーゲームは1試合が長くなりがちであり、向かい風といえる状況かもしれない。そのためか、ゲームジャンルのうち特にストラテジーゲームに向けてのゲーマーの関心が薄まっている傾向があるといった市場調査結果なども見られる(関連記事)。

そうしたなかでは1試合の短さを特徴としてアピールするターン制ストラテジーゲーム『Nexus 5X』なども現れている。RTSにおいても、今回Dave氏がRTSの変革を掲げて『Project Citadel』を手がけている格好だ。コアなファンから根強い人気もあるストラテジーゲームながら、既存のファンだけではない客層拡大を狙うスタジオも徐々に現れているのだろう。時代にあわせた革新への挑戦がどのように実を結んでいくかも注目される。

『Project Citadel』はPC(Steam)向けに2025年に早期アクセス配信開始予定。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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