『Starfield』元開発者が「現代のゲーマーは大作ゲームに疲れてそう」との見解。大作ユーザーの75%が5~10時間遊んでやめちゃう

元Bethesda Game Studios(以下、Bethesda)のゲーム開発者、Will Shen氏がインタビューを受け、ゲームに求められるボリュームについての見解を語った。現代のゲーマーは長いゲームに疲れており、短編ゲームのトレンドが来ていると感じているという。海外メディアPC Gamerなどが報じている。

Will Shen氏は元Bethesda所属のゲーム開発者だ。『Skyrim』『Fallout 4』『Fallout 76』などの制作に携わり、『Starfield』の開発ではリードクエストデザイナーを務めた。現在はBethesdaを退社し、『サブノーティカ』などで知られるUnknown Worlds Entertainmentにてリードデザイナーを務めている。

そんなShen氏に対して、YouTubeチャンネルKiwi Talkzがインタビューを実施し、動画を公開した。1時間超の動画ではさまざまな話題が展開されるなか、インタビュアーのKiwi TalkzことReece Reilly氏は「近ごろゲーム開発者から最近のゲームは長すぎるとの批判をよく聞くが、あなたはどう思うか」とShen氏に質問。元BethesdaのShen氏は「長すぎるゲームを制作して申し訳なく思う」とジョークを交えつつ、ゲームのボリュームのトレンドについて語った。

Shen氏によると、以前のゲーム業界で膨大なプレイ時間を費やすことができる作品といえばMMOゲームが主流だった。しかし同氏が携わった『Skyrim』など、大量のコンテンツを有するソロプレイ向けのオープンワールドゲームがヒットしたことで市場の潮流が変化。シングルプレイ向けゲームにおいても「永遠に遊べる」ほどの規模をもつ大作が好まれるようになったという。そのため近年のゲームはさまざまな要素が盛り込まれた、長く遊べる作品として開発される傾向が強いそうだ。

『Skyrim』

しかしShen氏は、ゲーム業界のトレンドに変化が感じられると発言。「多くのゲーマーは一本のゲームに100時間以上費やすことに疲れており、しかもそうしたゲーマーは増加傾向にある」と見解を語った。根拠として同氏は、大作のクリア率が低迷していることをあげている。実績の獲得率を見るとわかるように、大作はクリアまでプレイしないユーザーが非常に多いとのこと。同氏によると一部の熱心なファンとライトな層で二極化しており、およそ75%のプレイヤーは5時間から10時間ほど遊ぶと、プレイを止めてしまうという。

そうした“大作疲れ”が見られる理由としてShen氏は、「大抵のゲーマーにはすでにお気に入りの作品があるから」としている。同氏によると、多くのプレイヤーは新作が出たからといって旧作を遊ぶのをやめるわけではなく、気に入っている作品は繰り返しプレイするという。現代のゲーマーはそうした過去作を遊ぶ合間に新作をプレイしているため、長い作品は好まなくなっていると考えているそうだ。さらにShen氏は小規模作品の成功例として、昨年発売された『Mouthwashing』に言及。短編作品の復権が起きているとした。

『Mouthwashing』

『Mouthwashing』はスウェーデンのデベロッパーWrong Organが開発したSFホラーゲームだ。Steamユーザーレビューでは本稿執筆時点で約2万1600件中96%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得し、昨年12月には売上げが30万本を突破したことが報告されている。小規模スタジオによる短編作品ながら、印象的なヒットを記録している人気作である。

Shen氏は最近『Mouthwashing』をプレイしたとして、その魅力について説明。ゲーム内容は素晴らしくキーアートも印象的だが、ヒットした要因については、同作が3時間ほどでクリアできる短編というのが大きいと感じたそうだ。同作はゲームクリア実績の解除率が78.8%と、かなり高いクリア率となっている。Shen氏は、もし『Mouthwashing』にサイドクエストなどさまざまな要素が詰め込まれ、より長い時間を要する作品だったとしたらクリア率はもっと低下し、これほどの人気にはならなかっただろうとコメント。メインストーリーに焦点をしぼり、誰でもほぼすべての要素を楽しめる小規模作品としたのが成功の理由だと語っている。

こうした『Mouthwashing』のヒットから、現在のゲーム市場のトレンドが短編にあるとShen氏は感じているようだ。今後の業界の展望として、『フォートナイト』のようにすでに人気を確立しているライブサービス型の作品はこれからもプレイヤーを集め続ける一方で、短くまとまった体験が楽しめる小規模ゲームの需要が高まっていくのでは、と語っている。とはいえShen氏は、ゲーム業界は変化し続けており、巨大なゲーム市場の全体像を一人の人間が語るのは不可能であるとも発言。同氏の見解は北米のAAAゲーム市場に限ったもので、トレンドも今後さらに変化しうるとした。

『フォートナイト』

Steamでは本稿執筆時点で約11万本のゲームが配信されており、さらにリリースされる作品数も年々増加。2024年にリリースされたタイトルは過去最高の1万8992本を記録している(SteamDB)。またSteamで公開されている統計データによると、2024年のSteamの平均的なプレイヤーが新作に費やした時間は、総プレイ時間の15%のみだという(関連記事)。すでに膨大な数の旧作が存在しており、さらに無数の新作もリリースされ続けるなかで、ユーザーも一本の新作に長い時間をかけない傾向ということなのかもしれない。

今回は大規模作品で知られるBethesdaの元開発者が海外メディアのインタビューに応え、ゲームが短いことがセールスポイントになる時代が来ていると自説を語った。Shen氏の見解通り短編作品がさらに存在感を高めていくのか、今後のゲーム業界のトレンドに注目したい。

Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

記事本文: 379