即販売中止されたクラファン約5億円MMORPG、「スタジオ創設者が会社資金を流用して豪遊していた」との疑惑浮上。本人は断固否定
MMORPG『Ashes of Creation』の開発元創設者が“会社の資金を使い込んでいた”との疑惑を示す動画が公開されるも、本人が真っ向から否定している。

クラウドファンディングサイトKickstarterにて約5億円の資金を集めリリースを迎えたものの、すぐさま配信停止された『Ashes of Creation』。同作の開発元Intrepid Studiosの創設者が“会社の資金を私的に使い込んでいたのではないか”との告発動画が波紋を広げたものの、創設者本人がメディアへの声明を通じて反論をおこなっている。
『Ashes of Creation』はSteamで配信されていたMMORPGだ。ハイファンタジーの世界を舞台として、各々の暮らしや冒険をおこないつつ、文明を再建。プレイヤーの選択によって集落の発展が左右されていき、行動によってクエストやエリアの特色などが大きく変わっていく仕組みになっていた。さらに戦争や経済システムなど、さまざまな要素が楽しめるほか、いわゆる職業にあたる“アーキタイプ”の選択により、自由なプレイスタイルを選択可能だった。
即配信停止の裏側
本作は「みんなが愛したMMORPGの再生」をテーマとして開発され、2017年にはKickstarterキャンペーンにて、初期目標額75万ドル(約1億2000万円・以下現在のレート)を4倍以上上回る約327万ドル(約5億2000万円)の資金を集めた(関連記事)。その後2025年12月12日に満を持して早期アクセス配信開始されたものの、2月に入ってから突如配信停止された。
配信停止について特に公式からの告知はなかったものの、この裏ではIntrepid Studiosの創設者であるSteven Sharif氏を含む多数の上級管理職の辞任、および開発チームのレイオフが関係しているものとみられる(関連記事)。Sharif氏によればIntrepid Studiosの経営権は同氏の手を離れ、取締役会ではSharif氏が「倫理的に」容認できないような行動を指示し始めていたと説明。抗議の意を込めて辞任することを決定したと伝えていた。
その後Intrepid Studios は閉鎖されたことが明らかに。一方でSharif氏は取締役会による“スタジオ乗っ取り”行為があったとし、最終的に会長となっていたRob Dawson氏含むIntrepid Studios取締役会の4名、およびDawson氏が設立したTFE Games Holdingsを相手取る訴訟を提起している(関連記事)。
独自調査に基づく“告発動画”
そうしたなかで今回、YouTuberのNefasQS氏が“Intrepid Studiosの10年以上にわたる総勘定元帳をまとめた”と主張するスプレッドシートを公開し、話題を呼んでいる。同氏は元従業員への取材や独自の情報源に基づいてスプレッドシートを作成したとしており、全体像を完全に示しているわけではなく、また無関係の個人のプライバシー保護の観点から名前を隠したり変えたりしている部分もあるとのこと。
動画においてNefasQS氏は元帳において不自然な支出が多数あるとしており、たとえば2022年7月には“プライベートシェフ”の派遣会社に2万1000ドル(約335万円)の支払いがあったものの、複数の元従業員からはプライベートシェフを職場で見たことは一度もなかったという証言も寄せられているとのこと。商業用の認可がない職場のキッチンでは調理ができないと説明され、Sharif氏の自宅でのみ料理をしていたとの証言もあるという。
また手作りダイスの販売店に1000ドル(約16万円)以上、カードショップに「マジック:ザ・ギャザリング」のカード代とみられる6000ドル(約96万円)以上が支払われていたそうだ。このほかアンティーク品の販売業者との取引記録もさまざま見られるといい、Sharif氏が骨董品のコレクターだという元従業員を含む複数の証言も寄せられているとのこと。
このほかオンラインゲームアカウントのリアルマネートレード(RMT)サイトや、金銭を支払ってレベル上げなどを代行させるいわゆるブースティングの依頼サイトへそれぞれ300ドル(約5万円)以上の支払いがあったという。いずれも先述したとおりNefasQS氏の独自調査に基づく点には留意したいが、同氏は“元帳”に基づいて、Sharif氏が会社の資金を私的な目的で使い込んでいた可能性を示しているかたちだ。
さらにNefasQS氏によると、Intrepid Studiosは複数の金融機関等からローンを借り受けていたという。同氏はそうしたローンや投資家からの出資がなければ何度も破産していたほどであったと主張。またSharif氏と、同氏の配偶者や母親、および“協力関係”にあったとみられる人物との取引を合計すると、約1200万ドル(約20億円)もの額がIntrepid Studiosから引き出されたものとして計上されていたとのこと。NefasQS氏がまとめた元帳において、その行方は完全には説明がつかないという。

Sharif氏の反論
独自調査に基づきSharif氏を“告発”するNefasQS氏の動画は、すぐさま海外メディア各誌に報じられることになった。ただSharif氏はKotakuに対して真っ向から反論する声明を寄せており、同氏は「NefasQS氏は自分に私怨を抱く人物たちから中傷的な虚偽情報を吹き込まれている」と主張。Kickstarterで募った資金も含め、会社資金を私的に流用したという動画の主張については「断じて事実ではない」と伝えている。また先述した訴訟と関連付けて「(NefasQS氏は)係争を世論に裁かせようとする試みに利用されている」とも発言。さらにSharif氏はNefasQS氏についても、そうした情報を検証もせずにクリック数や再生数を稼ぐために横流ししているとして批判した。
『Ashes of Creation』の配信終了、およびIntrepid Studiosの閉鎖後も、同スタジオを巡る騒動は収まる気配がない。なおIntrepid Studiosの資産については先述したDawson氏らがTFE Games Holdingsに移管し、競合のゲーム開発会社に『Ashes of Creation』のソースコードや開発ツールなどを含むデータを売却しようとしていたという。ただ同スタジオ資産の所有権を巡る争いが解決するまで第三者への売却を防ぐ目的で、裁判所からはDawson氏側に同スタジオ資産の売却についての「一時的拘束命令」が下されることに。その後Sharif氏側が裁判所に求めたより長期的な効力のある「予備的差止命令」は認められなかった一方で、TFE Games Holdingsに移管された資産はIntrepid Studiosに差し戻しになったという(MMORPG.com)。今回のように“法廷外での論争”も巻き起こる中で、今後訴訟がどのように展開されていくのかは注目される。
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