「ゲームクリア後の虚しい感覚」を測る指標の研究が報告される。RPGクリア後は特に虚しい
「ゲームを終えるとなぜか虚しくなる」といった現象について、大規模な研究がおこなわれた。この研究により、「P-GD」という指標が生み出され、定量的な研究がおこなえるようになったという。

ゲームを終えた直後、なぜか深い悲しみに襲われるといった感情に焦点を当てた研究が注目を集めている。この現象を「ゲーム終了後の抑うつ感(Post-game depression)」と名付け、大規模な調査を行った論文が国際学術誌「Current Psychology」に掲載。その内容をNews Medicalが報じている。
ポーランド・SWPS大学心理学研究所の心理学者Kamil Janowicz氏およびステファン・バトリー応用科学大学の心理学者Piotr Klimczyk氏は、ゲーム終了後にやってくる空虚感に着目した研究を実施。これまでゲームプレイ後に感じる「空虚な感覚」については多くのプレイヤーによって存在が言及され、調査もおこなわれてきたものの、定量的な研究を可能とする尺度が存在しなかったという。そのため、Janowicz氏たちは「ポストゲーム・デプレッション・スケール(P-GDS)」を開発。世界で初めて、ゲーム終了後のプレイヤーの憂鬱度を定量的に捉える指標を完成させたとしている。

研究チームはまず、さまざまなジャンルのゲームを遊ぶ18歳以上の被験者を集め、計373人のプレイヤーを対象に2つの研究を実施した。なお調査の参加者はRedditやDiscord、選定されたメーリングリストを通じて集められたそうだ。参加者の多くは毎日(28.1%)またはほぼ毎日(41.4%)、ゲームをプレイする習慣を持っているという。また参加者の92.4%がゲームに関する情報を取り扱うSNSやウェブサイト、ブログを閲覧ないしはフォローしていたとのこと。参加者の大多数はゲームプレイ経験だけではなく、ゲームに対する情報収集もおこなっていたようだ。
本研究では、研究者たちは「ゲーム終了後の抑うつ感」を生じさせる4つの要素を発見し、P-GDSを構成する指標としたという。まず1つ目は物語について繰り返し思いを巡らせる「ゲームに関わる反芻思考(Game-related Ruminations)」、そして「ゲーム終了時の心理的負荷(Challenging End of Experience)」、次に「再プレイの必要性の感覚(Necessity of Repeating the Game)」、そして他のメディア製品への興味を失う「メディアへの快楽消失(Media Anhedonia)」だ。
続く研究では、これら4つの“憂鬱状態を生み出す因子”の構造を確認するとともに、それぞれの影響の強さが測定された。その分析の結果、「ゲーム終了後の抑うつ感」は極めて複雑な現象であり、相互に絡み合ったさまざまな高負荷体験の集合体だと結論付けられている。なお「ゲームに関わる反芻思考」がもっとも影響力が強く、逆に「メディアへの快楽消失」が最も影響力の小さい要素だったそうだ。

そしてこの研究によると、RPGを遊ぶプレイヤーがもっとも「ゲーム終了後の抑うつ」に陥りやすいそうだ。この点について研究者は、RPGではプレイヤーが自身の決断を通じてキャラクターの成長に関わるため、キャラクターとの絆が強く結ばれるからだと考察している。さらにゲームの世界が魅力的であるほど、そしてキャラクターとの関係性が近くなるほど、ゲームが終わった後に現実世界へと戻るのは難しくなるだろうと指摘している。

ところでJanowicz氏たちは、今回の研究によって「ゲーム終了後の抑うつ感」の定量的な調査が可能になったことで、ゲームプレイ後の感情の動きの研究に役立てられるだけでなく、ゲームデザインやマーケティング部門といった、ゲーム制作への分野の応用も期待している。「ゲーム終了後の抑うつ感」を経験したユーザーの購買傾向などをP-GDSに基づいて調査すれば、より多角的なデータからプレイヤーの意思決定に迫ることができるという見解だ。とはいえ、本研究は特定文化圏のユーザーに限定したもので、参加者の性別も男性が71.4%と割合に偏りが見られる。そのため、性別による差や、他国での結果に差異があるかは、今後の調査の課題として示唆されている。
今回の研究はゲーマーなら経験したこともあると思われる「ゲームクリア後の抑うつ感」について、計373人もの参加者を対象に調査を行い、主観的な実感だけでなく、指標を用いて定量的に示している点が興味深い。特にキャラクターへの没入感が高いRPGでは、ゲーム終了後の虚脱感がより大きいという指摘は、実感を持って納得しやすいところだろう。ゲームクリアを躊躇してしまうような調査結果ではあるものの、プレイヤーの感情を揺さぶるゲームというメディアならではの特徴を物語っているかもしれない。
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