“2年前に埋もれたゲーム”でいろいろマーケティング実験した開発者、「月間3万本売れる大復活を遂げた」と報告。とにかく攻めるイロモノ戦略

インディーゲーム開発者のHamuno氏が、2024年に発売した『Hamster Hunter』を2026年になってヒットさせた事例を公開し注目を集めている。

インディーゲーム開発者のHamuno氏が、2024年に発売した『Hamster Hunter』を2026年になってヒットさせた事例を公開し注目を集めている。発売から2年が経過したタイトルながら、大量のショート動画を投稿するマーケティングにより、月間3万本を売り上げる規模に成長したという。

『Hamster Hunter』は、ハムスターに復讐をおこなうホラーハンティングゲームだ。この世界では30年前に研究所から半人半ハムスターの変異生物が逃げ出し、これまでに400人以上が犠牲になったという都市伝説のような噂があった。主人公が年に一度の家族会のために帰省したところ、家族がハムスター男の犠牲になったことを知る。プレイヤーは家族の復讐を誓い、さまざまな手段でハムスターを狩っていく。

ゲームプレイは一人称視点で進行し、フィールドには小さなハムスターが何匹も存在。プレイヤーはハムスターを銃殺し、焼いて食べればレベルアップ、ひき肉にすれば資金を獲得できる。ブラックマーケットでは新たな武器やトラップを購入でき、フィールドに設置することでハムスター捕獲効率を上げていく。しかし、日中には無害だったハムスターが夜になると凶暴し、トラップが破壊されてしまうために対策も必要となる。ハムスターに対するギロチンや四肢切断などゴア表現が満載ながら、簡素なモデリングによってマイルドな表現になっているのも特徴だ。

本作は2024年1月にSteamにてリリースされた。Steamユーザーレビューは本稿執筆時点で、1519件のうち94%が好評とする「非常に好評」ステータス。直近30日間の最近のレビューでは、822件のうち97%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得している。奇抜な設定ながらも、多彩なトラップや、組み合わせによって工場自動化できるような自由度の高さが好評を博している。

一方で本作は配信当初から人気作だったわけではない。Steam同時接続ユーザー数は、リリース月に25人を記録し、その後は長期にわたって1桁人数で推移していた。しかし、2025年12月から同時接続ユーザー数が突如として増加し、今年2月には477人を記録している(SteamDB)。この背景には、開発者自身が仕掛けたマーケティングが影響しているようだ。


動画マーケティングという実験

本作を手がけるHamuno氏は、10年の開発経験をもち、フルタイムで働く個人ゲーム開発者だ。Steamでは『Hamster Hunter』以降に2つの作品をリリースしている。そんな同氏は、動画マーケティングによってどれくらいの売上につながるのか詳しく知りたかったそうだ。本作は1か月で開発完了し、リリース前のマーケティングは2週間のみ。その後はアップデートやセールなどは実施されていたものの、大きなマーケティングをしていなかったため、本作にてマーケティング実験をおこなったという。古くてプレイヤーもほとんどいないゲームを対象にすれば、Steamによるおすすめ表示ではなくマーケティング効果のみで結果が出たことが明白になる点も狙いにあったそうだ。

そんなHamuno氏は今年1月にRedditにてマーケティング手法を公開し、AMA(Ask Me Anything・何でも訊いて)を開催。同氏によれば売上回復のきっかけとなったのは、ショート動画を中心とした動画マーケティング戦略だ。マーケティングの前後の売上は1日平均3ドル(約500円)から、AMA 開催時点で1日平均936ドル(約15万円)へと、実に300倍以上に拡大。マーケティング開始からAMA開催までに、ストアページへ4万以上のアクセスがあり、そのうち5000本以上が売上につながったという。

具体的なマーケティングとして、AMA開催の18日前から毎日3~4本の動画を投稿したそうだ。投稿先はYouTubeショート、TikTok、Instagramリールとのこと。同氏は過去2年間にも別のゲームのショート動画を数百本投稿しており、そのフィードバックからどんな動画が自分に合ってるのか学んでいったという。たとえば適切な声のトーンやテンポを学び、字幕は画面の70%の高さが見やすい、ゲーム内音声に対するBGMは-15dBといったことが、同氏にとっては効果的であったと回答している。また、宣伝を思わせるようなCTA(行動喚起)はおこなわず、事実にもとづいた“クレイジーな動画”にしていたという。

とはいえ同氏の作る動画は、100万回以上再生されるような「バイラル」になるものはほぼなく、1つにつき安定して3万~10万再生されるようなものだという。それでも毎日の投稿によって、YouTubeショートだけで48時間あたり平均24万回再生されているとのこと。ほとんどの人はリンクやプロフィールをクリックせずに、Steamでゲームを検索するため、動画の早い段階でゲーム名を登場させることが効果的としている。ちなみに同氏は編集プロセスを修得しているそうで、3~4本の動画を作るのにかかる時間は40分ほどとのこと。

なお同氏のTikTokチャンネルを見てみるとフォロワー数は約3万9000人。数十万いいね以上を獲得している動画も多く、中には100万いいね以上の動画も3本存在する。凶暴なハムスターを敵として好き放題できる設定により、グラフィック自体はシンプルながら過激な説明からバイラル化を見せた傾向もあるようだ。


マーケティングに合わせたアップデート

このほか、Hamuno氏はマーケティングに合わせてゲームのアップデートも実施。『Hamster Hunter』は2024年12月を最後にアップデートが止まっていたところ、2026年1月には復活を称するRevival Updateが配信されている。その後も、本稿執筆時点の3月まで数日おきに精力的なアップデートがおこなわれている。

同氏によれば、本作は1か月という短期間開発であったため、たくさんのシステムが粗末に組み立てられていたそうだ。そのためマーケティング開始直後に大量のネガティブフィードバックが届き、すぐに修正を決意したという。将来的に機能を追加できることに重点をおき、1日2~3時間の作業により5日間でRevival Updateを配信。その後も新たな見込み客に対して、「もうアップデートはない」と思わせないよう頻繁なアップデートを継続しているとのこと。毎日約3時間をゲーム開発と動画マーケティングに費やしているそうだ。

実際、動画マーケティングが始まった2025年12月のSteamユーザーレビューは、27件のうち16件が好評とする「賛否両論」ステータス。その後、今年1月の好評率は91%、2月と3月の好評率は97%になっており、アップデートの効果が発揮されている様子が見てとれる。とはいえレビューを見てみるとゲーム内容とはあまり関係のない、いわゆるネタ投稿のような簡素な内容も多い。先述のショート動画により一種のネットミーム的な盛り上がりを見せていることもうかがえる。


「埋もれたゲーム」から月間3万本のヒット作へ

ちなみに本作は過去に最安値となる86%オフのセールが実施されていたが、マーケティング開始後は最安値よりもはるかに割引率の低い33%オフや27%オフなど段階的に縮小されている(SteamDB)。先述した通り、本作は過去のセール中も含めて長期にわたって同時接続ユーザー数は1桁で推移していた。一度埋もれてしまったゲームにとっては、セールよりもショート動画でのマーケティングの方が売上につながるという見方もできるだろう。

動画マーケティングによってSteamへの流入が増加し、タイミングをあわせたアップデートにて好評を獲得している『Hamster Hunter』。Hamuno氏は本稿執筆時点も、毎日の動画投稿をおこなっており、2月だけで3万本以上を売り上げたという。上述したように過激な作風やネットミーム的な盛り上がりも背景にあるとみられるものの、いずれにせよ発売から2年経過した「埋もれたゲーム」が“息を吹き返した”点は興味深い。同様の戦略が効果的な作風は限定される可能性はあるが、SNSと組み合わせたマーケティング実験の事例として注目されるところかもしれない。

『Hamster Hunter』は、PC(Steam)にて配信中だ。

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Haruki Maeda
Haruki Maeda

3DアクションRPGと犬をこよなく愛するPCゲーマー。『フォールガイズ』のようなわちゃわちゃ系も大好きです。

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