“秘密を守るAI”との自由入力対話ゲーム『ハイマー2000』ほぼ100%の高評価炸裂。会話と探索で廃墟に眠る謎に迫る濃厚ストーリー

indienovaは11月13日、自由対話アドベンチャーゲーム『ハイマー2000(Hymer 2000)』をリリースした。さっそく高い評価を得ている。

パブリッシャーのindienovaは11月13日、doBellが手がけるアドベンチャーゲーム『ハイマー2000(Hymer 2000)』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch/PS5で、ゲーム内は日本語表示に対応している。本作はリリースされてからさっそく多くの好評を集めている。

『ハイマー2000』はAIとの会話を通じて謎を解いていくアドベンチャーゲームである。プレイヤーは回収員フランクとして、「希望の家」という施設から人工知能「ハイマー2000」の人格モジュールを回収する任務を受けることになる。希望の家はすでに荒廃した様子だが、ハイマー2000はエラーを起こしながらも稼働を続けている。対話、キーワード検索、探索を通じて、人工知能が守り続けてきた秘密に迫るのだ。

ゲームプレイは仮想のPCのような画面で進行していく。ほとんど何もないデスクトップにはテキストファイルが1つだけ置かれており、クリックすれば開くことができる。内容を確認したら新たな機能がアンロックされ、マップ上のプレイヤー自身を動かす「行動」、ハイマー2000との対話ができる「ハイマー」、過去のハイマーの会話ログを参照できる「検索」、過去の記憶を当事者視点で振り返る「肖像」といったものを使うことができるようになる。行動で新たな肖像を発見し、何か障害となるものがあればハイマーに相談、キーワードとなりそうなものを見つけたら検索をおこない、さらに行動……と、機能を組み合わせることで物語が展開していく。

本作をもっとも特徴づけているのは人工知能「ハイマー2000」との対話であろう。プレイヤーの言葉は限られた選択肢ではなく、自由に記述することができるのだ。試しに筆者がゲームとは逸脱した文脈の言葉を入力してみたところ、ハイマーはプレイヤーの立場と任務を思い出させるような言葉を返してきた。ごく自然なやり取りを通じてゲームが進行するわけだ。

なお、本稿執筆時点では日本語版について、一部の言葉で漢字表記とひらがな表記で結果が異なるという声も聞かれる。今後の改善が待たれるところだが、現時点のゲームプレイではこの点を気に留めておくとスムーズに進行できると思われる。

ちなみに本作のストーリーは、2017年にノーベル文学賞を受賞したことでも知られる日系イギリス人作家カズオ・イシグロ氏の「わたしを離さないで」をモデルにしているという。同作は国内で舞台化やテレビドラマ化もされている作品で、介護職のキャシーが自らの過去を回想し、外界から切り離された全寮制学校で監視・監督され続けてきた奇妙な少女時代や、その後の日々や出自について描かれる。開発者によれば、ハッピーエンドが保証されていない境遇にあっても、人物たちの行動には依然として意味や価値があることを描きたかったとのこと。『ハイマー2000』は同作をモデルにしつつ、アーネスト・ヘミングウェイの作品から得たインスピレーションや、自身の体験も織り交ぜた物語が展開されていく。

そんな本作はリリース直後から多くの好評を集めており、本稿執筆時点でSteamユーザーレビューは135件、そのうち98%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。本作はAIとの対話や探索を通じて任務をこなす中で、残された場所や物品から過去を垣間見てストーリーを楽しめる作品だ。寂寥感の漂うドット絵のグラフィックも見どころであり、複数の機能を組み合わせる謎解きのような飽きさせない工夫も凝らされている。レビューでは物語に惹き込まれたという声が多く聞かれ、「謎解きパズルゲームというよりはインタラクティブな小説を読んだかのよう」とストーリーが極めて高く評価されている。

本作を手がけたdoBellについては、ほとんど情報が公開されていない。パブリッシャーであるindienovaのWebサイト上には開発者と見られる熊泽鹏氏のインタビューなどが確認でき、同氏が中心となって設立されたスタジオであることがうかがえる。熊氏は過去に中国文学を学び、児童文学作品を雑誌に発表していた経歴を持つ。その後はゲームとは関係のない企業でエンジニアとして働くようになり、ゲーム開発はプライベートの時間におこなっているようだ。過去にSteamでは、記憶の断片を集めていく心理サスペンスアドベンチャー『SELF』をリリースしている。同作の評価は「やや好評」ステータスに留まっているものの、演出面やストーリーについては高く評価するレビューが多く見られる。本作で、物語性という熊氏の持ち味は前作以上に発揮されているようだ。

『ハイマー2000』はPC(Steam)/Nintendo Switch/PS4/PS5向けに配信中。現在Steamではリリース記念セールが開催されており、11月27日までの期間限定で定価の10%オフとなる税込522円で購入可能。その他、価格はプラットフォームごとに異なるため詳細は各ストアページを参照されたい。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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