『GTA』風名作ゲーム『スカーフェイス』が19年越しに復刻、するかと思いきや即消滅。謎だらけで困惑広がる
オープンワールドアクションアドベンチャーゲーム『Scarface: The World Is Yours』のSteam版・Epic Gamesストア版のストアページが突如公開。しかしすぐさま閉鎖される事態となった。

日本時間10月22日、2006年に発売されたゲーム『Scarface: The World Is Yours』のSteam版・Epic Gamesストア版のストアページが公開。しかしすぐさま両ストアページが閉鎖される事態となった。
『Scarface: The World Is Yours』は、映画「スカーフェイス」を題材とするオープンワールドアクションアドベンチャーゲームだ。開発はRadical Entertainmentが手がけ、当時のVivendi Gamesがパブリッシャーを務めていた。海外にてPS2/Xbox/PC向けに2006年に発売され、後にWii向けにも展開された。
本作の舞台となるのはマイアミ。映画の終盤をベースにしつつも異なる展開が描かれており、主人公トニー・モンタナは裏切りによる襲撃を命からがら逃げ延びる。3か月後にマイアミに戻ったトニーであったが、かつての彼の麻薬帝国は崩壊し、複数のカルテルによって分割。本作はそんなマイアミの各地域を掌握し、裏切者への復讐を繰り広げるゲームであった。ちなみにトニーについては、映画で主演を務めたアル・パチーノ氏がモデルになっている。

なお「スカーフェイス」といえば、Rockstar Gamesが手がける『グランド・セフト・オート:バイスシティ』にてさまざまなオマージュが取り入れられていたことで知られている。『Scarface: The World Is Yours』ではいわば同作から“逆輸入”するかたちで、オープンワールドゲームとして色濃い影響がうかがえる作品となっていた。売上は200万本以上を記録し、好評を獲得。ただ、その後Xbox 360版の発売も計画されていたものの中止となり、シリーズ展開には至らなかった。
今回はそんな『Scarface: The World Is Yours』のストアページが突如Steam/Epic Gamesストアにて開設。ただしストアページ上にはEC Digitalなる販売元が記載されていた。またストアページ開設と共にEpic Gamesストア版は“誤って”発売されることになったといい、Steam上ではブラッシュアップされた上で改めて正式にリリースされることが伝えられていた。
一方でほどなくして、本作のSteamストアページとEpic Gamesストアページは閲覧不可となった。直前にはSteamの本作のフォーラム上に、EC Digitalによる声明が投稿。これによると、公開されたストアページはライセンスおよび技術面での課題に対応する間の仮置き(placeholder)であったとのこと。しかしEpic Gamesストアにて誤ってゲーム自体がリリースされ、そのことで予期せぬ問題が発生し、複数の関係者との緊急協議がおこなわれていると報告された。そうした状況を踏まえてEC Digitalは、ストアページを非公開にする対応をとったとしている。
なお誤ってリリースされたEpic Gamesストア版のビルドには、非公式ModであるSilentPatchとFusion Fixが含まれていたとのこと。ただしSilentPatchの制作者であるSilent氏によれば、同Modは連絡なく利用されていたという。同氏はMod自体はライセンス上無断で使用されても問題ないとしつつも、そもそも本作のライセンス所有者にはふたたび本作をリリースする意向がなかったはずだとして疑義を呈していた。
このほかEC Digitalについては、香港に拠点を置くEC Digital Entertainmentを前身にしているとみられているが、同社は2019年に解散済みとの情報も見受けられる。関連性は不明ながら、実態が不明瞭な販売元が本作を扱っている点もユーザーの疑念に繋がっているようだ。
いずれにせよ、本作は映画をベースとするゲームであり、復刻にあたってはゲームの権利元と「スカーフェイス」のライセンス元の双方から許諾を得る必要があるだろう。ゲームについては当時のパブリッシャーであるVivendi Gamesは2008年にActivisionと合併し、Activision Blizzardになっている。そしてActivision Blizzardは現在マイクロソフト傘下になっており、復刻にあたっての交渉は大掛かりになると予想される。
なお先述したとおりストアページはライセンスの課題に対応するなかで“仮置き”として公開されたと説明されている。ライセンス面での合意形成がなかった、あるいは後回しにされていたこともうかがえ、合意前にストアページが開設されたこと自体にも問題はある。いずれにせよ、本作の復刻を待ち望んでいたファンも散見され、ぬか喜びさせられたといった落胆の声は広がっている。