ユーザー制作コースで賑わうレースゲーム『Trackmania』にて、クリア賞金約250万円の“鬼畜コース”がついに破られる。落ちたらやり直しの超高難易度コース

 

レースゲーム『Trackmania』のユーザー主導で開かれた大会において、ある超高難易度コースのクリアに超高額の賞金がかけられている。コースを制覇した1位のプレイヤーはなんと約1万6000ドルの賞金を獲得することができる。そして6月8日、ついにその賞金付きコースにクリア者が現れた。コースのクリアには1か月以上を要したようだ。海外メディアRock Paper Shotgunが伝えている。

『Trackmania』はUbisoftの子会社Nadeoが手がける基本プレイ無料のレーシングゲーム。2023年2月に配信開始され、さまざまなギミックが盛り込まれたコースの最速クリアに挑む、タイムアタックを主体とする。本作ではランク/アーケードといったオンラインプレイモードに対応するほか、他のプレイヤーが作成したエディットコースなどもプレイ可能。そのエディットコース機能を利用したりして、賞金付きのコースを制覇する大会も開かれている。

今回開催された大会は、トーナメント運営ツールMatcherino上で開催されているユーザー主導のオンライントーナメントだ。形式としてはユーザーから寄付金を募り、その総額約3万2000ドルを入賞者の上位3名で分け合うかたちとなる。大会は現地時間5月3日から開催されている。入賞の資格を満たすためには、参加者は全行程をストリーミング配信することが義務付けられており、マップの練習などいかなる不正も厳密に処罰されるという。そして大会優勝者に支払われる賞金はなんと約1万6000ドル。日本円にして約250万円に相当する巨額の賞金がかけられることになっていたようだ。


そして大会参加者が挑むことになるのは「Deep Dip 2」という名のコース。経験豊富な16人のマップメーカーが協力して制作したという、複数のフロアで構成された巨大なコースだ。コースは宙吊りになっており、巨大で曲がりくねった構造物をひたすら頂上に向かって上るものになっている。頂上に上るためには繊細なテクニックと大胆なジャンプが要求され、一度ミスするとコースの底まで落下。チェックポイントも存在していないため、ひとたび落ちてしまえば、落下地点から再びスタートすることになるという。

大会には大勢の『Trackmania』プレイヤーが参加。しかし熟練のプレイヤーでも1000回以上落下し、タワーの底からの再スタートを繰り返していたようだ。あまりの難易度に大会期間中にコースへの挑戦をリタイアするプレイヤーも現れるなど、レースゲーム史上でも珍しい、恐ろしい難易度を誇るコースとなっている。

現地時間5月3日に開始されてから1か月以上の大会期間を要したが、長らくこのコースを制覇するプレイヤーは現れていなかった。しかし現地時間6月8日、あるプレイヤーがついにこのコースを制覇、見事1位入賞を果たした。最初にフィニッシュしたのはフランス人プレイヤーのBrendan “Bren_TM2” Seve氏だ。YouTube上ではユーザーによって、同氏が優勝を達成した瞬間の配信のハイライトがまとめられている。

同氏は悪夢のような最終フロアに集中するため、マイクも顔を映すカメラもオフにして最終ランに挑んだようだ。コースの最後を締めくくるのは、スタートラインからはるか上空にぶら下がっている宙吊りのゴールへのジャンプ。もちろん、失敗すればはるか底まで落下。スタートラインまで落とされるため、ゼロからのやり直しである。

何度も慎重にジャンプ台へのアプローチを練習したのち、同氏はエンジンをかけて最後のジャンプに挑み、見事成功。マイクとカメラを戻した同氏はカメラの前で喜びを爆発させ、「今めちゃくちゃ震えている(I’m shaking like crazy)」と興奮を隠せない様子であった。最後のジャンプも「速度が足りなくて失敗したと思った」とのことで、最後の瞬間まで気を抜くことのできないランになっていたようだ。記録されたゴール時のラップタイムは1時間6分42秒127、コースの総プレイ時間は220時間以上にのぼるとのこと。この記録によって同氏は1万6298ドル(約250万円)を獲得する見込み。


そして偶然にも同日、Brendan “Bren_TM2” Seve氏に続いてコースを制覇するプレイヤーが現れた。名前はelconn21氏。長いチャレンジの末最後のジャンプを制し、見事2位に入賞。賞金として9779ドル(約150万円)の賞金を獲得することになる。

制覇が困難な超高難易度のコースそのものの恐ろしさもさることながら、ユーザーからの寄付金でこれほどの多額の賞金が集まったことは注目に値するだろう。海外メディアRock Paper Shotgunなども報じており、『Trackmania』大会シーンの盛況ぶりを表す事例になったようだ。なお「Deep Dip 2」はその名のとおり「Deep Dip」に続けて制作されたコースだ。今回の大会の盛り上がりを受けて、今後さらに高難易度の“Deep Dip 3”が作成される可能性もあるかもしれない。これからも『Trackmania』のコミュニティ大会については注目されるところだ。

ちなみに本稿執筆時点でも、「Deep Dip 2」を制覇したプレイヤーは2名のみで、3位に入賞するプレイヤーは出現していない。3位の賞金は6519ドル(約100万円)になる予定。Matcherino上では現在620人のプレイヤーがこの大会に参加し、今も制覇レースがおこなわれている。テクニック、そして忍耐力に自信のある方は、今からでもレースの参加を検討してみてもいいかもしれない。

『Trackmania』は、PC(Steam/Ubisoftストア/Epic Gameストア/Amazon Luna)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに、基本プレイ無料で配信中だ。