クリックするだけゲーム『Banana』、謎のプレイヤー急増の理由は「お金目的と業者」か。プレイヤー間で取引される“バナナという概念”

 

Steamにて基本プレイ無料で配信中の『Banana』はきわめてシンプルな内容にもかかわらずコミュニティが賑わいを見せており、不可解な同時接続プレイヤー数の急増もみられる。この背景には、本作ではSteamウォレットクレジットで取引可能な“バナナ”を獲得できる点がありそうだ。海外メディアPC Gamerが伝えている。

『Banana』は、バナナの画像をクリックするだけの基本プレイ無料ゲームだ。画像をクリックすることで表示されたカウントが増えていくが、それ以外は特に何も起こらない。実績は画像を1回だけクリックすることで獲得可能だ。


そんな本作には公式Discordサーバーが用意されており、本稿執筆時点では約8400人のメンバーを集めるなかなかの規模のコミュニティとなっている。なぜ画像をクリックするだけのゲームに人が集まっているのか。その理由は本作を通じてさまざまな“バナナ”を獲得できる点にあるとみられる。

本作では、3時間おきにゲーム内の画像をクリックすることによりレアリティ「Common」のバナナをひとつずつ獲得可能。そして18時間おきにゲーム内の画像をクリックすることでレアリティ「Rare」のバナナをひとつずつ獲得できる。獲得したバナナはSteamのコミュニティマーケットにてSteamウォレットクレジットを用いて売買することが可能となっている。コミュニティマーケットでは1円未満のバナナもあれば、高額で売られているバナナも存在。多種多様なバナナの取引がおこなわれている。

つまり本作ではゲームそのものではなく、バナナを得てコミュニティマーケットで取引することがプレイヤーの主な目的になっているようだ。Discordサーバー上にも「banana-trade」チャンネルが用意されておりユーザー間で交渉もおこなわれている様子だ。


また本作ではこれまで期間限定で、ゲーム中に低確率で希少なバナナがドロップしたり、Discordサーバー上で希少なバナナが抽選プレゼントされたりといったイベントも実施。コミュニティマーケットではイベント報酬のバナナが数万円分のクレジットで取引されている。そういったレアなバナナをトレーディングする楽しみから、本作のコミュニティは賑わいを見せているのだろう。ただゲームプレイではなく取引可能な“概念”、それもバナナの概念を求めて人が集まっている点には奇妙さも感じる。

なおSteamでは本作と同様の仕組みをもつ、別の開発元によるゲーム『Egg』が2024年2月にリリースされていた。こちらはバナナではなくタマゴの画像をクリックするゲームとなっており、同じくコミュニティマーケット上でさまざまなタマゴが売買されている。

ちなみに『Banana』の開発者のひとりであるRobert Partyson(Steamユーザー名)氏によると「『Banana』は『Egg』よりももっと酷い作りのゲーム(this is just a worse made egg game lol)」とのこと。開発者としても、『Egg』との類似点やゲームとして粗末な作りになっている点は認識しているようだ。

なお『Banana』は4月23日にリリースされた後じわじわとプレイヤー数を伸ばし、5月初旬にはピーク時1000人前後の同時接続プレイヤー数をキープしていた。さらに5月20日ごろには不自然なほどプレイヤー数が急増し、最大約1万8000人を記録。その後も奇妙な増減を繰り返し、本稿執筆時点では約3万人の同時接続プレイヤー数を誇っている。ただ小刻みに波打つようなプレイヤー数の増減を見せており、不可解な状態だ(SteamDB)。同様の状況が『Egg』にもみられる(SteamDB)。

Image Credit: SteamDB

『Banana』のDiscordサーバーなどコミュニティ上では、大量のBotが使用されたことで同時接続プレイヤー数を増やしているのではないかといった推察も多く投じられ、開発者もその可能性を認識している。本作は基本プレイ無料ゲームであり、Botによって複数のアカウントから換金目的でバナナを収集するといった活動がおこなわれている可能性はある。

過去にもSteamでは、トレーディングカード目的の可能性も考えられる、不自然な同時接続プレイヤー数急増はみられた(関連記事)。トレーディングカードとはSteamのシステム側に用意された機能で、対応ゲームをプレイしたり、コミュニティ内でトレードしたりして入手できる。こちらもコミュニティマーケットにて売買が可能。1点あたり数円から10円相当程度なものの、Bot使用者が複数アカウントでトレーディングカードをかき集め、売却できればそれなりの金額になる。『Banana』でもBotの使用を裏付ける確たる情報はなく、極めて不自然な同時接続者数激増という状況証拠しかないものの、“バナナ”の収集目的で同様の活動がおこなわれている可能性はあるわけだ。

ちなみにSteamでは、キュウリをクリックするだけのゲームになるという『Cucumber』が別の開発・販売元により6月13日にリリース予定。こちらでも同様のアイデアが採用されるのかもしれない。不自然なプレイヤー急増や類似作品の登場など、ゲーム内容ではなく取引可能なアイテムのみに主眼を置くアイデアには混沌とした状況もみられる。Steam上で今後“クリックするだけ”の作品が、どのような推移を見せるのかも注目されるところだろう。

『Banana』はPC(Steam)向けに基本プレイ無料で配信中だ。