ひたすらバナナをクリックするゲーム『Banana』、プレイヤーが突如爆増。謎の盛況にファンも開発者も困惑

バナナクリッカーゲーム『Banana』のプレイヤー数が突如急増し、人気が爆発する事態が観測された。不可解な現象に開発者も困惑を示している。

PC(Steam)向けに配信中のバナナクリッカーゲーム『Banana』のプレイヤー数が突如急増し、人気が爆発する事態が観測された。画面内に置かれたバナナのイラストをクリックしてカウントを増やしていくシンプルなゲームだが、Steamにおいては『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』『Red Dead Redemption 2』『Hades』といった高評価タイトルをしのぐ同時接続プレイヤー数を一時的に記録し、一皮むけた活況ぶりを呈した。しかしその後同時接続プレイヤー数は急落を見せ、不可解な現象に開発者も困惑を示している。

『Banana』はソロデベロッパーのaaladin66氏を含む4名の開発者らの手により、今年4月23日に基本プレイ無料の作品としてSteamでリリースされた。内容については冒頭で触れた以外に、ゲーム画面左下のアイコンからリアルマネーで購入可能なインゲームアイテムの販売ページへと移動できたり、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示を切り替えたりできるといった要素がある。筆者は実際に1000回ほどバナナをクリックしてみたが、それにより何か特別な出来事が発生するような演出は確認できなかった。

配信開始から3日ほどは同時接続プレイヤー数が2桁台と好調とは言い難い滑り出しであったが、リリース後2週間を迎える頃には4桁に達し、しばらくの間1000人台をキープしてきた。そうした経緯をもつ本作は、5月19日(以下、すべて協定世界時)のタイミングで同時接続プレイヤー数が3792人に上昇。その翌日には1万8582人と唐突な増加を見せていた(SteamDB)。筆者が確認した時点では、現在最も遊ばれているゲームをランキング化した「most played games」の指標において、並みいるタイトルを押さえて54位に躍り出ていた(SteamDB)。

Image Credit: SteamDB
Image Credit: SteamDB

ではなぜプレイヤー数が急増したのか。たとえば本作では単にバナナをクリックするだけでなく、ユーザーコミュニティを活性化させるための遊び心に富んだ取り組みもおこなわれている。ひとつの例としては、期間限定のレアバナナドロップイベントの存在が挙げられる。プレイ時間に基づく特定の条件に沿ってクリックをすると、さまざまなパターンのインゲームアイテムを入手できるというもので、シャイニーバナナやギャラクシーバナナといったユニークなバナナがこれまで特典とされてきた。折しも直近では5月21日を期限とするゴールデンバナナおよびダイヤモンドバナナの獲得イベントが開催されていることから、絢爛豪華なバナナ目当てにプレイヤーが殺到したという見立てもできそうだ。そうした施策が功を奏した結果として、このたびの大きな賑わいに繋がった可能性はある。


また公式Discordサーバーの参加メンバーは4000人以上、公式Steamコミュニティグループでは2000人を超えており、ゲームは非常にシンプルながらユーザーは盛り上がりを見せている。同プラットフォームでの評価も高く、本稿執筆時点では1856件のレビューが寄せられる中、94%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。


本作の公式Discordサーバーでは、アップデート内容の定期的な共有のほか、ユーザー数やレビュー数の報告など、モデレーターによる密な情報発信の様子も見受けられた。次はどんなバナナがインゲームアイテムとして登場すべきかを投票で募る書き込みやバナナアイデアの投稿専用チャンネルも確認され、こうした開発者とユーザーの距離の近さもコミュニティの醸成に貢献している模様だ。

そうした根強い人気も見られるものの、今回のプレイヤー数増加には不自然な点もある。先述のとおり直近でのピーク時の同時接続プレイヤー数は1万8582人。唐突な増加を見せたのち、わずか1時間で同接数は1万5000人近く激減していた。そんな今回の同時接続プレイヤー数の急増に対しては、Botの仕業を疑う声もDiscord上で散見される。開発者らもBotの活動によるものであろうという見解を示しており、やや困惑しているようだ。過去にSteamではトレーディングカードを入手する目的で、プレイヤー数の異様な増加現象が見られた事例もあった(関連記事)。今回も基本プレイ無料作品ということでそうした目的からBotを利用する不正者が現れ、プレイヤー数の急増に繋がった可能性はあるだろう。

Image Credit: SteamDB


なおSteamでは本件と同時期に、基本プレイ無料対戦FPS『Banana Shooter』におけるプレイヤー数の急増も観測された。同作は昨年8月の時点でも謎のプレイヤー人口増加が見られており(関連記事)、このたびの『Banana』のプレイヤー急増との関連についてはまったくの不明。偶然による一致なのか、先述したようなトレーディングカード目的なのか、はたまたバナナ愛好家によるキャンペーン活動の一環なのか。複数の筋が浮かび上がってはいるものの、事態は幾房にも重なり合い混迷を深めている。

ちなみに『Banana』のDiscordサーバーでは、本作のファンによる会話や投稿が盛んに交わされており、その勢いはサーバー運営が追いつかなくなるほどだという。同時接続プレイヤー数が不可解な急増を見せた後も和やかな交流がおこなわれているため、本作が気に入った人はコミュニティを訪れてみるのもいいかもしれない。

『Banana』は、PC(Steam)向けに基本プレイ無料で配信中だ。

Yuta Tanaka
Yuta Tanaka

本や映画や演劇と同じように、ゲームは世界と自分をつなぐもの。誰もが気楽に出入りできるゲームの浅瀬を広げていくことに、少しでも関われたらうれしいです。

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