マイクロソフト、「褒めまくっていたスタジオもいきなり閉鎖した」として批判集まる。“売上大満足”と言っていたのに

 

マイクロソフトは5月7日、同社傘下のBethesda Softworks(以下、ベセスダ)およびZeniMax Mediaの人員削減を実施。それに伴い、ベセスダ傘下スタジオのTango GameworksとArkane Austin、Alpha Dog Games、Roundhouse Studiosが閉鎖した。この事態について、昨年の同スタジオに対する言動と実際の行動が矛盾しているなどといった指摘や批判を受けている。


今回のマイクロソフトによるレイオフで閉鎖されたTango Gameworksは、東京に拠点を構えるゲームスタジオだ。元カプコンの三上真司氏によって2010年に設立され、『サイコブレイク』シリーズや、『Ghostwire: Tokyo』、『Hi-Fi RUSH』を手がけてきた。

また、Arkane Studiosはフランス・リヨンに本社を置くスタジオであるものの、アメリカ・オースティンにもArkane Austinというスタジオを構えていた。今回そのArkane Austinの閉鎖が決定している。Arkane Austin はSFホラーFPS『Prey』のリブート版やオープンワールドFPSアクション『Redfall』などの開発を手がけている。

過去Xbox幹部は、今回閉鎖されたこれらのスタジオを評価するような内容を投稿、およびメディアに向けて語っていた。その内容について、5月7日に発表されたスタジオの閉鎖との“言行不一致”だとして、一般ユーザーだけでなく、業界関係者やジャーナリストから広く指摘を受け、強い批判にさらされている。


まず批判の対象となったのは、Xbox Games Marketing部門バイスプレジデントのAaron Greenberg氏が昨年4月に投稿した、Tango Gameworks に対する言及だ。当時『Hi-Fi RUSH』について、Xbox部門から期待された売上に届いていないのではという噂を受けた投稿だった。Aaron氏は同作について、ユーザーだけでなくXbox部門にとっても、あらゆる指標と期待を満たした大ヒットであったと明言。Tango Gameworksの働きに対して「We couldn’t be happier(これ以上ないほど満足している)」と高く評価していた。過去にそうした発言があったにもかかわらず、同スタジオは今回閉鎖に至ったかたちだ。

そして『Redfall』およびその開発元Arkane Austinについての言及も、今回の同スタジオ閉鎖にあたって取り上げられている。2023年に海外メディアAxiosに向け、Xbox Game Studiosの責任者を務めるMatt Booty氏が語ったところでは、『Redfall』への厳しい評価を受け止めつつも、Arkane Austinとともに同作のアップデートとコンテンツの継続を図るとしていた。

マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いるPhil Spencer氏も、『Redfall』のリリース直後には同作の開発を継続する方針を伝えていた。同氏はKinda Funny Gamesのインタビュー番組にて、開発に携わったArkane Austinの野心的な目標・姿勢といった部分を支持。同作の今後について、ゲームの改善を続ける方針を明らかにしていた。Arkane Austinもそうした過去の発言とは裏腹に、今回閉鎖に至った格好だ。


なおIGNがMatt氏の送付した社内メールの内容として伝えるところによると、今回のスタジオ閉鎖を伴った人員削減には「タイトルとリソースの優先順位のつけ直し(reprioritization of titles and resources)」をおこなう狙いがあるとされている。加えてメール内では、影響力の高いタイトルを優先し、ベセスダが何十年もかけて育ててきた大ヒットゲームに、さらに投資する方針に基づいての決定であるとも説明されている。

実際今年には、『Starfield』の大型DLC「Shattered Space」や『The Elder Scrolls Online』の拡張「黄金の道」などのリリースが迫っている。こうした“強力なタイトル”を優先しつつ、Xbox部門全体のリソースを集中的に注いでいく方針もあるようだ。

このほか今年2月には『Hi-Fi RUSH』などのファーストパーティタイトルがPS5やNintendo Switchに向けて展開されることが発表。その後Phil氏が海外メディアPolygonのインタビューに対しコンソール市場の停滞を懸念として伝え、開発費の回収のためにほかのパブリッシャーやプラットフォームから消費者を引き込む戦略を説いていたこともある(関連記事1関連記事2)。これまでコンソール向けにさまざまな独占タイトルをリリースしつつ、Xbox Game Pass向けにタイトルを多数提供してきた方針からの転換もうかがえるわけだ。

そうしたさまざまな理由も相まって、経営陣の顔ともいえる人物らの過去の発言と矛盾するような今回のスタジオ閉鎖に至ったのだろう。ただ方針転換があったとはいえ1年足らずでの“言行不一致”も生じており、批判が寄せられている状況もあるようだ。