オープンワールドレースゲーム『The Crew』サービス終了後、「ゲーム所有権まで剥奪された」とのユーザー報告。“DLゲームが所有できなくなる”懸念がリアルに
Ubisoftは現地時間3月31日、オープンワールドレーシングゲーム『The Crew』のサービスを終了した。同作は昨年12月に配信停止されると共に、サービス終了予定が告知、予定通りの終了となった。しかし、本作について「Ubisoftによってゲームの所有権すら剥奪された」とユーザーが報告しており、注目を集めている。PC Gamerが伝えている。
『The Crew』は2014年12月に発売された、オープンワールドレーシングゲームだ。広大なアメリカ合衆国本土を舞台に、道路・野原・山道などさまざまなロケーションを縦横無尽に駆け巡ることができる。兄の死の謎を追うストーリーも魅力であったほか、マップでほかのプレイヤーに遭遇するオンライン要素なども存在。『Need for Speed』シリーズや『Test Drive Unlimited』などに携わったスタッフが在籍するIvory Towerが開発を手がけている。本作はPC/PS4/Xbox 360/Xbox One向けにリリースされ、後にシリーズとして展開。現在は最新作『ザ クルー:モーターフェス』が配信中だ。
『The Crew』については昨年12月15日、Ubisoftが各プラットフォームでの販売を終了。現地時間の2024年3月31日にはゲームプレイ自体が不可能となると告知していた。本作はひとりで遊ぶ分にもオンラインサーバーへの接続が必要なかたち。そのためのサーバーインフラ維持の問題のほか、ライセンス契約の問題もあり、サービス終了が決定されたという(関連記事)。
『The Crew』のサービスが終了されてしばらく経った4月12日、海外掲示板Redditにて、「Ubisoftに本作の所有権(license)を奪われた」とする投稿がなされ注目を集めている。投稿には一枚のスクリーンショットが添えられており、Ubisoftのランチャー上で本作を開こうとしたところ「あなたはこのゲームを利用できません」といった内容のメッセージが表示されている様子がわかる。
同投稿は複数のSubredditで紹介され、多いところでは2万7000件以上のUpvote(評価)を集め、2600件以上のコメントが寄せられるなど注目と議論の的となっている。寄せられたユーザーの意見としては、Ubisoftに対して批判的な内容が目立つ状況である。
具体的には、「ユーザーが購入したゲームの所有権を勝手に奪う行為だ」として、Ubisoftの対応の合法性を問う意見もある。購入したゲームが配信側のさじ加減でダウンロードさえ不可能になってしまう状況に、ユーザーとして危機感や怒りを覚えているとの論調が強いようだ。「サービス終了でプレイ不可能とはいえ、ゲームを所有しておきたい」とのファンの心理に反する施策ではあっただろう。
一方で、Ubisoftのエンドユーザー使用許諾契約書を確認してみると、「本製品は、お客様に使用が許諾されますが、販売されたわけではありません」との一文が見られる。Ubisoft側としては、所有権を奪ったわけではなく、許諾した使用権を停止したと捉えているのかもしれない。
また、前述の投稿に向けたコメントでは「有志製サーバーやModによる作品の復活」について触れられている。Ubisoftのサービスを代替するような『The Crew』向けのツールやModがコミュニティの手によって作られ、草の根で遊べるようになる可能性への言及だ。実際に、本作に向けては非公式サーバーの開発プロジェクト「The Crew Offline+Online Server Emulation」が有志によって進められている。
しかし、『The Crew』についてはサービス終了にあたってライセンス契約の問題にも言及されている。同様にライセンス問題がありサービス終了された作品を有志が“復活”させようとしたケースがある。『Friday the 13th: The Game』の非公式プロジェクト「Friday The 13th: Resurrected」だ。このプロジェクトは、権利元の要請を受けて中止となっている(関連記事)。こうした顛末を辿る可能性もあり、Ubisoft側が“有志版『The Crew』”プロジェクトを牽制するため、ゲームファイルにアクセスし辛いよう手を打った側面もあるかもしれない。
ゲームのダウンロード販売にまつわる「配信元のサービス終了に伴い、いつか利用出来なくなるかもしれない」との懸念は、しばしばゲーマーの間で話題にのぼる。今回の一件は、購入したゲームが“所有できなくなる”懸念が現実となった一例といえそうだ。