スクウェア・エニックスは2月7日、『ファイナルファンタジーVII リバース(FINAL FANTASY VII REBIRTH)』(以下、FF7 リバース)の体験版を配信開始した。体験版での登れる崖に「黄色いペイント」が施されている点に一部ユーザーが注目。“目立ちすぎる誘導”といった否定的な意見もある一方で、黄色ペイントが用意されるべき理由について考察する業界人やユーザーの見解も寄せられている。
『FF7 リバース』は、RPG『ファイナルファンタジーVII』を現代の技術で蘇らせるリメイクプロジェクトの第2弾。2020年発売の『ファイナルファンタジーVII リメイク』に続く作品だ。前作で魔晄都市ミッドガルでの戦いを経た主人公クラウドと仲間たちは、本作にていよいよ広大なフィールドを舞台にした新たな旅に出る。
本作の体験版ではニブルヘイムを舞台にするエピソードをプレイ可能。ソルジャー時代のクラウドとセフィロスが、魔晄炉で起きた異常の調査のためニブル山へと向かうことになる。
崖の黄色いペイント
なお『FF7 リバース』では広大なフィールドが登場し、攻略のアプローチも広がるとみられる。体験版では一部段差を登れる「パルクールアクション」といったシステムも確認可能。また、幅広い移動が可能になったこともあり移動可能な場所を分かりやすく示す配慮としてか、掴まれる崖に黄色いペイントが施されていることも確認できる。
この黄色いペイントの登場に注目が集まり、議論を呼んでいる。中でも人気FPS『DUSK』などの販売元New Blood InteractiveのCEOを務めるDave Oshry氏は、体験版における登れる崖のスクリーンショットを引用しつつ「『FF7』が“黄色ペイントウイルス”に感染した」とコメント。本稿執筆時点で1.4万いいね・4430RPが寄せられ大きな注目を集めている。
黄色ペイントがこのように“揶揄”された背景には、昨年に巻き起こった論争があるかもしれない。黄色(あるいは派手な色)でのプレイヤーの誘導は本作に限らず、別のゲームでもしばしば用いられてきた表現だ。そして、たとえば2023年3月に発売された『バイオハザード RE:4』およびそのDLC「セパレート ウェイズ」においては黄色ペイントが大きな議論を引き起こしていた(関連記事)。
黄色いペイントはプレイヤーが迷わないようにする心遣いであり、開発者側としてはプレイテストなどに基づいて必要と判断されて実装されているだろう。一方で、ゲームのグラフィックがリアル化していることもあり、派手な色での誘導は没入感を削ぐといった意見も集まったかたちだ。また一部作品ではステージや世界観になじんだ誘導が用意される場合もあるからか「目立つ色での誘導は手抜きではないか」といった論調もみられた。こうした議論は海外ユーザーを中心に広がりを見せ、ネットミーム解説サイトKnow Your Memeにおいては「Yellow Paint Game Design Debate(ゲームデザインの黄色ペイント論争)」とするページまで登場した。
目立つ色なのは理由がある
Dave氏の上述の投稿にも、そうした“黄色ペイント論争”の存在が背景としてあるのだろう。一方で今回の投稿においても、ユーザーや業界人からは「黄色ペイントは必要だからこそ実装されている」と開発側の意図に理解を示す見解は散見される。
たとえば今回の論争にはElectronic Arts日本支社社長の野口ショーン氏も反応。ゲーム開発におけるQA(Quality Assurance・品質保証)テスト段階では、かならず何割かのプレイヤーは進行方向がわからなくなるため、プレイヤー誘導の有無はゲーム進行と(プレイの上での)ストレスに大きな影響を与えるとしている。つまり進行方向を見つけるのが苦手なプレイヤーは一定数存在するとみられ、誘導が多少目立つ場合でも、誘導がないことのデメリットの方が大きいと判断される作品もあるのだろう。
野口氏は黄色ペイントと同様の派手な色での誘導の例として、EAの『ミラーズエッジ』シリーズにおける真っ赤なオブジェクトによる誘導などを紹介。赤や黄色といった暖色は比較的誘目性が高い(自然と目を惹きやすい)色とされる。特に背景色との明度の違いは誘目性を高めるようで、『ミラーズエッジ』における周囲が白いステージにおける赤いオブジェクトや、『FF7リバース』における暗色の崖での黄色ペイントは効果的な誘導となっているのだろう。
また黄色は色覚障がいの人でも認識しやすいほか、輝度も高く弱視の人でも視認しやすいとされる色だ(国立遺伝学研究所)。実世界においても階段の縁(段鼻)や、点字ブロックなどさまざまな場所で採用されている。プレイヤー誘導に黄色が採用される理由には、幅広いユーザーが見やすくなる配慮もあるかもしれない。
また黄色に限らずプレイヤーの誘導自体は、過去の多岐にわたる作品でもおこなわれてきた工夫だ。ユーザーらは先述のミラーズエッジを含めさまざまな作品を例示。Dave氏の言う“黄色ペイントウイルス”が今に始まったことではないと示している。プレイヤーの誘導は、プレイテストでのプレイヤーの動きなどに基づいて、作品ごとに最適なかたちで導入されてきたわけだろう。誘導なしで進められるプレイヤーもいる一方で進むべき先を見つけるのが苦手なプレイヤーもいることは、さまざまな作品で考慮されてきたとみられる。
グラフィックが高精細になりアクセシビリティも重視される最近のゲームにおいて、プレイヤー誘導は特に重視される要素となっているとみられる。そうした背景から、『バイオハザード RE:4』や『FF7リバース』など各社が目立つプレイヤー誘導を用意する傾向もありそうだ。また特に大作やシリーズ作品においては、目立つ誘導を用意して幅広いプレイヤーにクリアまで遊んでもらう狙いも考えられる(関連記事)。いずれにせよ黄色ペイントを含む目立つ色の誘導はとりあえず目立たせるといったかたちではなく、必要性が考慮されたうえで実装された要素かもしれない。