傑作RPGなどの販売手がけたパブリッシャーVersus Evilが閉鎖。クリスマス休暇入りと同時にスタッフ13人全員が失職

 

パブリッシャーのVersus Evilは12月23日、同社を閉鎖したことを発表した。また同社元スタッフが、年末に突然として13人のレイオフとなったことをSNS上で共有している。

『Pillars of Eternity II: Deadfire』


Versus Evilは、米国を拠点とするパブリッシャーだ。2013年に、元ZeniMax Online StudiosのSteve Escalante氏によって創設。2021年には、同じくパブリッシャーであるtinyBuildの傘下となっている。販売を手がけたタイトルとしては、『The Banner Saga』シリーズやObsidian Entertainmentと共同による『Pillars of Eternity II: Deadfire』など、好評RPG作品を展開。ほかには、『METAL GEAR』パロディのアクションゲーム『UnMetal』や人狼系ゲーム『First Class Trouble』などさまざまなジャンルの作品展開を手がけていた。

Versus Evil公式Xアカウントは12月23日、同社が閉鎖されたことを発表した。同ツイートでは、創設から10年にわたる歴史を惜しみつつ、コミュニティに対する感謝を伝えている。ほかのツイートによれば、Versus Evilが販売を担当していたタイトルはtinyBuildが引き続き販売を手がけ、Versus Evilからリリース予定だった『Monolith: Requiem of the Ancients』といったタイトルも同様に販売が引き継がれることになるという。

そしてVersus Evil元スタッフたちからは、パブリッシャー閉鎖のより詳しい背景がSNS上で明かされている。同社元製品戦略ディレクター(Director of Product Strategy)のFrancis Fincke氏はLinkedInにて、前述の公式発表に先駆けて「12月22日に、13人のスタッフ全員が解雇された」と報告、クリスマス(ホリデー)休暇に入ると同時だったとして落胆の色を滲ませている。同氏は投稿の中で、自身を除くスタッフ全員への再就職などの支援を求めていた。

また、元プロダクション部門トップ(Head of Production)のLance James氏はX(Twitter)上にて、「(今回のレイオフ・スタジオ閉鎖は)Versus Evil自身の決断や選択ではなかった」と強調。親会社であるtinyBuildなどが決断の主体であった様子がわかる。

こうしたホリデーシーズン直前のレイオフおよびスタジオ閉鎖について、影響が考えられる出来事が先だって起こっていた。tinyBuildと、前述のEscalante氏・James氏およびVersus Evilの前所有者であるStall Proof LLCの間での係争である。この訴訟は、Escalante氏側がtinyBuild側が買収時契約に含まれた3つの義務を履行しなかったとして提起されたもの(GamesIndustry.biz)。この訴訟は今月初頭にかけて、tinyBuild側が350万ドル(約5億円)の支払いに合意するかたちで決着していた。

またこの決着の直後には、Escalante氏がSNS上でVersus Evilから離れることを告知。「(自身のような)臆病者にゲームビジネスは難しい」といった言葉で、その心情も吐露していた。

なお、2023年のゲーム業界ではさまざまな規模のレイオフが目立つ(関連記事)。ゲーム業界のレイオフ情報を取りまとめる個人サイトvideogamelayoffs.comによれば、tinyBuildの傘下企業についても今年中に2企業・計30人以上のレイオフがおこなわれたと伝えられている。Versus Evilの閉鎖については係争の一件のほか、tinyBuild全体としての方針も影響していそうだ。来年のゲーム業界の雇用体制は、どのような傾向を見せるだろうか。


貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。