『オーバーウォッチ2』のトレーサーに“こっそりお尻ナーフ”疑惑浮上し大激論が発生。実際どうなのか検証した
『オーバーウォッチ2』にて、登場キャラであるトレーサーについて「お尻がこっそり小さくされたのではないか」との疑惑が海外コミュニティを中心に持ち上がっている。“お尻ナーフ”が実際におこなわれたか否かとの議論がおこなわれ、喧々囂々の状況となっているのだ。本稿では、過去の資料と照らし合わせて“お尻ナーフ”が実際におこなわれたか、検証した。
『オーバーウォッチ2』(以下、OW2)は、人気を博したオンライン対戦FPS『オーバーウォッチ』(以下、OW)の続編だ。前作からの変更点としては、既存ヒーローの調整および新ヒーローの追加などが実施。また、ヒーロースキンの刷新や、6対6から5対5へと対戦人数変更なども実施された。
そんな本作において、登場ヒーローのひとり「トレーサー」の体型が人知れず変更されているとの疑惑が浮上した。トレーサーは女性ヒーローであり、『OW』初期からのメンバー。超高速の身のこなしと、体型がわかりやすいボディスーツのような衣装が特徴だ。このトレーサーについて「お尻がこっそりと小さくされている」との意見がX(旧Twitter)上で投じられ、議論が起きているのだ。
発端となったのは、とあるユーザーによるX投稿だ。同ユーザーは、トレーサーの新スキン「フォーマルウェア」について投稿。「トレーサーの尻を完全になくした」との私見を怒り混じりに投じていた。そして、同投稿に同調するかたちで、別ユーザーが「ほかのスキンについても、開発元がお尻をなくした」と主張。すなわち、トレーサーの3Dモデルに、どこかの段階で全体的な“お尻ナーフ”が実施されたとした。
いずれの投稿も本稿執筆時点で2000件を超えるシェア数と、1000件前後のリプライを集めている。その中では、“お尻ナーフ”を事実として開発元を批判する者がいる一方で、「お尻の大きさは昔から変わっていない」と比較検証結果に乗り出すユーザーも現れている。喧々諤々の議論がかわされる“お尻ナーフ”の有無について、弊誌では過去のゲーム映像と実際のゲーム内モデルを参照して検証した。
まず、『OW2』サービス開始直後から本稿執筆現在までの間には、“お尻ナーフ”は実施されていないようだ。上述の画像を見ると『OW2』配信開始直後となる昨年10月15日頃から、今年12月25日現在に至るまで、トレーサーのT.レーサースキンにおけるお尻の描画は変化せず、ピクセル単位で一致していることがわかる。
また、「T.レーサー」スキンと「(『OW2』における)オーバーウォッチ1」「フォーマルウェア」など複数スキンにおいて、お尻のモデリングは(ベルトや布地などの服飾を除き)ほぼ同一のフォルムとなっている様子が確認できた。
そして、『OW』から『OW2』にかけて“お尻ナーフ”がおこなわれたということもなさそうだ。上述の画像のように、『OW』時点でのデフォルトスキンと『OW2』での同スキンでもお尻のフォルムはほぼ一致している。ただし、『OW2』のデフォルトスキンに限っては、ほかの各スキンと比較して、ややお尻がツンと上を向いたような印象となっている。かえってお尻がバフされたと受け取ってもよいだろう。すなわち、トレーサーのお尻のかたちについては「前から一部を除きほぼ変わってない、少なくともナーフはされていなさそう」と結論づけられる。
なお、発端となった「フォーマルウェア」スキンについても、ほかのスキンとお尻のフォルム自体は変化していない。しかしながら、パンツ自体が体の凹凸を控えめにしておしりが小さめに見える、“ヒップラインが外に響きづらい”デザインとなっている。しかし、先入観をもって見てしまい「お尻が小さくされた」と感じる者もいそうだ。
興味深いのは、「なぜ“お尻ナーフ”との誤解が広まったか」だ。実をいえば、トレーサーについては『OW』時点でお尻をめぐる一騒動があった。お尻を強調するトレーサーの勝利ポーズについて「性的すぎる」といったフィードバックが寄せられ、開発元が差し替え対応に踏み切ったのだ(Polygon)。その際にも、お尻の表現を巡る議論が紛糾し、結果として“トレーサーといえばお尻”といった印象も一部プレイヤーに根付いた可能性はある。そうした背景もあり、「ふたたび性的表現にまつわる調整が入った」と早合点されたのだろう。
また、“お尻ナーフ”自体が、別のゲーム作品で実際に実施された例もある。『フォートナイト』でのソリッド・スネークのお尻平坦化や、『FF14』における、技術的課題による一時的な“お尻ナーフ”などだ(関連記事1、関連記事2)。お尻の調整は注目されがちなトピックであり、話題にのぼりやすかった面もあるだろう。いずれにせよ、トレーサーのモデルにそうした調整が入った事実はなさそうだ。