AIのみで『アングリーバード』を“コピー”したユーザーあらわる。コードは1行も書かず、実際にプレイ可能な『Angry Pumpkins』

AI活用を模索するとあるユーザーが10月31日、『Angry Birds(アングリーバード)』に酷似したゲーム『Angry Pumpkins』を制作したと報告。すべてAIで構築したとして、大きな反響を呼んでいる。

AI活用を模索するとあるユーザーが10月31日、『Angry Birds(アングリーバード)』に酷似したゲーム『Angry Pumpkins』を制作したと報告。同作はグラフィックもゲームコードもすべてAIで構築したとして、大きな反響を呼んでいる。


『アングリーバード』は、Rovio Entertainmentが手がけるパズルゲームシリーズだ。同作はAndroid/iOS向けゲームとして大人気に。続編『Angry Birds 2』やPC向け展開もされた。ゲームプレイとしては、スリングショット(パチンコ)で鳥を発射。物理演算や障害物との衝突も計算に入れつつ、フィールド上の敵を倒していくのが目的となる。シンプルなルールで多くのユーザーに親しまれる作品だ。

同作に類似したゲームを「AIのみで構築した」と報告する者があらわれた。AIの活用法を模索するユーザーのJavi López氏だ。同氏は、ルームメイト探しや交換留学をサポートする学生向けサービス「Erasmusu」を共同で起業した経験をもつほか、プログラミングなどのスキルももつという。現在は、AI利用の可能性を探求・教育する活動に打ち込んでいるようだ。

そんなJavi氏は、『アングリーバード』そっくりのゲーム『Angry Pumpkins』をAIで作り上げたというのだ。同氏は、すべてのゲームコードをGPT-4に出力させ、MidjourneyおよびDALL·E 3にグラフィックを出力させたという。同氏は上述のXポストにて「各AIの組み合わせにより無限の可能性が生まれた」とコメント。実際のプレイ動画を公開しており、たしかに『アングリーバード』風の物理演算ゲームが動作している様子がわかる。

また、本作はブラウザ上で実際にプレイ可能。自キャラと敵がカボチャとオバケに変更されている点以外は、ゲームプレイの感触なども非常に似通っている。ステージに自由に障害物や敵を配置できる機能も実装されているなど、AIがすべてのソースコードを書いたと思えないほどの作りだ。

Javi氏はどのようなプロンプトでAIに出力させたかなど、開発プロセスについても詳しく明かしている。グラフィックについては「ハロウィン風に」「『アングリーバード』っぽく」といった命令で出力したそうだ。ゲームのプログラムについて、本作は600行のソースコードで動作しているという。そしてJavi氏はそのコードを1行たりとも書いていないそうだ。すべてGPT-4によって賄われているという。


同氏はGPT-4に、まず簡単なゲームシステムの基礎から構築させ、現実の開発プロセスのように開発プロセスを繰り返し複雑化させていったという。AIへの命令としては、こちらでも「『アングリーバード』スタイルのゲームを作れるかな」といったかたちで“類似ゲーム作り”をオーダーしている。なお、そうして出力されたソースコードはすべて公開されている。なおJavi氏は、AIにここまでできると考えておらず「本当に驚いた」としている。そして、こうした技術は世界を変えるとして、今回の結果に肯定的な姿勢を示している。

Javi氏が公開した『Angry Pumpkins』は多大な注目を集め、本稿執筆時点で前述のXにおけるポストはシェア数2500を突破。GamesRadar+といった海外メディアが紹介するに至っている。本作が注目を集める中で、否定的なユーザー意見も寄せられている。たとえば「“無限の可能性”を謳いつつ、すでに存在するものをコピーしているだけ」との指摘や、権利関係における問題を懸念するユーザー意見も見られる。

一方で、海外フォーラムHacker Newsでは『アングリーバード』のプロジェクトマネージャーを務めていたとする者が本作に反応。“オリジナル版”の『アングリーバード』は、Box2DおよびLuaスクリプトで構築されていたとコメント。「こうした現在の技術では、ヒットゲームは作れないだろう」と前置きしつつ、今回のような制作プロセスはアイデアを素早く具現化したり、プロトタイプ制作の段階では非常に有用な技術になるとの見解を示した。

GPTやMidjourney、DALL·EといったAIをゲーム開発に転用する試みは、しばしば見られた。しかし、今回のような「コーディングからすべてを一任する」ケースは耳目に新しく、それゆえに大きな注目を浴びたのだろう。AI技術自体はゲームの開発や動作に深く寄与してきている。一方で、AIを利用した自動生成コンテンツなどについては、Steamが規制に動いたとの報告があがるなど、懸念が尽きない分野だ(関連記事)。そうした懸念が解消されつつ、ゲーム開発プロセスにさらにAIが役立つ時代が来るのが理想となるだろう。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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