ゲームエンジン裏稼業クリッカー『Install Fee Tycoon』Steamにいきなり登場。ブラックユーモアたっぷりな「インストール数稼ぎ」ゲーム

Moonstruckは10月10日、『Install Fee Tycoon』を配信開始した。架空のゲームエンジン製作品の「インストール数」を稼ぎ続ける、クリッカーゲームだ。

デベロッパーのMoonstruckは10月10日、『Install Fee Tycoon』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)。リリース記念セールとして、10月18日まで定価120円の40%オフとなる72円で販売されている(いずれも税込)。本作にはゲームエンジン「Unity」の新料金システムへの風刺が込められていると見られ、海外メディアGamesRadar+などに取り上げられている。

『Install Fee Tycoon』は放置ゲーム。いわゆるクリッカーやIncremental Games(インクリメンタルゲーム)と呼ばれるジャンルの作品だ。本作中には架空のゲームエンジンChaos3Dが存在。開発元であるChaos 3D Corpは同ゲームエンジンの価格モデルを更新したという。同ゲームエンジンを利用して開発されたゲームがインストールされるたびに、開発者から0.2セントを徴収する規定が新たに設けられたそうだ。

プレイヤーは悪名高い海賊版ソフトウェア制作者として、同社から依頼を受ける。依頼の内容は、Chaos3Dで開発されたゲームを再インストールする悪質なプログラムを使い倒し、Chaos 3D製ゲームのインストール数をとにかく稼ぎまくることだ。ダークウェブ上でも協力を得ながらインストール数を鰻上りに増やしてChaos 3D Corpの収益を上げ、同社の株価アップを狙うのだ。


なお「インストール回数に応じた手数料(Install Fee)」という題材を見るに、本作にはゲームエンジン「Unity」の新料金システム「Unity Runtime Fee」に対する風刺が込められているのだろう。Unity Runtime Feeは先月9月12日に、2024年1月から導入予定であると発表された。Unity製のゲームが、エンドユーザーによってダウンロード・インストールされた回数を基準として適用。ゲームの過去12か月の収益が最小しきい値を超えており、かつ累計インストール数が最小しきい値を超えている場合、さらにインストールされるたびに規定の料金の支払いが開発者に求められる仕組みだ。『Install Fee Tycoon』におけるインストール回数に応じた手数料もここから着想を得たと見られる。

なおUnity Runtime Feeに向けては、インストールされただけで料金が発生する点などにより、利用者からは大きな反発の声が上がることに。そうした騒動を受けてUnity Technologies側は謝罪をおこない、またUnity Runtime Feeの規定は変更された。まず無料で利用できるUnity Personalプランへの導入が完全に撤回。支払い基準に達した利用者も、インストール数に応じたUnity Runtime Feeを支払うか、収益の2.5%を支払うかのどちらかを選択できるといった変更がおこなわれている(関連記事)。


『Install Fee Tycoon』は一連の騒動から1か月経たずにリリースされた、強烈な皮肉が込められたゲームと見られるわけだ。なお本作中のChaos3Dの料金システムとは違って、Unity Runtime Feeでは同一デバイス上での再インストールには適用されない予定である。また海賊版でのダウンロードや“インストール爆撃(install bombing)”といった、不正や悪用を検出できるソリューションが設けられることもアピールされている。『Install Fee Tycoon』内のシステムはあくまでゲーム上の架空の設定であり、題材と見られるUnity Runtime Feeに脚色が大きく加わっている点には留意したい。

『Install Fee Tycoon』はPC(Steam)向けに配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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