ミリタリーゲーム『Arma 3』の動画が「イスラエルとハマスの戦争映像」と偽られ拡散される。過去の公式注意喚起にピッタリ当てはまる雑フェイク

ミリタリーゲーム『Arma 3』の映像が、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦争における映像と偽られて転載され、注目を集めている。なお現時点ではユーザーによる背景情報や指摘が寄せられ、誤認の懸念は弱まっていると見られる。

ユーザーが投じたミリタリーゲーム『Arma 3』の映像が、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦争における映像と偽られて転載され、注目を集めている。Forbesなどが伝えている。


パレスチナ自治区ガザ地区を武力占拠するイスラム主義組織ハマスは10月7日、イスラエルに対し数千発のロケット弾を発射する奇襲攻撃をおこなった。これを受けてイスラエル側はハマスに対して正式に宣戦布告。イスラエル側は報復として、ガザ地区への空爆をおこなっている。ハマス側はこのまま空爆を継続すれば人質として拉致した民間人を処刑するとの警告を発するなど、緊迫した状況が続いている。

そうした中でミリタリーゲーム『Arma 3』の映像がイスラエルとハマスの戦争における映像と偽られ、フェイクニュースとして拡散されて混乱を招いている。とあるXユーザーは10月8日、「ハマスにもっと力を」と述べつつ、戦争下のガザ地区といった説明とともに対空ミサイルが戦闘ヘリに放たれる『Arma 3』の映像を投稿。同様の映像を別のユーザーも投稿しており、こちらはイスラエル兵がハマスのヘリを破壊したという説明が添えられている。いずれもゲームの映像であることは明記されておらず、現実の映像という誤認を招こうとするような内容だ。

*各投稿は別のユーザーがYouTube上に投稿したこちらのショート動画が元になっており、上記のユーザーらに無断で転載されていると見られる。元の動画タイトルでは『Arma 3』の映像であることも明記されている。

そうした投稿には、本稿執筆時点ではユーザーから「これはミリタリーシムゲーム『Arma 3』の映像である」との背景情報が追加されている。また前述のユーザーの投稿には、そもそもハマスは航空機を戦力としてもたないのではないかといった指摘もおこなわれている。誤認を招きかねない映像ながら、現在ではユーザーの指摘によりそうした懸念も弱まっているだろう。一方で投稿は現時点で数十万回閲覧されており、背景情報追加前にこの投稿を閲覧し、現実の映像と誤認したユーザーもいるかもしれない。

今回映像が悪用されることになった『Arma 3』は、サンドボックス型のミリタリーFPS/TPSゲームだ。地中海の架空の島を舞台に、シングルプレイまたはマルチプレイで任務を遂行する。ゲーム内には架空の銃を含むさまざまな銃器や、軍用車両・航空機が登場。プレイヤー自身で作戦を組み立てて目標を攻略する、本格的なミリタリー要素を楽しめる。ユーザーによるMod制作も盛んで、Steamワークショップでは多岐にわたるModが公開されている。実在の銃器や車両、航空機を再現したModも多くあり、過去の戦場や今後想定される戦場をある程度模することも可能となっている。


兵器などが再現されていることからか、本作のゲーム内映像が現実の映像と故意に偽られたり、誤認されたりする事例は過去にもあった。たとえば昨年2月には、ロシアのウクライナ侵攻における映像として、Facebookにて本作の動画が拡散。当該投稿は現在削除されているものの、動画は11万回以上再生され、シェアは2万5000件を超えていたという(Bloomberg)。同年10月にも、本作のゲーム動画が現実の映像との誤認を招くような形で拡散された。こちらも現在削除されているものの、Xにて「ウクライナは最先端の対戦車ミサイルでロシアの走行車両に大打撃を与えている」との文面と共に投稿されていたという(Reuters)。2018年9月には、ロシアの国営メディアが本作の動画を現実の映像と誤認し、報道に利用されたケースもある(BBC)。

『Arma 3』開発元のBohemia Interactiveは、本作を用いたフェイクニュースに関する注意喚起をおこなうような状況だ(関連記事)。同スタジオのPRマネージャーを務めるPavel Křižka氏によれば、こうしたフェイク目的の動画は削除を試みてもいたちごっこになってしまうという。そこで同氏は当時、主要メディアやファクトチェック機関への積極的な協力を、今後の対策として掲げていた。

また注意喚起においては、フェイク動画の見分け方についても説明されていた。フェイク動画ではゲームの映像であることを誤魔化すために、解像度が非常に低かったり、周囲が暗いシーンで録画されていたりという特徴が見受けられるそうだ。またフェイク動画では映像内に人が登場しない、ほとんど無音であるなどの特徴もあるそうで、これもゲームと現実との区別がつきやすい要素を誤魔化すためだという。

今回イスラエルとハマスの戦争に際して投じられた映像は「昼間の映像」「生身の兵士が登場する」「音も収録されている」など、注意してみれば比較的ゲームの映像と見抜きやすい内容といえるだろう。ただし混乱が続くなかで、今後も本作に限らずゲームの映像などでフェイク動画が投じられる可能性はあり、映像の真偽を判断する際には上記の見分け方も参考にするとよいかもしれない。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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